国際連合食糧農業機関(FAO)が提示した2015年の羊毛生産量データによると、世界で最も多くの羊毛を生産した国は中国(413,134トン)でした。続いてオーストラリア(363,824トン)とニュージーランド(147,731トン)が2位と3位にランクインし、これらの3カ国が羊毛の世界的な生産を大きくリードしています。一方、日本はこのランキングには登場しておらず、国内の羊毛生産が相対的に低水準であることがうかがえます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アジア | 413,134 |
| 2 |
|
オセアニア | 363,824 |
| 3 |
|
オセアニア | 147,731 |
| 4 |
|
ヨーロッパ | 68,390 |
| 5 |
|
アフリカ | 60,204 |
| 6 |
|
アジア | 59,196 |
| 7 |
|
アジア | 56,453 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 55,644 |
| 9 |
|
アフリカ | 49,788 |
| 10 |
|
南アメリカ | 46,000 |
| 11 |
|
アジア | 44,600 |
| 12 |
|
アジア | 43,600 |
| 13 |
|
アジア | 39,916 |
| 14 |
|
アジア | 38,025 |
| 15 |
|
アフリカ | 37,100 |
| 16 |
|
アジア | 35,614 |
| 17 |
|
南アメリカ | 31,000 |
| 18 |
|
アジア | 28,000 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 23,336 |
| 20 |
|
アジア | 17,413 |
| 21 |
|
アジア | 17,020 |
| 22 |
|
アジア | 15,768 |
| 23 |
|
アジア | 15,726 |
| 24 |
|
アジア | 15,231 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 14,124 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 14,123 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 12,426 |
| 28 |
|
北アメリカ | 12,270 |
| 29 |
|
アジア | 11,853 |
| 30 |
|
アジア | 11,725 |
| 31 |
|
アフリカ | 11,258 |
| 32 |
|
南アメリカ | 10,924 |
| 33 |
|
アフリカ | 9,808 |
| 34 |
|
南アメリカ | 8,954 |
| 35 |
|
アジア | 8,728 |
| 36 |
|
アフリカ | 7,970 |
| 37 |
|
アフリカ | 7,716 |
| 38 |
|
ヨーロッパ | 7,641 |
| 39 |
|
アフリカ | 7,610 |
| 40 |
|
ヨーロッパ | 7,585 |
| 41 |
|
アジア | 7,033 |
| 42 |
|
南アメリカ | 6,991 |
| 43 |
|
ヨーロッパ | 6,148 |
| 44 |
|
南アメリカ | 4,975 |
| 45 |
|
南アメリカ | 4,310 |
| 46 |
|
アジア | 4,160 |
| 47 |
|
ヨーロッパ | 4,031 |
| 48 |
|
ヨーロッパ | 3,840 |
| 49 |
|
アフリカ | 3,690 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 3,199 |
| 51 |
|
ヨーロッパ | 3,154 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 3,115 |
| 53 |
|
ヨーロッパ | 2,769 |
| 54 |
|
アフリカ | 2,681 |
| 55 |
|
アジア | 2,518 |
| 56 |
|
アジア | 2,340 |
| 57 |
|
アジア | 2,300 |
| 58 |
|
ヨーロッパ | 2,270 |
| 59 |
|
アフリカ | 2,050 |
| 60 |
|
ヨーロッパ | 1,899 |
| 61 |
|
南アメリカ | 1,885 |
| 62 |
|
アジア | 1,571 |
| 63 |
|
アフリカ | 1,500 |
| 64 |
|
ヨーロッパ | 1,391 |
| 65 |
|
北アメリカ | 1,291 |
| 66 |
|
アフリカ | 1,237 |
| 67 |
|
アジア | 1,122 |
| 68 |
|
南アメリカ | 1,083 |
| 69 |
|
ヨーロッパ | 1,031 |
| 70 |
|
南アメリカ | 989 |
| 71 |
|
ヨーロッパ | 977 |
| 72 |
|
ヨーロッパ | 955 |
| 73 |
|
ヨーロッパ | 932 |
| 74 |
|
ヨーロッパ | 793 |
| 75 |
|
アジア | 756 |
| 76 |
|
アジア | 715 |
| 77 |
|
ヨーロッパ | 693 |
| 78 |
|
ヨーロッパ | 595 |
| 79 |
|
アジア | 587 |
| 80 |
|
アフリカ | 305 |
| 81 |
|
アジア | 263 |
| 82 |
|
ヨーロッパ | 256 |
| 83 |
|
ヨーロッパ | 254 |
| 84 |
|
ヨーロッパ | 211 |
| 85 |
|
ヨーロッパ | 197 |
| 86 |
|
ヨーロッパ | 166 |
| 87 |
|
ヨーロッパ | 162 |
| 88 |
|
アジア | 158 |
| 89 |
|
ヨーロッパ | 140 |
| 90 |
|
ヨーロッパ | 131 |
| 91 |
|
ヨーロッパ | 108 |
| 92 |
|
ヨーロッパ | 78 |
| 93 |
|
ヨーロッパ | 26 |
| 94 |
|
ヨーロッパ | 18 |
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2015年のデータを見ると、中国が世界の羊毛生産において他国を大きく引き離し、圧倒的な首位となりました。これは、中国が広大な国土と豊富な牧草地を持ち、羊の大規模な飼育が可能であることが主要な要因です。また、国内での羊毛需要の高まりや農業政策の支援が、生産量の増加に寄与していると考えられます。オーストラリアとニュージーランドも気候や土地条件が羊の飼育に非常に適しており、歴史的に高品質な羊毛を産出してきたことで知られています。これらの上位3国が世界の羊毛市場をリードしていることは、データから明らかです。
ヨーロッパ諸国を見ると、イギリスが68,390トンを生産し、ヨーロッパ内でトップですが、世界全体では4位にとどまります。フランス(14,124トン)、ドイツ(12,426トン)なども生産はしていますが、他の大陸の大規模生産国との比較では総量に大きな差が見られます。これは欧州が品質重視の生産体系を採用しているためであり、高級羊毛を主に市場に供給している背景があります。ただし、これらの国々では羊飼育の減少や農業従事者の減少といった課題があり、産業の持続可能性が問われています。
アフリカの国々では特にモロッコや南アフリカがランクインしています。モロッコは60,204トンとアフリカでのトップで、穏やかな気候条件が羊毛生産を支えています。しかし、他のアフリカ諸国では羊毛の生産量は比較的少なく、気候変動や土地の砂漠化などが生産の拡大を阻む要因となっています。
アジアでは、中国以外にもトルコ(59,196トン)、イラン(56,453トン)、パキスタン(44,600トン)、インド(43,600トン)がランクインしています。いずれも国土が広く、農業人口が多いため、羊毛生産に適した地域を多く有している国々です。この地域では国内需要も高く、特に衣料品産業との結びつきが強い点が特徴です。しかし、この地域では都市化の進展や土地の利用競争が、生産量の変化に影響を与える可能性がさらに高まっています。
日本に目を向けた場合、羊毛の生産は国内では極めて少ない状況です。季節や土地の制約、さらには農業人口の減少や畜産業の観光化(観光牧場の運営など)などが影響していると考えられます。一方で、羊毛を輸入に依存していることから、羊毛の輸入価格や国際市況の影響を受けやすい面もあります。
地政学的背景を考慮すると、南米の生産国であるアルゼンチンやウルグアイは羊毛産業にとって重要な国である一方、気候変動や不安定な政策状況が将来の生産量にリスクをもたらす可能性があります。また、中東諸国や北アフリカにおいては、紛争や持続可能な水資源の管理問題が生産量を左右する重要な要因になります。
今後の課題として、羊毛生産においては気候変動への対応が避けて通れません。砂漠化や異常気象により、草地の劣化が懸念されるため、適応的な農法の導入や持続可能な牧草地管理が必要です。また、各国の政策支援や国際協力の推進が、効果的な課題解決の鍵を握ります。例えば、中国やオーストラリアが積極的に進めるスマート農業技術の活用は、他国にとっても有益なモデルとなる可能性があります。加えて、市場の動向を見据えながら、供給網の効率化や品質向上も重要なテーマとなるでしょう。
総じて、2015年のデータは、羊毛生産が特定の国々に著しく集中している現状を示しています。しかし、気候変動や地政学的リスク、都市化が各国に異なる課題をもたらしており、これらの変化に適応するための国際的な取り組みが必要になっています。FAOやWTO(世界貿易機関)などの国際機関の役割がますます重要になると考えられます。