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カタールの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、カタールの羊肉生産量は1961年の1,485トンから2023年の989トンまで、時期ごとに大きな変動を見せています。特に1980年代や2010年代には一時的な急増が見られますが、直近の2023年では大幅に減少し、過去最低水準に達しています。カタールにおける羊肉生産は、国内需要、気候変動、地政学的要因の影響を大きく受けながら推移していることが示唆されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 989
-82.3% ↓
2022年 5,586
-41.07% ↓
2021年 9,479
-18.18% ↓
2020年 11,586
-10.06% ↓
2019年 12,881
-8.96% ↓
2018年 14,149
22.82% ↑
2017年 11,521
28% ↑
2016年 9,001
-25.23% ↓
2015年 12,037
-1.8% ↓
2014年 12,258
36.2% ↑
2013年 9,000
1.69% ↑
2012年 8,850
1.72% ↑
2011年 8,700
1.75% ↑
2010年 8,550
-9.52% ↓
2009年 9,450
5% ↑
2008年 9,000
16.5% ↑
2007年 7,725
-4.63% ↓
2006年 8,100 -
2005年 8,100
44% ↑
2004年 5,625
-21.88% ↓
2003年 7,200
-14.29% ↓
2002年 8,400
4.95% ↑
2001年 8,004
37.42% ↑
2000年 5,825
12.88% ↑
1999年 5,160
-26.34% ↓
1998年 7,005
-25.87% ↓
1997年 9,450
57.5% ↑
1996年 6,000
-37.5% ↓
1995年 9,600
-4.48% ↓
1994年 10,050
-0.74% ↓
1993年 10,125
0.75% ↑
1992年 10,050
-21.18% ↓
1991年 12,750
21.43% ↑
1990年 10,500
55.56% ↑
1989年 6,750
-45.78% ↓
1988年 12,450
22.06% ↑
1987年 10,200
-43.33% ↓
1986年 18,000
166.67% ↑
1985年 6,750
-27.42% ↓
1984年 9,300
-22.5% ↓
1983年 12,000
86.05% ↑
1982年 6,450
2.38% ↑
1981年 6,300
5% ↑
1980年 6,000
14.29% ↑
1979年 5,250 -
1978年 5,250
26.35% ↑
1977年 4,155
61.05% ↑
1976年 2,580
-25.22% ↓
1975年 3,450
43.75% ↑
1974年 2,400
6.67% ↑
1973年 2,250
25% ↑
1972年 1,800
-57.14% ↓
1971年 4,200
107.41% ↑
1970年 2,025
3.85% ↑
1969年 1,950 -
1968年 1,950
8.33% ↑
1967年 1,800
4.35% ↑
1966年 1,725
4.55% ↑
1965年 1,650
1.85% ↑
1964年 1,620
2.56% ↑
1963年 1,580
3.24% ↑
1962年 1,530
3.03% ↑
1961年 1,485 -

カタールは、中東地域の中でも特に厳しい気候条件を抱える国であり、農業や畜産業の展開には多くの制約があります。羊肉の生産は、その国の農業生産性や食料自給率を測る重要な指標の一つであり、国内需要とのバランスをいかに保つかが政策的な課題となっています。FAOのデータを基にすると、1961年から2023年にかけて、羊肉の生産量は全体として不安定な推移をしており、これには複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられます。

まず、1961年から1970年代半ばまでは緩やかな増加傾向が見られますが、1971年に突如として4,200トンと急増しています。この背景には、当時の経済成長やそれに伴う人口増加、さらには政府の食料政策の影響が考えられます。その後、一時的な減少と再びの増加を繰り返しますが、一貫して安定的な増加曲線にはなっていません。特に1983年には12,000トン、1986年には18,000トンといったピークを記録したものの、その後急減していることから、羊肉生産における国内の持続可能なシステムが十分に確立されていない可能性が高いです。

2000年代以降は年間生産量が概ね5,000~9,000トンの範囲に収まる傾向が続いていましたが、2010年代の後半には再び増加傾向に転じます。この期間には経済の好調や人口増加、さらには2022年のFIFAワールドカップの影響が見られると考えられます。同大会に向けたインフラ整備や輸入依存度低減の政策により、一時的に畜産業が振興された可能性があります。しかし、2020年代に入ってからの急激な減少、特に2023年の989トンという数値は驚異的な低水準であり、分析に値します。

この減少の背景には、複合的な理由が考えられます。一つは、カタールが直面している気候変動による環境的な制約です。高温と限られた水資源は、草食動物である羊の飼育に最適な環境ではありません。また、2023年の大幅減少には、地域的な地政学的リスクや国際的な貿易問題が絡んでいる可能性があります。中東地域の緊張や輸送コストの上昇、さらには新型コロナウイルス感染症による畜産業への影響が、羊肉生産の低迷を引き起こしている可能性があります。

こうした状況を踏まえ、カタールが将来に向けて取るべき具体的な対策として、まず第一に持続可能な畜産業の促進が必要です。それには、砂漠環境でも育成が可能な羊種の選択や、人工環境を利用した飼育技術の導入が含まれます。第二に、輸入食材への過度な依存を回避するために、地域間協力を強化し、湾岸諸国と連携した食料政策を構築することが挙げられます。さらに、気候変動の影響を軽減するための環境政策や持続可能な資源利用が求められます。これらの対策を通じて、食料安全保障を高めつつ、カタール経済の安定を図ることが重要です。

結論として、カタールの羊肉生産量推移から見られる不規則な動向や現在の深刻な減少は、食料自給率の課題を象徴的に示しています。今後、この課題に対処するためには、国内外のパートナーシップを活用し、持続可能な解決策を提案・実行する必要があります。これはカタールのみならず、類似の条件にある他国にとっても重要な示唆を与えると言えるでしょう。