世界の羊の毛生産量ランキング【1961〜2023】国別推移・年間比較データ

1997年度における世界の羊毛生産量ランキングでは、オーストラリアが圧倒的な731,100トンで1位を占め、次いでニュージーランドが274,800トン、中国が255,059トンとなっています。この上位3か国が全体の生産量の大部分を占め、羊毛産業において支配的な地位を築いていることがわかります。他方で、ウルグアイやアルゼンチン、イギリスといった中規模の生産国が続き、ランキングの下位に至ると年間生産量が1,000トンを下回る国も多く見受けられます。

順位	国名	地域	生産量(トン)
1	オーストラリア	オセアニア	731,100
2	ニュージーランド	オセアニア	274,800
3	中国	アジア	255,059
4	ウルグアイ	南アメリカ	81,847
5	アルゼンチン	南アメリカ	68,000
6	イギリス	ヨーロッパ	64,000
7	ロシア連邦	ヨーロッパ	60,768
8	イラン（イスラム共和国）	アジア	57,000
9	南アフリカ	アフリカ	53,065
10	トルコ	アジア	45,632
11	インド	アジア	45,600
12	パキスタン	アジア	38,300
13	モロッコ	アフリカ	37,000
14	カザフスタン	アジア	34,565
15	スペイン	ヨーロッパ	31,935
16	シリア・アラブ共和国	アジア	26,400
17	アメリカ合衆国	北アメリカ	24,440
18	インドネシア	アジア	23,093
19	ルーマニア	ヨーロッパ	22,120
20	フランス	ヨーロッパ	22,000
21	アルジェリア	アフリカ	20,000
22	モンゴル	アジア	18,300
23	アフガニスタン	アジア	18,100
24	トルクメニスタン	アジア	17,900
25	チリ	南アメリカ	15,600
26	ウズベキスタン	アジア	15,247
27	ブラジル	南アメリカ	14,658
28	アイルランド	ヨーロッパ	12,000
29	イラク	アジア	12,000
30	エチオピア	アフリカ	11,655
31	ペルー	南アメリカ	11,635
32	キルギスタン	アジア	11,359
33	イタリア	ヨーロッパ	11,346
34	ドイツ	ヨーロッパ	9,798
35	サウジアラビア	アジア	9,600
36	アゼルバイジャン	アジア	9,562
37	ギリシャ	ヨーロッパ	9,391
38	チュニジア	アフリカ	8,874
39	ポルトガル	ヨーロッパ	8,768
40	リビア	アフリカ	8,400
41	ボリビア (多民族国家)	南アメリカ	8,232
42	エジプト	アフリカ	7,793
43	ブルガリア	ヨーロッパ	7,386
44	ウクライナ	ヨーロッパ	6,679
45	ノルウェー	ヨーロッパ	5,272
46	メキシコ	南アメリカ	4,349
47	イエメン	アジア	4,233
48	タンザニア連合共和国	アフリカ	3,759
49	レソト	アフリカ	3,500
50	ヨルダン	アジア	3,008
51	コロンビア	南アメリカ	3,000
52	ハンガリー	ヨーロッパ	2,959
53	アルバニア	ヨーロッパ	2,916
54	モルドバ共和国	ヨーロッパ	2,711
55	北マケドニア	ヨーロッパ	2,631
56	オランダ	ヨーロッパ	2,100
57	タジキスタン	アジア	1,969
58	エクアドル	南アメリカ	1,900
59	ケニア	アフリカ	1,900
60	グルジア	アジア	1,739
61	ポーランド	ヨーロッパ	1,733
62	ナミビア	アフリカ	1,700
63	バングラデシュ	アジア	1,400
64	カナダ	北アメリカ	1,390
65	アルメニア	アジア	1,309
66	レバノン	アジア	1,300
67	スロバキア	ヨーロッパ	1,226
68	ジンバブエ	アフリカ	1,020
69	アイスランド	ヨーロッパ	910
70	オーストリア	ヨーロッパ	849
71	パラグアイ	南アメリカ	845
72	エリトリア	アフリカ	820
73	イスラエル	アジア	750
74	スウェーデン	ヨーロッパ	680
75	スイス	ヨーロッパ	637
76	ネパール	アジア	624
77	ボスニア・ヘルツェゴビナ	ヨーロッパ	610
78	クロアチア	ヨーロッパ	399
79	キプロス	アジア	390
80	マリ	アフリカ	369
81	ミャンマー	アジア	345
82	チェコ	ヨーロッパ	310
83	クウェート	アジア	290
84	ベラルーシ	ヨーロッパ	268
85	デンマーク	ヨーロッパ	200
86	マレーシア	アジア	167
87	ラトビア	ヨーロッパ	143
88	エストニア	ヨーロッパ	120
89	フィンランド	ヨーロッパ	117
90	スロベニア	ヨーロッパ	67
91	リトアニア	ヨーロッパ	56
92	マルタ	ヨーロッパ	27
+ すべての国を見る

1997年度の全世界の羊毛生産量データを見ると、オーストラリアとニュージーランド、中国の3か国が合計で約1,261,959トンを生産しており、これは全体の大部分をカバーしています。この3か国の生産量の多さは、それぞれの国が気候、草地、飼育技術といった観点で羊毛生産に非常に適していることに起因しています。例えば、オーストラリアは広大な乾燥地帯が羊の育成に適しており、特に高品質のメリノウールが世界的に評価されています。同様にニュージーランドも気候と豊かな草原を活かし、羊毛の質と量ともに高い水準を保っています。一方、中国はその広い国土と豊富な労働力を背景に、羊の飼育頭数を増やすことで量を確保している点が特徴的です。

中位に位置するウルグアイやアルゼンチン、イギリスなどは、地域の地理的特性により羊毛生産が根付いています。南米では家畜としての羊が長い伝統を持っており、イギリスでは歴史的に繊維産業が発展してきたことが生産量に現れています。一方で、ランキング下位の国々では、羊毛生産が農業の一部門として付加的に行われているケースが多く、輸出用というよりも国内需要に応じた小規模な生産に留まっている場合が大半です。

このような生産量の分布には羊毛の需要と市場の変化も関連しています。羊毛の利用は衣料品産業やカーペットの製造、フェルトに多く活用されていますが、合成繊維の普及が急速に進む中で、羊毛の需要も減少傾向にあります。そのため、伝統的に羊毛を主力輸出品として依存している国々では市場の低迷に対する懸念が生じています。

将来的な課題としては、複数の角度から検討する必要があります。まず、主要産出国において持続可能な羊毛生産がどう確立されるかが問われます。近年注目されている動物福祉や環境に配慮した牧畜技術の導入が重要性を増しており、特にオーストラリアやニュージーランドではこれが喫緊の課題と言えます。また、下位生産国は地域特有の問題も抱えています。たとえば、乾燥地帯に依存しているアフリカの国々では、気候変動による降水量の減少が、羊飼育環境に直接的な影響を与えるリスクがあります。

さらに国際的視点では、地政学的リスクにも目を向ける必要があります。紛争地域や貿易規制の影響は羊毛の流通にも直接影響を及ぼします。1997年度のデータでは比較的安定した状況下の生産量が記録されていますが、現在や近未来においては政治的な情勢が羊毛の輸出入の円滑さを妨げる可能性が存在します。

これらの背景を考慮すると、国際機関が果たす役割も鍵となるでしょう。国際連合食糧農業機関（FAO）の支援を通じて、知識や技術の共有、各国間の協力体制の強化が進められるべきです。特に低・中所得国には、生産効率を高めるための技術支援や市場参入の機会を提供することが求められます。また、羊毛生産における環境基準を国際的に統一し、持続可能な生産への移行を後押しする政策も重要です。

結論として、1997年度の羊毛生産データは、歴史的背景や地理的特性が羊毛生産量に大きく寄与していることを示しています。しかし、今後の生産量の安定と市場拡大を図るためには、技術革新、国際協力、持続可能性の追求が欠かせません。さらに、地政学的リスクや気候変動といった外部要因への柔軟な対応が求められる状況にあります。