国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したキプロスのヨーグルト生産量データによると、同国のヨーグルト生産は1961年から2021年にかけて大きな変動を経験しています。特に2009年以降に生産量が急激に増加し、2020年には13,040トンという歴史的なピークを迎えています。一方で、経年的には安定的な成長を見せることなく、特定の年で生産量が急減する傾向も確認されており、この分野の持続可能性には課題が残っています。
キプロスのヨーグルト生産量推移(1961年~2021年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2021年 | 12,850 |
-1.46% ↓
|
2020年 | 13,040 |
9.95% ↑
|
2019年 | 11,860 |
1058.69% ↑
|
2018年 | 1,024 |
-55.67% ↓
|
2017年 | 2,309 |
27.27% ↑
|
2016年 | 1,814 |
57.15% ↑
|
2015年 | 1,155 |
40% ↑
|
2014年 | 825 |
2.18% ↑
|
2013年 | 807 |
-75.35% ↓
|
2012年 | 3,274 |
55.16% ↑
|
2011年 | 2,110 |
-3.33% ↓
|
2010年 | 2,183 |
369.47% ↑
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2009年 | 465 |
210% ↑
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2008年 | 150 |
-5.66% ↓
|
2007年 | 159 | - |
2006年 | 159 | - |
2005年 | 159 |
-0.19% ↓
|
2004年 | 159 |
-23.71% ↓
|
2003年 | 209 |
0.87% ↑
|
2002年 | 207 |
1.47% ↑
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2001年 | 204 |
20.57% ↑
|
2000年 | 169 |
20.77% ↑
|
1999年 | 140 | - |
1998年 | 140 | - |
1997年 | 140 |
-5.08% ↓
|
1996年 | 148 |
0.41% ↑
|
1995年 | 147 |
-26.76% ↓
|
1994年 | 201 |
4.29% ↑
|
1993年 | 192 |
1.18% ↑
|
1992年 | 190 | - |
1991年 | 190 |
-3.21% ↓
|
1990年 | 197 |
-6.87% ↓
|
1989年 | 211 |
-2.86% ↓
|
1988年 | 217 |
-4.61% ↓
|
1987年 | 228 |
6.9% ↑
|
1986年 | 213 |
2.9% ↑
|
1985年 | 207 |
11.11% ↑
|
1984年 | 186 |
2.31% ↑
|
1983年 | 182 |
-1.62% ↓
|
1982年 | 185 |
3.01% ↑
|
1981年 | 180 |
9.51% ↑
|
1980年 | 164 |
6.84% ↑
|
1979年 | 154 |
1.19% ↑
|
1978年 | 152 |
-2.13% ↓
|
1977年 | 155 |
85.3% ↑
|
1976年 | 84 |
43.08% ↑
|
1975年 | 59 |
-51.25% ↓
|
1974年 | 120 |
-26.06% ↓
|
1973年 | 162 |
16.09% ↑
|
1972年 | 140 |
-0.85% ↓
|
1971年 | 141 |
9.3% ↑
|
1970年 | 129 |
7.5% ↑
|
1969年 | 120 |
5.26% ↑
|
1968年 | 114 |
-9.52% ↓
|
1967年 | 126 |
16.67% ↑
|
1966年 | 108 |
-20% ↓
|
1965年 | 135 | - |
1964年 | 135 |
28.57% ↑
|
1963年 | 105 | - |
1962年 | 105 | - |
1961年 | 105 | - |
キプロスのヨーグルト生産は、1960年代から始まりましたが、その初期段階では安定せず、年間105~135トンといった低レベルで緩やかな変動を記録しました。この期間は、同国の経済基盤が未成熟であり、工業や農業のインフラが十分に整備されていなかったことが影響していると考えられます。しかし、1970年代において一時的に生産量が増加し、1973年には162トンに達しました。
1974年から1975年にかけて、ヨーグルト生産量が著しく減少(120トンから59トンへ)した背景には、同年にキプロスで発生した政治的・軍事的衝突(キプロス紛争)が深く関与しています。この地政学的リスクにより、住民の経済的混乱や農牧業の供給網の寸断が発生し、ヨーグルト生産に直接的な悪影響を及ぼしました。
その後、1980年代に入るとキプロスのヨーグルト産業は安定成長期を迎え、1985年から1987年にかけて生産量が200トンを突破しました。この時期、国内の乳製品需要が高まり、また輸出産業としての乳製品への注目が高まった結果と推測されます。ただし、1990年代には1995年を境に生産量は大きく落ち込み、147トンまで減少しました。この停滞は、乳製品産業全体への投資不足、もしくは国外からの競合製品の影響を受けた可能性があります。
21世紀に入り、キプロスのヨーグルト産業は転換期を迎えました。2009年に465トンと急増し、その後2010年には2,183トン、2012年に3,274トンと持続的な成長を目にしました。しかし、2013年から2015年にかけては急激な減少が見られ、2013年にはわずか807トンに落ち込む異常値を示しています。この波の激しさから、ヨーグルト生産が特定の外的要因、例えば天候変動や突発的な価格変動、もしくは輸入原材料の確保や輸送の問題に依存していることが示唆されます。
特筆すべきは、2019年以降の顕著な増加傾向です。2019年の11,860トンから2020年の13,040トンへの増加、さらに2021年の12,850トンという数値は、この分野が国内外の市場で需要を大きく拡大していることを示しています。これには、健康志向を背景とした消費者需要の高まりや、地元産品をブランド化し輸出力を強化する戦略が関連している可能性があります。また、新型コロナウイルスの影響で発酵食品需要が高まったことも寄与したと考えられます。
しかしながら、この急速な生産拡大には課題も伴います。一つは、生産の安定性と持続可能性をいかに確保するかという点です。過去のデータも示すように、キプロスのヨーグルト産業は外部的なショックに対して脆弱であり、灌漑施設の改善や暇用農家の支援、サプライチェーンの強化が喫緊の課題です。また、環境負荷の観点から、エコフレンドリーな製造プロセスの導入も重要です。
今後の具体的な対策として、地域間協力の枠組みを活用した乳製品の輸出マーケット拡大や、国内外のバリューチェーン強化を通じた市場競争力の向上が挙げられます。さらに、新技術を活用した生乳生産の効率化や、地元ブランドとしてのプロモーション活動を強化することも有効でしょう。地政学的リスクへの対応策としては、近隣諸国との貿易協定締結や生産インフラの多国間調整が鍵となります。
結論として、キプロスのヨーグルト生産の推移は単なる増減の数字ではなく、地政学、経済、気候変動などさまざまな要因の影響を受けています。今後、これらの課題に取り組むことで、同国は持続可能な産業成長と地域経済の発展を実現することが期待されます。