Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、カタールにおける馬の飼養数は近年大幅に増加しており、2022年には13,368頭に達しました。特に1970年代初頭の比較的安定していた段階(300頭)と比較して、大幅な増加が見られます。データからは、1980年代に供給が変動した時期を経由し、近年では途切れることのない上昇傾向が続いていることが明らかです。特に2020年からの3年間で約22%の急増が記録されており、カタールの激しい経済発展や馬術文化の需要が影響している可能性が指摘されます。
カタールの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 13,368 |
2021年 | 11,968 |
2020年 | 10,936 |
2019年 | 9,731 |
2018年 | 8,325 |
2017年 | 7,333 |
2016年 | 8,697 |
2015年 | 8,349 |
2014年 | 2,006 |
2013年 | 5,287 |
2012年 | 3,674 |
2011年 | 5,800 |
2010年 | 6,000 |
2009年 | 6,103 |
2008年 | 4,800 |
2007年 | 4,800 |
2006年 | 4,759 |
2005年 | 2,000 |
2004年 | 1,935 |
2003年 | 1,897 |
2002年 | 1,860 |
2001年 | 1,415 |
2000年 | 2,600 |
1999年 | 3,680 |
1998年 | 3,650 |
1997年 | 3,608 |
1996年 | 1,451 |
1995年 | 1,436 |
1994年 | 1,436 |
1993年 | 1,273 |
1992年 | 1,150 |
1991年 | 1,150 |
1990年 | 1,102 |
1989年 | 1,072 |
1988年 | 1,041 |
1987年 | 1,031 |
1986年 | 735 |
1985年 | 700 |
1984年 | 850 |
1983年 | 1,000 |
1982年 | 1,197 |
1981年 | 2,510 |
1980年 | 2,500 |
1979年 | 1,500 |
1978年 | 1,200 |
1977年 | 1,200 |
1976年 | 1,000 |
1975年 | 300 |
1974年 | 300 |
1973年 | 300 |
カタールにおける馬の飼養数の推移をみると、いくつかの特徴的な段階が浮き彫りになります。1970年代前半は飼養数が年間300頭で安定していましたが、その後1976年から1980年にかけて大幅な増加が起こり、一時的に2,500頭にまで達しました。しかし、1982年から1985年にかけて供給が減少し、850頭にまで減少しました。この期間の減少は、地域的な経済変動や資源配分の変化が影響している可能性があります。その後、1990年代から2000年代にかけて再び増加に転じ、特に2006年から2010年にかけて4,759頭から6,103頭への大幅な増加が見られました。
このような変動は、カタールが持つ特殊な地政学的背景とも関連しています。中東地域では、伝統的に馬術が文化に深く根付いています。近年では、特に経済発展に伴うスポーツ競技、観光資源の動向が馬の需要増加を引き起こしていると考えられます。国際的なイベントや大会もまた、カタールにおける馬飼養数の増加を支える主要要因となっています。カタールはFIFAワールドカップ2022の開催国であり、国際的な注目が集まる中で、動物関連の施設やアメニティが整備される過程で、馬関連のインフラも強化されたと考えられます。
2020年以降の大幅な増加――具体的には2020年の10,936頭から2022年の13,368頭へという急速な伸び――は、カタールが国際的な馬術競技、娯楽、および観光産業における馬の役割を見直したことに関連している可能性があります。また、新型コロナウイルスの影響により国際需要と供給が制約を受けた一方で、カタール国内における自給バランスが整えられた結果であるとも推察されます。
このデータからは、カタールにおいて馬の飼養が今後さらに拡大する可能性が高いことが示唆されます。しかしながら、この拡大を持続可能なものとするためにはいくつかの課題が存在します。まず一つ目は、限られた水資源と飼料供給をどのように管理するかです。カタールは砂漠気候であるため、家畜飼養は自然環境の制約を受けることが多く、輸入に依存している現状では外部からの供給障害のリスクを考慮しなければなりません。また、持続可能な馬の健康管理システムの整備も重要です。馬の疾病予防や検疫体制の強化が、現在および将来の国際的需要を満たす上で不可欠です。
課題への具体的なアプローチとしては、馬用飼料の持続可能な生産方法を導入することや、国際市場と強調した契約農家の設立が挙げられます。また、技術革新による水分循環型農業や、デジタル化を通じた健康管理技術の導入を進めることが奨励されます。国際連携もまた、例えば周辺国との共同研究および資源共有の取り決めなど、持続可能性に向けた一歩となるでしょう。
結論として、カタールにおける馬飼養数の急激な増加は、国家レベルの文化的・経済的シフトを反映しており、これが中東・北アフリカ地域全体の馬術産業にも影響を与える可能性があります。しかし同時に、環境や資源の制約を考え、持続可能性に配慮した発展が急務です。今後、国際機関や周辺国との協力を進めることで、馬術関連の発展がさらに大きな成果を上げられることが期待されます。