1992年度の羊の毛生産量ランキングにおいて、オーストラリアが圧倒的な差をつけて87万3,500トンで1位を獲得しました。2位は29万6,000トンを生産したニュージーランド、続く3位は23万8,192トンを生産した中国です。トップ3カ国が全世界の羊毛生産量の大部分を占めており、特にオーストラリアは世界の羊毛生産を牽引する重要な役割を果たしています。これに続くのはロシア連邦やアルゼンチンといった国で、それぞれ17万8,640トン、11万トンの生産量を記録しています。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中南米など世界中で羊毛が生産されている一方で、上位数カ国に生産が集中しています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 873,500 |
| 2 |
|
オセアニア | 296,000 |
| 3 |
|
アジア | 238,192 |
| 4 |
|
ヨーロッパ | 178,640 |
| 5 |
|
南アメリカ | 110,000 |
| 6 |
|
アジア | 96,451 |
| 7 |
|
南アメリカ | 84,425 |
| 8 |
|
アフリカ | 83,000 |
| 9 |
|
ヨーロッパ | 70,442 |
| 10 |
|
アジア | 59,050 |
| 11 |
|
アジア | 49,306 |
| 12 |
|
アジア | 46,000 |
| 13 |
|
アジア | 38,800 |
| 14 |
|
北アメリカ | 37,622 |
| 15 |
|
アフリカ | 36,000 |
| 16 |
|
アジア | 35,142 |
| 17 |
|
アジア | 33,700 |
| 18 |
|
ヨーロッパ | 28,405 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 28,020 |
| 20 |
|
南アメリカ | 27,654 |
| 21 |
|
アジア | 27,400 |
| 22 |
|
ヨーロッパ | 23,080 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 22,000 |
| 24 |
|
アジア | 21,000 |
| 25 |
|
アジア | 20,500 |
| 26 |
|
アフリカ | 20,200 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 19,109 |
| 28 |
|
アジア | 18,705 |
| 29 |
|
アジア | 16,600 |
| 30 |
|
南アメリカ | 16,400 |
| 31 |
|
アジア | 15,187 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 13,700 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 13,655 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 13,241 |
| 35 |
|
アフリカ | 11,000 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 10,507 |
| 37 |
|
南アメリカ | 9,600 |
| 38 |
|
アジア | 9,506 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 8,835 |
| 40 |
|
アジア | 7,600 |
| 41 |
|
アフリカ | 7,543 |
| 42 |
|
アフリカ | 7,500 |
| 43 |
|
南アメリカ | 7,473 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 6,596 |
| 45 |
|
ヨーロッパ | 5,308 |
| 46 |
|
アジア | 5,300 |
| 47 |
|
アフリカ | 5,000 |
| 48 |
|
南アメリカ | 4,675 |
| 49 |
|
ヨーロッパ | 4,526 |
| 50 |
|
アジア | 4,159 |
| 51 |
|
アジア | 4,045 |
| 52 |
|
アジア | 3,700 |
| 53 |
|
アフリカ | 3,700 |
| 54 |
|
ヨーロッパ | 3,000 |
| 55 |
|
ヨーロッパ | 2,930 |
| 56 |
|
ヨーロッパ | 2,642 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 2,616 |
| 58 |
|
アジア | 2,100 |
| 59 |
|
アフリカ | 2,040 |
| 60 |
|
南アメリカ | 1,898 |
| 61 |
|
北アメリカ | 1,498 |
| 62 |
|
南アメリカ | 1,400 |
| 63 |
|
アフリカ | 1,400 |
| 64 |
|
ヨーロッパ | 1,200 |
| 65 |
|
アジア | 1,149 |
| 66 |
|
アジア | 1,100 |
| 67 |
|
ヨーロッパ | 926 |
| 68 |
|
アフリカ | 892 |
| 69 |
|
南アメリカ | 784 |
| 70 |
|
アジア | 750 |
| 71 |
|
ヨーロッパ | 697 |
| 72 |
|
ヨーロッパ | 682 |
| 73 |
|
ヨーロッパ | 630 |
| 74 |
|
アジア | 620 |
| 75 |
|
ヨーロッパ | 484 |
| 76 |
|
ヨーロッパ | 470 |
| 77 |
|
アジア | 425 |
| 78 |
|
ヨーロッパ | 400 |
| 79 |
|
アフリカ | 376 |
| 80 |
|
ヨーロッパ | 348 |
| 81 |
|
ヨーロッパ | 311 |
| 82 |
|
アジア | 284 |
| 83 |
|
アジア | 276 |
| 84 |
|
ヨーロッパ | 134 |
| 85 |
|
ヨーロッパ | 115 |
| 86 |
|
アジア | 32 |
| 87 |
|
ヨーロッパ | 29 |
| 88 |
|
ヨーロッパ | 23 |
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1992年の国連食糧農業機関(FAO)の発表したデータを見ると、羊毛生産における地理的、経済的な傾向が浮き彫りになります。まず、生産量上位のオーストラリアとニュージーランドは、温暖で草原が広がる気候条件に恵まれており、羊の飼育に適した地理的環境を有しています。こうした農牧条件が、大規模な羊毛生産を可能にしていることがわかります。これらの国々による大量生産は、世界の繊維産業、特に衣服や室内装飾品の生産に欠かせない供給源となっています。
中国が3位にランクインしている点も注目に値します。当時の中国はまだ羊毛の加工や製品化の面で国際競争力を高めつつある段階にありながら、生産量の多さが目立ちます。これは、中国が広大な国土と多様な気候帯をもち、特定の地域での羊の飼育が盛んであるためと考えられます。この傾向は国内消費需要の増加だけでなく、将来の輸出戦略を見据えた生産基盤構築の一環とも読み取れます。
一方、ヨーロッパや南米にも興味深い特徴があります。アルゼンチンやウルグアイは、草原地帯を活かして地域経済を支える主要産業として羊毛の生産を展開しています。これらの国々は規模の点でオーストラリアやニュージーランドには劣りますが、品質の高い繊維として評価される羊毛を多く生産しています。また、イギリスやフランスなど、伝統的に羊毛産業が盛んなヨーロッパ諸国もランキングに名を連ねていますが、近代的な産業構造とともに生産量が他地域より低下していることが確認できます。
課題として挙げられるのは、羊毛生産の地域的偏りと長期的なリスクです。多くの上位国の生産量が高い一方、アフリカや中東地域の多くの国では生産量が比較的少なく、繊維産業への貢献度が低い状況が続いています。生産技術や経済基盤の向上が課題になるでしょう。また、気候変動は特定の地域に深刻な影響を及ぼしており、特に羊毛生産では、乾燥化や牧草地の減少が懸念されています。このような環境変化が持続的な羊毛供給に大きな脅威を与える可能性があります。
将来への提案としては、いくつかの施策が考えられます。第一に、生産量が低い国々への技術援助や育成プログラムの導入が挙げられます。例えば、アフリカ諸国では灌漑や牧草地整備を支援することで、羊の飼育環境を改善する取り組みが重要です。第二に、高品質な羊毛の開発や市場の多様化を進めることが求められます。これは、単に量的な生産だけでなく、品質と多用途性を重視する姿勢でもあります。また、国際的な枠組みとして、気候変動の影響を軽減するための協力プロジェクトを立ち上げることも有益です。
結論として、1992年度のデータは、当時の世界各地域の羊毛生産状況や経済的役割を明らかにすると共に、生産地における気候・経済的課題の存在を示しています。各国が地域資源をうまく活用するだけでなく、国際協力を通じて共有課題に取り組む姿勢が未来の羊毛産業の持続可能性を高める鍵となるでしょう。政策的には、農牧業支援と気候変動対策の両立を目指した戦略が効果的です。