国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによれば、キプロスのエンドウ豆(生)の生産量は、1960年代から高度成長を見せたものの、1970年代の大きな変動を経て1990年代には再び減少が目立ち、その後も生産量が減少傾向にあります。ピークは1987年の2,000トンであり、2023年時点では660トンに減少しています。この長期的な減少傾向には気候変動や土地利用の変化、また経済的背景が影響していると考えられます。
キプロスのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 660 |
4.76% ↑
|
2022年 | 630 |
-8.7% ↓
|
2021年 | 690 |
-2.82% ↓
|
2020年 | 710 |
-2.74% ↓
|
2019年 | 730 |
-3.95% ↓
|
2018年 | 760 |
-4.28% ↓
|
2017年 | 794 |
0.51% ↑
|
2016年 | 790 |
-6.62% ↓
|
2015年 | 846 |
11.76% ↑
|
2014年 | 757 |
-5.96% ↓
|
2013年 | 805 | - |
2012年 | 805 |
-3.36% ↓
|
2011年 | 833 |
0.36% ↑
|
2010年 | 830 |
1.22% ↑
|
2009年 | 820 |
10.96% ↑
|
2008年 | 739 |
-4.03% ↓
|
2007年 | 770 |
0.92% ↑
|
2006年 | 763 |
-4.03% ↓
|
2005年 | 795 |
0.89% ↑
|
2004年 | 788 |
-7.29% ↓
|
2003年 | 850 |
-5.56% ↓
|
2002年 | 900 | - |
2001年 | 900 | - |
2000年 | 900 |
28.57% ↑
|
1999年 | 700 |
-36.36% ↓
|
1998年 | 1,100 |
-8.33% ↓
|
1997年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1996年 | 1,100 | - |
1995年 | 1,100 |
22.22% ↑
|
1994年 | 900 |
-25% ↓
|
1993年 | 1,200 |
29.03% ↑
|
1992年 | 930 |
-22.5% ↓
|
1991年 | 1,200 |
-27.27% ↓
|
1990年 | 1,650 |
3.13% ↑
|
1989年 | 1,600 |
-11.11% ↓
|
1988年 | 1,800 |
-10% ↓
|
1987年 | 2,000 |
5.26% ↑
|
1986年 | 1,900 |
78.4% ↑
|
1985年 | 1,065 |
12.11% ↑
|
1984年 | 950 | - |
1983年 | 950 |
-6.5% ↓
|
1982年 | 1,016 |
17.59% ↑
|
1981年 | 864 |
-10.47% ↓
|
1980年 | 965 |
-26.95% ↓
|
1979年 | 1,321 | - |
1978年 | 1,321 |
52.89% ↑
|
1977年 | 864 |
21.52% ↑
|
1976年 | 711 |
16.56% ↑
|
1975年 | 610 |
-57.1% ↓
|
1974年 | 1,422 |
39.96% ↑
|
1973年 | 1,016 |
-16.65% ↓
|
1972年 | 1,219 |
-7.72% ↓
|
1971年 | 1,321 |
8.37% ↑
|
1970年 | 1,219 |
21.9% ↑
|
1969年 | 1,000 |
-1.57% ↓
|
1968年 | 1,016 |
24.97% ↑
|
1967年 | 813 |
16.14% ↑
|
1966年 | 700 | - |
1965年 | 700 | - |
1964年 | 700 | - |
1963年 | 700 | - |
1962年 | 700 | - |
1961年 | 700 | - |
キプロスのエンドウ豆(生)の生産量データを分析すると、1961年から2023年の間にいくつかの重要な動きが読み取れます。1961年から1966年までは年間700トンで安定していましたが、1967年以降、徐々に生産量が増加し、1987年には2,000トンという最大値を記録しました。その後、1988年以降に再び長期的な減少傾向が始まり、2023年時点での生産量は660トンと、近60年で最低水準近くまで減少しています。
この生産量の変動には、地政学的な影響が少なからず関係していると考えられます。1974年の生産量が突然1,422トンに急増した後、1975年には急激に610トンに落ち込んでいる背景には、1974年のキプロス紛争が関与している可能性があります。この紛争は農業経済や産業に大きな影響を及ぼし、土地の利用可能性や農業の優先度を変えました。また、1980年代に突入すると、生産規模の最大化が図られた結果として、一時的に記録的な生産量に到達したといえます。しかし1990年代の後半からは、気候変動や砂漠化の影響、そして世界的な農産品市場での競争が要因となり、生産量が減少に転じたと推察されます。
さらに注目すべき点として、近年ではエンドウ豆の生産量が700トンを下回る水準まで縮小していることです。2020年の710トン、2021年の690トン、2022年の630トンと、直近3年間は一貫して減少を続け、2023年には660トンへ若干の回復を見せましたが、大幅な改善とは言えません。この背景には、気候変動による降水量の減少や高温化が影響を与えていると考えられます。キプロスのような地中海性気候の地域では、気候変動の影響を受けやすく、農業生産の安定確保が重要な課題となっています。また、エンドウ豆をはじめとする農産物の市場価格の変動や高齢化による農業従事者の減少も、生産性の低下に寄与している可能性があります。
キプロスのエンドウ豆生産量を増加させるためには、いくつかの対策が考えられます。具体的には、灌漑システムの改善を進め、効率的な水資源利用を図ることが挙げられます。また、土壌の劣化が問題であれば、対策として持続可能な農業技術を普及させ、農地の肥沃度を保持する必要があります。さらに、気候変動に適応した高耐性のエンドウ豆品種の導入も検討すべき重要課題です。加えて、国内外の市場における競争力を高めるため、農産物のブランド力を向上させるマーケティング戦略や補助金政策も有効であるでしょう。
地域的な問題と同時に、キプロスがEU(欧州連合)の一員である点も重視されるべきです。EU内の農業政策や資金援助を利用しエンドウ豆の生産回復を目指すことが可能です。また、隣国や地域との協力体制を強化することによって、知識・技術の共有を進めることも効果的と考えられます。
最後に、地中海性気候地域での気候変動や農業生産の低迷は、フードセキュリティの問題とも結びついています。他地域の作物生産量や輸入駆動型のマーケットも視野に入れながら、キプロスが長期的に安定した農業生産体制を構築することが必要です。政府による適切な政策、地域協力、技術革新が各方面で進むならば、エンドウ豆に限らず、その他の主要作物の生産にも良い波及効果を期待できるでしょう。