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日本の鶏飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによれば、日本の鶏飼養数は1961年から2022年にかけて大きな変動を見せています。特に1960年代から1980年代にかけて急激に増加した一方で、1990年代以降は緩やかな減少傾向が見られました。しかし2000年代後半以降は持ち直し、2022年の飼養数は321,891千羽と安定傾向にあることが明らかになっています。途中、2011年に急激な減少が見られることも注目される点です。

年度 飼養数(羽)
2022年 321,891.00
2021年 323,031.00
2020年 319,469.00
2019年 323,145.00
2018年 323,126.00
2017年 313,823.00
2016年 310,128.00
2015年 302,887.00
2014年 310,553.00
2013年 306,408.00
2012年 177,607.00
2011年 178,546.00
2010年 286,000.00
2009年 285,349.00
2008年 284,651.00
2007年 288,531.00
2006年 280,642.00
2005年 265,200.00
2004年 279,500.00
2003年 283,942.00
2002年 287,404.00
2001年 292,437.00
2000年 295,792.00
1999年 296,250.00
1998年 303,022.00
1997年 307,351.00
1996年 308,768.00
1995年 313,536.00
1994年 323,660.00
1993年 333,814.00
1992年 334,658.00
1991年 331,526.00
1990年 337,857.00
1989年 343,618.00
1988年 345,371.00
1987年 342,948.00
1986年 336,594.00
1985年 327,692.00
1984年 319,605.00
1983年 307,288.00
1982年 299,128.00
1981年 286,284.00
1980年 284,660.00
1979年 282,488.00
1978年 272,637.00
1977年 255,261.00
1976年 240,669.00
1975年 242,163.00
1974年 249,497.00
1973年 243,689.00
1972年 233,490.00
1971年 236,835.00
1970年 225,045.00
1969年 199,708.00
1968年 176,321.00
1967年 158,963.00
1966年 137,810.00
1965年 133,716.00
1964年 121,082.00
1963年 99,246.00
1962年 90,669.00
1961年 72,213.00

最新のデータを紐解くと、日本の鶏飼養数は1961年の72,213千羽から高度経済成長期である1970年代には200,000千羽を突破、1985年には327,692千羽と過去最大に達しています。この急激な増加の背景には、国民の食生活の西洋化、特に鶏肉や卵といった家禽製品の需要増加が深く関わっています。その後、1990年代には飼養数が緩やかに減少し、2005年の265,200千羽まで落ち込みましたが、それ以降は一定の回復を見せました。

特筆すべきは2011年の急激な減少で、178,546千羽という大幅な低下が記録されました。この要因には、東日本大震災やそれに伴う原発事故の影響が関係していると考えられます。この災害による農地の喪失や家畜施設の破壊、さらには放射能汚染懸念が鶏の飼養数に重大な打撃を与えたと言えます。その後、2013年に306,408千羽まで回復を果たし、近年はおおむね320,000千羽前後で安定しています。

海外に目を向けると、中国やインドなど人口が多く鶏肉の需要が急増している国々では、飼養数が継続的に増加しています。中国では政策的な食肉生産の拡大が進み、特に農村部での家禽飼養が盛んです。一方で、発展途上国の中には飼料価格の高騰や気候変動による農業生産への影響で、飼養数が大きく制限される例もあります。こうした世界的な状況と比較すると、日本は消費者ニーズに見合った生産バランスを保ちながら、効率的な飼育体制を維持していると言えます。

とはいえ、日本の鶏飼養においてもいくつかの課題が挙げられます。第一に、飼料価格の高騰です。日本は飼料をほぼ輸入に依存しているため、国際市場の変動や地政学的なリスクの影響を受けやすい状況にあります。特に、ウクライナ情勢に起因する穀物価格の上昇は、畜産業の経済的基盤を揺るがす可能性があります。次に、感染症リスクの増加です。近年、鳥インフルエンザの流行が頻発しており、生産現場では防疫対策の強化が求められています。

将来的な対策として、まず第一に飼料の国内生産拡充や代替飼料の活用が挙げられます。飼料用米や昆虫タンパク質など、国内で調達可能な新素材の研究開発を積極的に進めるべきです。第二に、地域ごとの生産体制の分権化を重視するべきです。災害や疫病といった外的要因の影響を最小化するため、生産拠点を多地域化し、リスク分散を図るべきです。そして第三に、消費者との繋がりを強化し、安心・安全な鶏肉と卵の供給体制を透明化することです。例えば、生産地情報や生産方法の見える化を進めることで、信頼性を高め、地元消費を促進することができます。

また、グローバルな視点から見ると、環境負荷の軽減も重要な課題です。鶏の飼養における温室効果ガスの削減や廃棄物の再利用技術を取り入れることで、日本だけでなく世界全体の持続可能な食料供給に寄与することが期待されます。国際機関や他国の知見を活用し、より効率的で環境に配慮した養鶏モデルを構築することが、日本が果たすべき役割の一つであると考えます。

結論として、日本の鶏飼養数はこれまでの変動を経て安定期に入りつつありますが、環境変化や地政学的影響、疫病リスクなどの課題に直面しています。これらを克服するためには、政府や畜産業界だけでなく、消費者一人ひとりの理解と協力が不可欠です。将来に向けて、持続可能な鶏産業の実現に向けた努力が続けられることが求められます。