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日本のそば生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、日本のそば生産量は1960年代以降、長期的には減少傾向を示していましたが、直近のデータでは持ち直し、2020年以降はおおよそ40,000トン以上を維持しています。最も低迷していた1970年代後半から1980年代では年平均19,000トン程度でしたが、2020年には44,800トンと大きく増加しています。この変化の背後には、農業政策や食文化の見直し、都市と地方を結ぶ振興策などが影響していると考えられます。

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年度 生産量(トン) 増減率
2023年 35,500
-11.25% ↓
2022年 40,000
-2.2% ↓
2021年 40,900
-8.71% ↓
2020年 44,800
5.16% ↑
2019年 42,600
46.9% ↑
2018年 29,000
-15.7% ↓
2017年 34,400
19.44% ↑
2016年 28,800
-17.24% ↓
2015年 34,800
11.9% ↑
2014年 31,100
-6.89% ↓
2013年 33,400
-25.11% ↓
2012年 44,600
39.38% ↑
2011年 32,000
7.74% ↑
2010年 29,700
94.12% ↑
2009年 15,300
-34.05% ↓
2008年 23,200
-11.79% ↓
2007年 26,300
-20.3% ↓
2006年 33,000
5.77% ↑
2005年 31,200
52.94% ↑
2004年 20,400
-23.88% ↓
2003年 26,800
5.51% ↑
2002年 25,400
-2.31% ↓
2001年 26,000
-8.77% ↓
2000年 28,500
23.91% ↑
1999年 23,000
28.49% ↑
1998年 17,900
-10.5% ↓
1997年 20,000
-16.67% ↓
1996年 24,000
13.74% ↑
1995年 21,100
17.22% ↑
1994年 18,000
-10% ↓
1993年 20,000
-7.83% ↓
1992年 21,700
10.15% ↑
1991年 19,700
-5.74% ↓
1990年 20,900
1.95% ↑
1989年 20,500
-0.73% ↓
1988年 20,650
12.23% ↑
1987年 18,400 -
1986年 18,400
6.36% ↑
1985年 17,300
-5.98% ↓
1984年 18,400
6.98% ↑
1983年 17,200
-9.95% ↓
1982年 19,100
6.11% ↑
1981年 18,000
11.8% ↑
1980年 16,100
-29.69% ↓
1979年 22,900
-13.26% ↓
1978年 26,400
30.69% ↑
1977年 20,200
12.85% ↑
1976年 17,900
-15.96% ↓
1975年 21,300
-25% ↓
1974年 28,400
1.43% ↑
1973年 28,000
11.55% ↑
1972年 25,100
28.72% ↑
1971年 19,500
13.37% ↑
1970年 17,200
-21.46% ↓
1969年 21,900
-0.9% ↓
1968年 22,100
-19.64% ↓
1967年 27,500
-0.72% ↓
1966年 27,700
-7.97% ↓
1965年 30,100
11.07% ↑
1964年 27,100
-33.09% ↓
1963年 40,500
8.87% ↑
1962年 37,200
-13.08% ↓
1961年 42,800 -

日本のそばの生産量推移を振り返ると、1960年代には40,000トンを超えていたものの、1964年以降急激な減少傾向に入り、特に1970年代から1980年代にかけては長期的な低迷が見られました。例えば、1970年の17,200トンから1980年の16,100トンにいたるまで、減少傾向はほぼ一貫していました。この背景には、米や小麦など他の主要作物の生産に注力が集まり、そばの栽培が後回しにされたことが挙げられます。同時に、農家の高齢化による生産効率の低下、農地の縮小なども、この時期の生産減少を下支えする要因となっていました。

しかし、2000年代に入るとそば生産量に回復の兆しが見られ、2005年には31,200トン、さらに2012年には44,600トンを記録しました。この回復は、日本国内での地域振興策や「地産地消」の動きのなかで、地元産の農産品としてそばが見直され始めたことが要因と考えられます。また、ヘルシー志向な食文化の広がりも、そばの需要を後押ししました。

近年では、2020年の44,800トンをピークに、2021年が40,900トン、2022年には40,000トンとやや減少気味に推移していますが、それでも1970年代後半から1980年代に比べると非常に高い水準を維持しています。特に、2020年に生産量が急増した背景として、新型コロナウイルス感染症の影響で外食産業が停滞した中、家庭内で消費できるそばの商品需要が増加した可能性が考えられます。

他国との比較については、そばの主要な生産国であるロシア、中国、ウクライナなどでは大規模農地の活用により大量生産が可能であり、日本と比べて生産規模が格段に大きいことが特徴です。例えば、中国では数百万トン規模でのそばの生産が可能ですが、その大半が輸出用であり、国内需要とは乖離しています。一方で、日本では面積が比較的限られる中でも、高品質のそば生産に特化し、小規模ながら地域ごとの独特な育成方法を開発している点が特徴的です。

今後の課題として、第一に農業人口の減少が挙げられます。農業労働力の高齢化が進む中、若者がそばの生産に参入する仕組みづくりが不可欠となります。第二に、気候変動の影響を考慮した品種改良や農業技術のアップデートも重要です。気温や降水量が不安定になる中で、効率的かつ安定的にそばを生産するための研究開発が求められます。第三に、生産と消費地を結ぶ輸送網やマーケティングの強化も挙げられるでしょう。海外輸出に力を注ぐという方向性も、選択肢として検討可能です。

具体的な対策として、国内におけるそば生産を支えるプラットフォームの整備が重要です。たとえば、若手農家への補助金制度や「別荘型農業」と呼ばれる都市住民による週末農業の支援が効果的です。また、近年注目されているクライマートスマート農業(気候変動に適応した農法)の導入を検討することで、生産の変動を最小化する取り組みが可能になります。国際的にも、そばを牧草や飼料の代替用作物としてターゲティングすることにより、日本の農産品の競争力を高める手段ともなります。

結論として、日本のそば生産量は一時低迷したものの、2000年代以降持ち直し、近年では安定した水準を維持しています。持続可能な農業システムの構築と国内消費の促進、さらには国際市場への積極的な進出が、日本のそば産業をさらなる発展へと導く鍵となるでしょう。