国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新の統計によると、日本の小麦生産量は、1960年代以降、長期的に減少傾向を示していましたが、2000年代以降はやや回復も見られました。近年では2019年が1,037,000トン、2021年が1,097,000トンと高水準の生産量に達しました。しかし、年ごとの差異が大きく、全体的には需要に対して供給が不安定な状況にあるといえます。
日本の小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 993,500 |
2021年 | 1,097,000 |
2020年 | 949,300 |
2019年 | 1,037,000 |
2018年 | 764,900 |
2017年 | 906,700 |
2016年 | 790,800 |
2015年 | 1,004,000 |
2014年 | 852,400 |
2013年 | 811,700 |
2012年 | 857,800 |
2011年 | 746,300 |
2010年 | 571,300 |
2009年 | 674,200 |
2008年 | 881,200 |
2007年 | 910,100 |
2006年 | 837,200 |
2005年 | 874,700 |
2004年 | 860,300 |
2003年 | 855,900 |
2002年 | 827,800 |
2001年 | 699,900 |
2000年 | 688,200 |
1999年 | 583,100 |
1998年 | 569,500 |
1997年 | 573,100 |
1996年 | 478,100 |
1995年 | 443,600 |
1994年 | 564,800 |
1993年 | 637,800 |
1992年 | 758,700 |
1991年 | 759,000 |
1990年 | 951,500 |
1989年 | 984,500 |
1988年 | 1,021,000 |
1987年 | 863,700 |
1986年 | 875,700 |
1985年 | 874,200 |
1984年 | 740,500 |
1983年 | 695,300 |
1982年 | 741,800 |
1981年 | 587,400 |
1980年 | 582,800 |
1979年 | 541,300 |
1978年 | 366,700 |
1977年 | 236,400 |
1976年 | 222,400 |
1975年 | 240,700 |
1974年 | 231,700 |
1973年 | 202,300 |
1972年 | 283,900 |
1971年 | 440,300 |
1970年 | 473,600 |
1969年 | 757,900 |
1968年 | 1,012,000 |
1967年 | 996,900 |
1966年 | 1,024,000 |
1965年 | 1,287,000 |
1964年 | 1,244,000 |
1963年 | 715,500 |
1962年 | 1,631,000 |
1961年 | 1,781,000 |
日本の小麦生産量の推移を見ていくと、1960年代初頭の1,700,000トン以上に達していた時代から、長期的な減少が1950年代後半以降続きました。この変動にはいくつかの要因が関係しています。地政学的な背景として、第二次世界大戦後の日本では、食糧需給安定のために輸入依存度を高くする政策が取られ、安価で多量の輸入小麦が国内市場を占領しました。これにより、国内小麦生産の経済的な競争力が削がれる結果となり、多くの農家が小麦の栽培を縮小、あるいは完全に撤退することになりました。
更に、農業の機械化が進んだものの、農地の都市化や労働力の高齢化が加速し、小麦への投資や栽培面積も減少しました。この傾向は1990年代後半まで続き、特に1970年代では200,000トン程度にまで生産量が落ち込んでいました。一方で、政府の農業補助金や支援プログラムが功を奏し、2000年代以降には緩やかな増加傾向が見られます。特に2015年や2021年には1,000,000トンを超える量に達し、一部の地域での生産性向上や新しい品種の導入、農業技術の改善がその背景として挙げられます。
しかしながら、日本は現在も小麦の多くを輸入に頼っている状況が続いています。アメリカやカナダ、オーストラリアなどからの輸入小麦は、全体需要の約9割を占めています。また、地球温暖化による気候変動が農作物全体に大きな影響を与える中、日本の小麦生産も例外ではありません。実際、2018年や2020年のように台風や豪雨、猛暑といった自然災害が収穫量にマイナスの影響を及ぼす年がありました。
今後の課題としてまず挙げられるのは、国産小麦の安定した供給を目指すための生産基盤の強化です。具体的には、小麦生産の効率向上を目指したスマート農業の推進が重要となります。例えば、データを活用して栽培条件をきめ細かく管理する技術や、労働時間削減を目的とする自動化農機の導入が考えられます。また、地域の特性に応じた品種改良や、気候変動への適応策も並行して進める必要があります。
一方で、国際的な視点では、地政学的なリスクも考慮しなければなりません。近年のウクライナとロシア間の紛争が示したように、主要な穀物輸出国における供給障害は、日本を含む輸入依存国家に深刻な影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、日本国内での小麦自給率向上を目指すという視点は、食糧安全保障上も極めて重要です。
結論として、日本の小麦生産は徐々に回復基調にありますが、気候変動や輸入依存のリスクなど多くの課題が残されています。これらを踏まえ、政府や地方自治体、農業関係者が協力して効率的かつ持続可能な農業体制を整備することが求められます。具体的な対策として、地方の若手農家育成や、国産小麦需要を喚起するための市場拡大政策なども一案です。今後、日本がどのように持続可能で安定した小麦生産を実現するかが注目されます。