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キプロスの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、キプロスの羊肉生産量は1960年代から長期的な変動を示しており、大幅な増減の波を経て、2023年には2,640トンとなりました。1961年には2,845トンの水準でしたが、1973年には6,360トンと急増し、その後、減少を繰り返していることが特徴です。地政学的な要因や自然環境の影響、需要の変化が生産に大きく関与している可能性が高いです。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,640
-10.51% ↓
2022年 2,950
12.6% ↑
2021年 2,620
3.97% ↑
2020年 2,520
-18.71% ↓
2019年 3,100
-6.34% ↓
2018年 3,310
5.37% ↑
2017年 3,141
3.42% ↑
2016年 3,038
-10.35% ↓
2015年 3,388
8.38% ↑
2014年 3,126
3.65% ↑
2013年 3,016
-1.11% ↓
2012年 3,050
18.54% ↑
2011年 2,573
1.86% ↑
2010年 2,526
-8.05% ↓
2009年 2,747
-17.68% ↓
2008年 3,337
7.85% ↑
2007年 3,094
3.51% ↑
2006年 2,989
12.07% ↑
2005年 2,667
0.53% ↑
2004年 2,653
-15.21% ↓
2003年 3,129
-34.95% ↓
2002年 4,810
13.44% ↑
2001年 4,240
0.47% ↑
2000年 4,220
-5.17% ↓
1999年 4,450
-3.05% ↓
1998年 4,590
19.84% ↑
1997年 3,830
4.36% ↑
1996年 3,670
-2.65% ↓
1995年 3,770
3.86% ↑
1994年 3,630
2.54% ↑
1993年 3,540
5.99% ↑
1992年 3,340
-4.02% ↓
1991年 3,480
-10.77% ↓
1990年 3,900
-8.24% ↓
1989年 4,250
-12.37% ↓
1988年 4,850
-4.15% ↓
1987年 5,060
16.32% ↑
1986年 4,350
3.57% ↑
1985年 4,200
16.02% ↑
1984年 3,620
8.71% ↑
1983年 3,330
1.28% ↑
1982年 3,288
3.92% ↑
1981年 3,164
0.86% ↑
1980年 3,137
-0.73% ↓
1979年 3,160
-4.45% ↓
1978年 3,307
32.07% ↑
1977年 2,504
12.04% ↑
1976年 2,235
9.99% ↑
1975年 2,032
-52.94% ↓
1974年 4,318
-32.11% ↓
1973年 6,360
24.19% ↑
1972年 5,121
4.47% ↑
1971年 4,902
12.74% ↑
1970年 4,348
14.12% ↑
1969年 3,810
7.14% ↑
1968年 3,556
6.05% ↑
1967年 3,353
3.11% ↑
1966年 3,252
6.69% ↑
1965年 3,048 -
1964年 3,048
3.46% ↑
1963年 2,946
7.4% ↑
1962年 2,743
-3.59% ↓
1961年 2,845 -

キプロスの羊肉生産量は、FAOのデータに基づくと、この数十年間にわたって長期的な変動を示しており、社会的および経済的背景と深く結びついてきました。1961年から1973年にかけて、生産量は着実に増加し、1973年には最大6,360トンに達しました。この急増は、当時の農業政策や人口増加、さらには地域市場の需要増加が影響したと考えられます。

しかし、1974年を境に生産量は急激に減少し、その後1975年には2,032トンと過去最低を記録しました。この減少の主な原因としては、1974年のトルコによるキプロス侵攻が挙げられます。この紛争により農業基本インフラが破壊され、多くの農地が利用不可能となったことが羊の飼育に大きな影響を及ぼしたと推察されます。その後、生産は一時的に回復したものの、1980年代から2000年代にかけては数千トン規模で安定して推移していました。

しかし、2000年代後半から減少傾向が再び顕著になっています。この背景には、地球温暖化による降水量の減少が影響している可能性があります。キプロスは地中海性気候に属し、水資源の不足が農業生産に大きな影響を与えます。特に、牧草地の減少や餌の供給問題が羊肉生産量の低下に直結すると考えられます。さらに、2008年の世界金融危機以降の経済不況も、小規模農家の生産活動を制約する要因となったとみられます。

最近では、2020年から2023年にかけてさらに羊肉の生産量が低迷しています。特に2020年には2,520トンと直近最低水準を記録しました。この時期は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる経済的打撃が重なり、流通網の混乱や労働力不足が農業全体に負の影響を与えたと考えられます。2022年に一時的な増加が見られた後も、2023年の数値(2,640トン)は依然として低水準にとどまっており、長期的な回復には課題が残ります。

このデータから、キプロスの羊肉生産量が地政学的リスクや気候変動、経済危機など多種多様な要因によって大きく揺れ動いてきたことが明らかです。これからの課題としては、まず持続可能な農業の基盤強化が挙げられます。特に、水資源管理の効率化や耐乾燥性飼料の開発を進めることが重要です。また、気候変動に対応するため、地域間の農業協力の枠組みを構築し、灌漑技術の普及や技術移転を促進することが求められるでしょう。

さらに、地政学的リスクに備えるための長期的な経済政策も必要です。過去のデータが示すように、紛争や外的要因が農業に与える影響は甚大です。そのため、安定した農業支援政策と市場の多角化を目指す必要があります。例えば、輸出先を広げるといった取り組みが、羊肉生産の経済的基盤を強化する手段となるでしょう。

結論として、キプロスの羊肉生産量推移は、外部環境に対する地域の脆弱性を示す指標とも言えます。気候・経済・地政学的課題に対応するための多方面からの取り組みが、この重要な農業分野の再生には欠かせません。国や国際機関が連携し、資源管理や政策策定の支援を進めることが今後の安定成長に寄与するでしょう。