Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、日本のエンドウ豆(生)の生産量は、1961年の112,800トンをピークに、大きな減少傾向を見せています。2023年には23,665トンと、過去最小規模となりました。このデータは、半世紀以上にわたる日本の農業構造の変化や、エンドウ豆の生産における課題を浮き彫りにしています。
日本のエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 23,665 |
-5.58% ↓
|
2022年 | 25,062 |
-1.33% ↓
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2021年 | 25,400 |
1.2% ↑
|
2020年 | 25,100 |
-4.56% ↓
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2019年 | 26,300 |
3.14% ↑
|
2018年 | 25,500 |
-9.25% ↓
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2017年 | 28,100 |
17.57% ↑
|
2016年 | 23,900 |
-5.16% ↓
|
2015年 | 25,200 |
-5.97% ↓
|
2014年 | 26,800 |
-0.37% ↓
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2013年 | 26,900 |
-10.93% ↓
|
2012年 | 30,200 |
11.03% ↑
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2011年 | 27,200 |
3.82% ↑
|
2010年 | 26,200 |
-6.43% ↓
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2009年 | 28,000 |
-2.1% ↓
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2008年 | 28,600 |
4% ↑
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2007年 | 27,500 |
1.48% ↑
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2006年 | 27,100 |
-7.19% ↓
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2005年 | 29,200 |
2.1% ↑
|
2004年 | 28,600 |
-1.04% ↓
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2003年 | 28,900 |
-13.21% ↓
|
2002年 | 33,300 |
2.78% ↑
|
2001年 | 32,400 |
-13.14% ↓
|
2000年 | 37,300 |
3.61% ↑
|
1999年 | 36,000 |
-0.55% ↓
|
1998年 | 36,200 |
-12.14% ↓
|
1997年 | 41,200 |
-2.37% ↓
|
1996年 | 42,200 |
-5.59% ↓
|
1995年 | 44,700 |
-4.69% ↓
|
1994年 | 46,900 |
-6.01% ↓
|
1993年 | 49,900 |
-4.22% ↓
|
1992年 | 52,100 |
-0.57% ↓
|
1991年 | 52,400 |
-9.81% ↓
|
1990年 | 58,100 |
-3.81% ↓
|
1989年 | 60,400 |
-2.42% ↓
|
1988年 | 61,900 |
-0.32% ↓
|
1987年 | 62,100 |
-5.48% ↓
|
1986年 | 65,700 |
-1.2% ↓
|
1985年 | 66,500 |
-2.21% ↓
|
1984年 | 68,000 |
6.08% ↑
|
1983年 | 64,100 |
-5.87% ↓
|
1982年 | 68,100 |
9.84% ↑
|
1981年 | 62,000 |
-3.43% ↓
|
1980年 | 64,200 |
-12.77% ↓
|
1979年 | 73,600 |
6.98% ↑
|
1978年 | 68,800 |
12.79% ↑
|
1977年 | 61,000 |
-1.13% ↓
|
1976年 | 61,700 |
-5.22% ↓
|
1975年 | 65,100 |
-2.69% ↓
|
1974年 | 66,900 |
-4.15% ↓
|
1973年 | 69,800 |
-5.93% ↓
|
1972年 | 74,200 |
-5.48% ↓
|
1971年 | 78,500 |
11.66% ↑
|
1970年 | 70,300 |
-13.32% ↓
|
1969年 | 81,100 |
-6.46% ↓
|
1968年 | 86,700 |
2.48% ↑
|
1967年 | 84,600 |
-14.89% ↓
|
1966年 | 99,400 |
-1.88% ↓
|
1965年 | 101,300 |
2.63% ↑
|
1964年 | 98,700 |
43.67% ↑
|
1963年 | 68,700 |
-43.41% ↓
|
1962年 | 121,400 |
7.62% ↑
|
1961年 | 112,800 | - |
日本のエンドウ豆(生)の生産量推移を見ると、1961年から2023年までの62年間にわたり、生産量は大幅に縮小していることがわかります。1961年の112,800トンという値は、当時の生産量のピーク時を示していますが、その後、1960年代半ばから減少が始まり、1990年代には50,000トンを下回る低水準へ移行しました。そして、2023年には23,665トンと記録され、約62年前のピークと比較して、80%以上の減少となっています。
この長期的な低下傾向の主な要因は、多角的に考える必要があります。一つは、日本の農業全体における高齢化と担い手不足です。エンドウ豆のような労働集約型の作物は特に継続的な人手を要するため、高齢農家の引退が直撃していると考えられます。また、エンドウ豆の国内消費需要そのものの低下も指摘できます。ライフスタイルの変化により、エンドウ豆を含む伝統的な野菜の需要が減少し、これが生産量の縮小を招いていると言えます。
さらに地理的要因も重要です。エンドウ豆は気候や土壌条件に影響を受けやすいため、気候変動による天候不順や自然災害の増加が収量に影響している可能性があります。特に近年の異常気象は、エンドウ豆の育成期間において降水量や気温の不安定化を引き起こし、生産性を低下させていると考えられます。
他国との比較を行うと、中国やインドではエンドウ豆の生産が順調に増加している傾向があります。これらの国々は、人口増加と中産階級の台頭に伴い、食糧需要が急拡大していることが背景です。一方で、日本のように少子高齢化が進む国では、国内需要の減少が農業の競争力の低下につながる傾向が見受けられます。さらに、アメリカやヨーロッパではエンドウ豆の産業利用(例えば植物性タンパク質としての利用)が注目されていますが、日本ではこうした新しい需要の開拓は進んでいない状況です。
このような背景から、日本のエンドウ豆生産における課題に対していくつかの対応策が考えられます。まず、担い手不足に対する取り組みとして、国内外からの労働力を補うために移民政策を強化し、エンドウ豆の生産を担う新世代の農業者を育成することが重要です。また、技術革新による生産性向上も急務です。例えば、農業IoTや自動化技術を活用し、効率的で収益性の高い生産体制を構築することが期待されます。
さらには、エンドウ豆の需要促進のため、国内消費者への価値提案も必要です。栄養価が高いことや、ヘルシー志向の食材としての魅力を積極的にアピールし、料理レシピの開発やプロモーションを進めることが考えられます。また、エンドウ豆を原材料とした植物性タンパク質の市場開拓も有望です。これにより、単なる農産物としてだけでなく、食品産業への付加価値の高い素材としての用途が広がる可能性があります。
結論として、日本のエンドウ豆生産量の減少は、農業構造の変化と気候要因、そして需要の減退といった複合的な理由に基づいていることがわかります。将来的には、国内外の需要を見据えた持続可能な生産体制の構築や、新しい利用法の探求を通じて、この作物の持続可能性を確保していくことが求められます。国としては、地域間協力や技術革新を促進するための政策支援を強化し、農業の新たな未来を切り拓くべきです。