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日本の大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、日本の大麦生産量は、1961年の1,976,300トンをピークに減少傾向が続いています。2023年には232,300トンでした。特に1970年代以降の急激な減少が顕著ですが、2000年代以降は低い水準での安定を見せています。近年の生産量はやや回復の兆しが見られますが、依然として全体的な規模はかつての水準に遠く及びません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 232,300
-0.43% ↓
2022年 233,300
-0.64% ↓
2021年 234,800
5.91% ↑
2020年 221,700
-0.45% ↓
2019年 222,700
27.48% ↑
2018年 174,700
-5.47% ↓
2017年 184,800
8.45% ↑
2016年 170,400
-3.67% ↓
2015年 176,900
4.24% ↑
2014年 169,700
-7.17% ↓
2013年 182,800
6.03% ↑
2012年 172,400
0.52% ↑
2011年 171,500
6.59% ↑
2010年 160,900
-10.21% ↓
2009年 179,200
-17.5% ↓
2008年 217,200
11.61% ↑
2007年 194,600
11.71% ↑
2006年 174,200
-5.02% ↓
2005年 183,400
-7.65% ↓
2004年 198,600
0.05% ↑
2003年 198,500
-8.61% ↓
2002年 217,200
5.23% ↑
2001年 206,400
-3.69% ↓
2000年 214,300
4.38% ↑
1999年 205,300
42.97% ↑
1998年 143,600
-25.63% ↓
1997年 193,100
-17.2% ↓
1996年 233,200
6.87% ↑
1995年 218,200
-2.94% ↓
1994年 224,800
-20.68% ↓
1993年 283,400
-0.84% ↓
1992年 285,800
1.49% ↑
1991年 281,600
-18.59% ↓
1990年 345,900
-6.87% ↓
1989年 371,400
-6.92% ↓
1988年 399,000
13.06% ↑
1987年 352,900
2.47% ↑
1986年 344,400
-8.79% ↓
1985年 377,600
-4.53% ↓
1984年 395,500
4.24% ↑
1983年 379,400
-2.64% ↓
1982年 389,700
1.75% ↑
1981年 383,000
-0.6% ↓
1980年 385,300
-5.19% ↓
1979年 406,400
24.66% ↑
1978年 326,000
58.41% ↑
1977年 205,800
-2.14% ↓
1976年 210,300
-4.8% ↓
1975年 220,900
-5.23% ↓
1974年 233,100
7.77% ↑
1973年 216,300
-33.41% ↓
1972年 324,800
-35.4% ↓
1971年 502,800
-12.17% ↓
1970年 572,500
-29.5% ↓
1969年 812,100
-20.42% ↓
1968年 1,020,500
-1.14% ↓
1967年 1,032,300
-6.57% ↓
1966年 1,104,900
-10.46% ↓
1965年 1,234,000
2.59% ↑
1964年 1,202,800
-31.62% ↓
1963年 1,758,900
1.89% ↑
1962年 1,726,200
-12.65% ↓
1961年 1,976,300 -

日本における大麦の生産量は、1960年代を中心とした大量生産の時期を経て、その後大幅な減少が継続しており、この傾向は国内農業の構造的な変化を反映しています。1961年の約197万トンから、1970年代には年間50万トンを下回る水準まで落ち込む結果となりました。この背景には、日本の高度経済成長期の農業政策の変化が密接に関連しています。例えば、主食である米の生産を優先する多角化された農業政策や、消費者の食生活の多様化が影響を与えたと考えられます。

1978年から1980年代にかけては一度微妙な回復が見られたものの、その後は再び減少傾向をたどり、1990年代以降は年間20万トン前後で推移しています。この期間の減少の原因としては、農業従事者の高齢化に伴う労働力不足、農地面積の縮小、輸入農作物の拡大などが挙げられます。特に安価で安定供給が可能な外国産大麦の流入は、国内生産への直接的な影響を与えました。

近年では、2019年から2023年にかけて再び一定の生産量増加が見られるものの、この回復は緩やかなものであり、根本的な生産基盤が変化したわけではありません。また、2023年の232,300トンという数字は、1961年のピーク時から比較しておよそ90%の減少にあたります。これにより、日本国内における大麦需給バランスの多くが現在、輸入に依存する状況となっています。

大麦は麦芽の主要原料や飼料としても重要であり、日本国内の食文化や農業経済にとっても欠かせない作物です。特にビール産業や加工食品では大麦の品質が重要視され、国産大麦への需要は一定数維持されています。しかし、国内農業の効率化と収益性向上を求められる中、大麦栽培がもつ多収量に対する課題や、他の高収益作物との競合による後退が今後の課題とされます。

他国と比較すると、例えば中国は世界でも有数の大麦生産国であり、大きな農地が適しているため自給率を高く保っています。一方でイギリスやフランスといったヨーロッパ諸国は大麦が主食ではないものの、ビール原料や家畜飼料として広範囲で栽培されています。これらの国々では農地の規模拡大や生産技術の進化により、安定した大麦供給が実現されています。このような国々の取り組みは、日本農業への参考となるでしょう。

今後の課題としては、日本の大麦生産をいかに持続可能な形で維持、成長させるかが挙げられます。具体的には、若い農業者の育成や、効率的な生産技術の導入、さらには地域間協力を推し進める枠組みづくりが重要です。また、輸入物が多い現状の中で、経済的自立を目指し、国内の高品質麦を付加価値化した商品ブランド化を推進することも、国内生産の意義を高める有効策といえます。

地政学的には、輸入依存度の高さは調達リスクを内包しています。例えば、輸出国での気候変動による自然災害や、感染症拡大、さらには地域衝突といった不確実性が起きた際、国内供給に深刻な影響が出る可能性があります。したがって、日本の食料安全保障の面からも、一定の自給率維持が必要と考えられます。

結論として、日本の大麦生産量は過去と比較して大幅な減少を見せていますが、現在の需要に応じた戦略的な政策の策定次第では、産業として新たな価値を創造する可能性を秘めています。国際機関や他国の成功事例を参考にしながら、農業資源の再評価と革新に取り組むことが求められます。