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キプロスのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、キプロスのナシ生産量は1961年の355トンから徐々に増加し、1977年の2,235トンでピークを迎えました。それ以降、生産量は増減を繰り返しながら減少傾向にあります。特に2018年以降、生産量が極端に減少しており、2023年には460トンという低水準にとどまっています。この長期的な変動には気候条件、経済的要因、農業技術などさまざまな要素が関係していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 460
-13.21% ↓
2022年 530
-8.62% ↓
2021年 580
11.54% ↑
2020年 520
73.33% ↑
2019年 300
-23.08% ↓
2018年 390
-34.78% ↓
2017年 598
0.67% ↑
2016年 594
-12.9% ↓
2015年 682
-10.73% ↓
2014年 764
-28.66% ↓
2013年 1,071
-5.31% ↓
2012年 1,131
-1.65% ↓
2011年 1,150
-10.02% ↓
2010年 1,278
-1.69% ↓
2009年 1,300
5.69% ↑
2008年 1,230
8.08% ↑
2007年 1,138
3.45% ↑
2006年 1,100
-0.81% ↓
2005年 1,109
33.13% ↑
2004年 833
34.35% ↑
2003年 620
-43.64% ↓
2002年 1,100
4.76% ↑
2001年 1,050
-12.5% ↓
2000年 1,200
9.09% ↑
1999年 1,100
22.22% ↑
1998年 900
-5.26% ↓
1997年 950
-26.92% ↓
1996年 1,300
30% ↑
1995年 1,000
-16.67% ↓
1994年 1,200
-20% ↓
1993年 1,500
7.14% ↑
1992年 1,400
16.67% ↑
1991年 1,200
9.09% ↑
1990年 1,100
-8.33% ↓
1989年 1,200
-20% ↓
1988年 1,500
87.5% ↑
1987年 800
-42.86% ↓
1986年 1,400
-6.67% ↓
1985年 1,500
-9.09% ↓
1984年 1,650
-17.5% ↓
1983年 2,000
-6.28% ↓
1982年 2,134
20.02% ↑
1981年 1,778
16.67% ↑
1980年 1,524
-16.68% ↓
1979年 1,829
44.02% ↑
1978年 1,270
-43.18% ↓
1977年 2,235
75.98% ↑
1976年 1,270
-26.46% ↓
1975年 1,727
78.96% ↑
1974年 965
11.82% ↑
1973年 863
-15.06% ↓
1972年 1,016
53.94% ↑
1971年 660
8.37% ↑
1970年 609
71.55% ↑
1969年 355
-50.07% ↓
1968年 711
16.75% ↑
1967年 609
50% ↑
1966年 406
24.92% ↑
1965年 325
-36.02% ↓
1964年 508
-11.19% ↓
1963年 572
12.6% ↑
1962年 508
43.1% ↑
1961年 355 -

キプロスにおけるナシ生産の推移を見ると、1960年代から1970年代にかけては比較的安定した増加傾向が見られました。特に1977年、キプロスのナシ生産量は2,235トンに達し、これが記録上の頂点であることがわかります。この時期、農業技術の発展や降雨量の好条件が生産量に貢献したと想定されます。しかし、1980年代以降、生産量の変動が目立つようになり、明確な減少傾向が始まりました。

1990年代から2000年代にかけてナシ生産量は約1,000トンから1,500トン程度で推移していましたが、この期間には国内外市場での需要変化や、都市化による農地の減少といった経済的要因が影響していた可能性があります。また、2003年に620トンへ急激に減少した背景には、地中海地域で特に深刻だった干ばつや局所的な極端気象が関与したと考えられます。

近年では、特に2010年代半ば以降、生産量が著しく減少しており、2018年以降はさらに大幅に縮小しています。この減少傾向には、気候変動の影響による環境条件の劣化が大きく関連していると推測されます。地中海地域は世界的にも気温上昇の影響を大きく受ける地域であり、水不足や農業用水の資源競争がナシの生産に直接的な作用を及ぼしていると考えられます。同時に、若い世代の農業離れや農村人口の減少も典型的な問題です。これにより、果樹の手入れ不足や土地の有効活用が進まず、収量の維持が困難になっていると言えます。

このような現状から、将来的な課題として、気候変動への適応策の強化が重要視されます。たとえば、耐乾性の高い品種の開発・導入や、灌漑技術の改良、農業を支える制度的な支援が効果的と考えられます。また、農業後継者不足を解決するためには、教育や補助金制度を通じた若者の農業参入促進が欠かせません。他国の成功事例を参考にすると、日本ではICT技術を活用した「スマート農業」の導入により農業の魅力を向上させています。これをキプロスでも取り入れることで、ナシ生産の改善につなげられる可能性があります。同時にEUが加盟国に提供する農業支援政策を最大限に活用し、地域間での協力を促進する枠組みを築くことも有効です。

さらに地政学的な観点では、キプロスの分断問題や周辺地域の不安定さが農業生産にも影響を及ぼしている可能性があります。特に持続可能な水資源の確保は、将来的に国内外で紛争の要因となる懸念もあるため、国際的な協力を通じた包括的な対策が必要です。

総じて、現在の低迷傾向は、単なる気象条件による影響だけでなく、社会経済的要因や政策面の未整備にも起因しています。今後、国や国際機関は、技術革新の推進、持続可能な資源管理、そして農村部振興といった具体的な戦略を展開することが求められます。それらの対策が成功すれば、キプロスのナシ生産は再び安定化し、地域経済にもプラスの影響をもたらせるはずです。