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カタールのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新データによると、カタールのニンジンおよびカブ類生産量は1977年の400トンから1992年に1,099トンへと大幅に増加しましたが、その後減少傾向に転じました。2010年代以降は年間100トン未満の水準で推移する年も多く、2021年には過去最低の42トンまで落ち込みました。ところが、2023年には285トンに回復する動きを見せています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 285
803.04% ↑
2022年 32
-24.86% ↓
2021年 42
-61.47% ↓
2020年 109
76.38% ↑
2019年 62
-36.29% ↓
2018年 97
-4.9% ↓
2017年 102
21.57% ↑
2016年 84
-28.9% ↓
2015年 118
19.19% ↑
2014年 99
17.86% ↑
2013年 84 -
2012年 84 -
2011年 84
-25.66% ↓
2010年 113
0.89% ↑
2009年 112
-75.11% ↓
2008年 450
-46.49% ↓
2007年 841
47.8% ↑
2006年 569
1.61% ↑
2005年 560
134.31% ↑
2004年 239
83.85% ↑
2003年 130
-41.7% ↓
2002年 223
-3.46% ↓
2001年 231
-58.53% ↓
2000年 557
5.49% ↑
1999年 528
-15.11% ↓
1998年 622
-32.32% ↓
1997年 919
25.2% ↑
1996年 734
-11.67% ↓
1995年 831
7.78% ↑
1994年 771
0.26% ↑
1993年 769
-30.03% ↓
1992年 1,099
17.29% ↑
1991年 937
26.11% ↑
1990年 743
-7.13% ↓
1989年 800
25.98% ↑
1988年 635
25% ↑
1987年 508
-20.5% ↓
1986年 639
12.11% ↑
1985年 570
70.66% ↑
1984年 334
21.45% ↑
1983年 275
-14.86% ↓
1982年 323
-23.82% ↓
1981年 424
-36.81% ↓
1980年 671
26.84% ↑
1979年 529
5.8% ↑
1978年 500
25% ↑
1977年 400 -

カタールのニンジンとカブ類の生産量推移は、同国農業の変遷や環境的要因、政策変化をよく表しており、いくつかの注目すべきトレンドが見て取れます。1977年から1992年の期間にかけては、比較的安定的な増加傾向が確認され、特に1989年から1992年にかけて急速な成長が見られました。この時期には、水資源技術の向上や農地の拡大が一因と考えられます。カタールは砂漠気候の厳しい条件に直面しているため、従来は主に輸入に依存してきましたが、一時期は国内での生産拡大を目指した努力があったと言えます。

しかし、1990年代半ば以降から徐々に生産量は下落に転じ、特に2001年以降の減少は顕著でした。2000年代前半には、年間200トンを下回る低水準が続き、他年度に比べ大幅な落ち込みが確認されます。これは、水資源の制約、土壌の塩害、さらには地域的な気候変動の影響が生産に重くのしかかったと考えられます。また、エネルギー産業への資源集中が進む中で、農業セクターの相対的な重要性が低下したことも背景にあると見られます。

2010年代に入ると、実質的な商業農業の規模縮小が顕著になり、年間生産量が100トン未満にとどまる年が続きました。この減少傾向は、急速に進む都市化や人口増加による水資源の需要増加、農地の転用が原因と思われます。同時に、カタールの農業政策は効率性を重視し、輸入食品への依存を一層強化する方針を取る中で、自給体制における野菜果物の優先順位が低くなったのではないかと考えられます。

しかし、2023年には285トンという数値に回復の兆しが見えました。この上昇は、近年の食料安全保障への意識高揚や、特に新型コロナウイルスのパンデミックの教訓を踏まえた生産能力強化の取り組みが功を奏した可能性があります。カタールは、持続的農業と最新技術の導入を推進し、特に水耕栽培や淡水化技術を活用して生産効率を上げる方針を強化し始めています。

現在の課題としては、継続的な気候変動リスクの高まりと、それに伴う水資源の枯渇が挙げられます。また、農業従事者の確保も懸念材料です。国際的に見ても、モノカルチャー依存型生産ではなく多様な農作物による持続可能な投資モデルが主流となっており、カタールでも似たような変革が求められます。

今後の具体的な対策としては、水資源のさらなる効率的利用と再生可能エネルギーを活用した農業基盤整備を進めるべきです。また、地域協力枠組みを活用し、近隣諸国との技術や労働力の共有を模索することで、安定的な生産体制を構築できます。教育やトレーニングを通じて次世代の農業人材を育成することも重要です。さらに、都市部の緑化計画と結びつけた新しい農業事業モデルを導入することで、都市農業の促進を図るのも有効と言えます。

以上より、過去のデータは一時的な回復の兆しを示すものの、全体的な生産基盤の持続性は依然として課題が多く、将来的な食料安全保障のために長期的視野に立った農業改革が不可欠だと言えるでしょう。