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キプロスのオレンジ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、キプロスのオレンジ生産量は1960年代から1970年代前半にかけて急増し、1973年の19万3040トンをピークとして最大生産量を記録しました。しかし、1974年以降、生産量は急落し、その後は全体的な下落傾向が続いています。2022年には1万6000トンまで減少し、過去最低値を記録しました。これにより、生産量の減少とその背景が注目されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 15,620
-2.38% ↓
2022年 16,000
-1.78% ↓
2021年 16,290
-10.93% ↓
2020年 18,290
-7.02% ↓
2019年 19,670
10.26% ↑
2018年 17,840
-11.56% ↓
2017年 20,173
-23.73% ↓
2016年 26,449
-19.35% ↓
2015年 32,796
-1.38% ↓
2014年 33,254
-4.01% ↓
2013年 34,644
-0.34% ↓
2012年 34,763
-13.55% ↓
2011年 40,214
19.75% ↑
2010年 33,583
-2.49% ↓
2009年 34,441
-9% ↓
2008年 37,847
-10.13% ↓
2007年 42,113
-10% ↓
2006年 46,792
-3.04% ↓
2005年 48,259
3.07% ↑
2004年 46,822
9.65% ↑
2003年 42,702
-6.15% ↓
2002年 45,500
24.66% ↑
2001年 36,500
-14.52% ↓
2000年 42,700
-19.13% ↓
1999年 52,800
18.65% ↑
1998年 44,500
-11.88% ↓
1997年 50,500
-3.81% ↓
1996年 52,500
-4.55% ↓
1995年 55,000
19.57% ↑
1994年 46,000
-20% ↓
1993年 57,500
-4.17% ↓
1992年 60,000
9.09% ↑
1991年 55,000
-12.7% ↓
1990年 63,000
26% ↑
1989年 50,000
25% ↑
1988年 40,000
-21.57% ↓
1987年 51,000
27.5% ↑
1986年 40,000
-12.09% ↓
1985年 45,500
-10.78% ↓
1984年 51,000
22.89% ↑
1983年 41,500
-3.89% ↓
1982年 43,180
6.25% ↑
1981年 40,640
28.97% ↑
1980年 31,512
-12.63% ↓
1979年 36,068
-2.2% ↓
1978年 36,881
-8.1% ↓
1977年 40,132
11.27% ↑
1976年 36,068
10.94% ↑
1975年 32,512
-79.35% ↓
1974年 157,480
-18.42% ↓
1973年 193,040
31.49% ↑
1972年 146,812
-11.35% ↓
1971年 165,608
68.04% ↑
1970年 98,552
-7.62% ↓
1969年 106,680
5% ↑
1968年 101,600
17.05% ↑
1967年 86,800
28.59% ↑
1966年 67,500
10.84% ↑
1965年 60,900
5.18% ↑
1964年 57,900
-12.27% ↓
1963年 66,000
46.02% ↑
1962年 45,200
-21.93% ↓
1961年 57,900 -

1960年代から1970年代初期にかけてのキプロスのオレンジ生産は、緩やかな増加から急激な拡大へと移行しました。この時期、キプロスでは水資源の利用や農業技術の向上を通じて作物生産が著しく成長しつつあり、オレンジも主要な輸出品として国際市場での需要を伸ばしていました。特に1971年から1973年にかけては、気候条件の良さや経済的投資に支えられて、史上最高水準の生産を維持しました。

しかし、1974年を境に劇的な変化が生じています。この時期、キプロスは地政学的な緊張と紛争を経験し、その影響で農業生産体制が大きな障害を受けました。北キプロスと南キプロスとの分断により、農地の管理や灌漑(かんがい)インフラの損失、人材の移動が制限され、多くの農業従事者が生産を継続できない状況に追い込まれました。この紛争の影響で1975年には生産量が3万2512トンと急激に減少し、それ以降も1970年代後半は低水準にとどまっています。

1980年代以降、キプロス農業は一定の再建と回復に向けた取り組みを進めましたが、全体的には以前の生産水準に戻すことが困難な状況が続いています。これは、以下の複数の要因が絡んでいると考えられます。第一に、オレンジ栽培には継続的かつ適切な水管理が必要ですが、キプロスは地中海性気候による降水量の少なさと、それに伴う慢性的な水不足に直面しています。さらに、近年の気候変動により、特に2016年以降の生産量が急激に減少しました。この減少は、高温乾燥の影響や局地的な干ばつによって植物の生育条件が悪化したことに起因しています。

また、オレンジの市場価値に関する経済的要因も影響しています。他国との競争激化や生産コストの上昇により、農業従事者がオレンジ生産を他の作物へと切り替える傾向が見られるようになり、これは総生産量の減少にもつながっています。例えば、モロッコやエジプトなどの周辺国は、豊富な水源と大規模農業を活用して効率的にオレンジを生産し、国際市場での競争優位に立っています。これらの国々の大量生産がキプロスのオレンジ輸出市場にも負担をもたらしている状況です。

このような状況を打破するための具体策としては、まず第一に灌漑インフラの整備と水資源の管理を強化することが挙げられます。これには、脱塩技術を活用して海水を灌漑用水に転換する技術や、降雨水の効率的な活用法の導入が含まれます。また、キプロスの固有種や気候変動に強い品種の栽培を奨励し、農業の回復力を高めることも重要です。

さらに、国際協力を通じた技術の共有や市場拡大の取り組みも必要です。例えば、EU(欧州連合)や周辺諸国との連携を深め、輸出市場へのアクセスを強化する支援策を講じることが挙げられます。また、農業政策には従事者への補助金や教育支援を取り入れ、若い世代の農業参入を促進していく必要があるでしょう。

キプロスにとってオレンジ生産は、単なる農業分野にとどまらず、国のアイデンティティや文化、外貨獲得に大きく寄与してきた重要な産業です。このため、包括的な対策を講じることで、持続可能な農業の実現と国際競争力の保持を目指すべきです。