日本のオート麦生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）の最新データによると、日本のオート麦生産量は、1961年の167,900トンをピークに、2023年には315トンと大幅に減少しています。このデータは、約60年間でオート麦生産の衰退が顕著に進行していることを示しています。特に1970年代以降の急激な減少が特徴的で、その後は一部の年にわずかな回復を見せるものの、300トン台に留まっています。

日本におけるオート麦生産量の推移を長期的に見ると、大きく3つの段階に分けて分析することができます。まず1961年から1970年代にかけては、約10年間ほど減少が続きました。1961年時点の167,900トンという高い生産量は、当時の農業政策や国内需要の影響を反映しています。しかし、1970年代に入ると生産量は急速に低下し、1979年には14,000トンと60年代の10分の1以下にまで落ち込みました。

次に1980年以降になると、改良品種の導入や農業の効率化が試みられたものの、生産量の大幅回復は見られませんでした。この時期、日本経済の高度成長に伴い、より収益性の高い作物への転換が進んだことが主因と考えられます。また、輸入オート麦の増加が国内生産に影響を及ぼしたことも一因です。

さらに2000年代以降は、わずか数百トン規模の生産量にとどまる形で推移しています。このように極めて少量の国内生産の状況は、日本の食料自給率低下という広範な課題の一端を映し出していると言えます。2020年代に入っても、年間300トン台を維持するのみで、生産量が安定している一方で新たな成長の兆しはほとんど見られていません。

日本のオート麦生産が衰退した背景には、いくつかの重要な要因があります。まず、農業従事者の高齢化および農地面積の減少が挙げられます。地域の都市化によって、オート麦のような特定作物に適した農地も減少しています。また、輸入オート麦が価格競争力で圧倒的な優位性を保つため、国内生産への依存が薄れています。ドイツやカナダ、アメリカなど、オート麦の主要生産国に比べ、日本の地理的・気象的条件も大量生産に向かない点も無視できません。

一方で、オート麦の栄養価は近年注目を集めており、その需要は食品業界や健康志向の消費者を中心に少しずつ高まっています。この点を踏まえると、日本国内でのオート麦生産をどのように活用するかが今後の重要な課題と考えられます。例として、地域ブランド化や小規模・高付加価値型の生産モデルの採用が有効です。これは単に生産量を増加させるという目標を超え、消費者への直販や観光農園との連動などといった多面的な価値を追求する試みとも言えます。

さらに、食料自給率の観点からも持続可能な農業計画が求められます。国や自治体レベルで、補助金や税制優遇を活用し、オート麦栽培に特化した農家の育成を進めることができます。また、輸入オート麦に依存しすぎるリスクから脱却するためにも、多国間の農業協力を活用し、気候変動や地政学的リスクに備えた地域間連携を確立することが現実的な対策でしょう。

しかし課題も残ります。効率的かつ環境に配慮した農業技術の普及や、災害時の安定生産を確保するためのインフラ整備が求められます。オート麦生産は現在ほぼ消費の比率に見合っていない状況ですが、技術開発や農業従事者の参加を支援することで日本でも「小さいが強い産業」に転換させることは可能です。

最後に、食料安全保障の観点からは、オート麦生産を再び見直すべき時期が到来していると考えられます。日本政府や農業関係者は、国際的な比較を通じて、日本独自の強みを活かした農業戦略を模索する必要があります。今後の政策次第で国内生産が再び注目される可能性が高まるでしょう。