国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、カタールの鶏飼養数は1961年には22羽からスタートし、その後急速に増加してきました。近年では、2018年以降に大幅な増加が見られ、2020年以降30万羽で横ばいの状態を維持しています。この急激な変化は、人口増加や食料安全保障への対応策としての鶏肉・卵需要の増加を反映したものであり、中東地域における鶏飼養の動向として注目に値します。
カタールの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 30,000.00 |
2021年 | 30,000.00 |
2020年 | 30,000.00 |
2019年 | 25,000.00 |
2018年 | 25,000.00 |
2017年 | 15,000.00 |
2016年 | 15,000.00 |
2015年 | 9,630.00 |
2014年 | 8,120.00 |
2013年 | 8,600.00 |
2012年 | 8,500.00 |
2011年 | 8,000.00 |
2010年 | 7,300.00 |
2009年 | 6,800.00 |
2008年 | 6,000.00 |
2007年 | 5,200.00 |
2006年 | 4,800.00 |
2005年 | 4,650.00 |
2004年 | 4,500.00 |
2003年 | 4,335.00 |
2002年 | 4,487.00 |
2001年 | 3,963.00 |
2000年 | 4,209.00 |
1999年 | 3,454.00 |
1998年 | 3,149.00 |
1997年 | 3,564.00 |
1996年 | 3,887.00 |
1995年 | 3,636.00 |
1994年 | 3,480.00 |
1993年 | 3,087.00 |
1992年 | 3,517.00 |
1991年 | 3,344.00 |
1990年 | 2,632.00 |
1989年 | 2,820.00 |
1988年 | 1,786.00 |
1987年 | 1,557.00 |
1986年 | 967.00 |
1985年 | 1,305.00 |
1984年 | 1,313.00 |
1983年 | 1,058.00 |
1982年 | 851.00 |
1981年 | 620.00 |
1980年 | 575.00 |
1979年 | 350.00 |
1978年 | 300.00 |
1977年 | 270.00 |
1976年 | 200.00 |
1975年 | 150.00 |
1974年 | 100.00 |
1973年 | 90.00 |
1972年 | 80.00 |
1971年 | 70.00 |
1970年 | 60.00 |
1969年 | 50.00 |
1968年 | 40.00 |
1967年 | 30.00 |
1966年 | 25.00 |
1965年 | 24.00 |
1964年 | 24.00 |
1963年 | 23.00 |
1962年 | 22.00 |
1961年 | 22.00 |
カタールにおける鶏飼養数の推移は、この国の経済発展と食料政策の変遷を象徴的に示しています。1961年には22羽という極めて少ない水準から始まりましたが、70年代後半以降、その増加のスピードが急激に加速しています。特に1980年代には、石油収入の増加による経済力の背景を受けたインフラ整備が進む中、鶏飼育をはじめとする農業分野への投資が拡大しました。この時期に年ごとの飼養数が数百羽単位で伸びていたことは、国内での食料生産力の向上を図る政策が奏功した結果と考えられます。
2000年代に入ると、データは緩やかな成長を示し、その後2016年あたりから急激な伸びが確認できます。特に2018年に25万羽に到達した後、短期間で2020年には30万羽に増加しています。この背景には、カタールが経験した地政学的な問題が影響しています。具体的には、2017年のサウジアラビアをはじめとする近隣諸国との断交(カタール断交問題)により、輸入依存から脱却するための国内食料生産の拡大が国家戦略として進められたことが挙げられます。このような外的なプレッシャーに対応する形で、鶏の生産を国内で大幅に増やす必要が生じたことが明確です。
しかし、2020年以降のデータを見ると、鶏飼養数は30万羽で停滞しています。この理由の一つとしては、国内市場の需要飽和や、飼料不足の課題が挙げられます。さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界の供給網に与えた影響も否定できません。輸入飼料や飼育施設に必要な資材の流入が滞った結果、生産数の伸びが鈍化した可能性が高いです。
今後の課題として、まず持続可能な飼養方法の確立が最重要となります。気候の厳しいカタールでは、水や飼料の効率的な利用が急務です。また、食品輸入依存の見直しにあたって、国際間での協力体制の強化も求められます。特に、技術移転や農業インフラ向上のための外国の投資や専門知識の導入が効果的でしょう。
さらに、災害や疫病に対しての備えも忘れてはなりません。鳥インフルエンザのような家禽関連の感染症は、地域の食料供給に深刻な影響をもたらすため、予防対策を強化する必要があります。これには、高度な検査システムの導入や、定期的な家禽衛生管理が含まれます。
カタールにおける鶏飼養の推移は、単なる数字以上に、この国が直面した地政学的、経済的、そして環境的な課題にどのように対応してきたかを物語っています。今後は、国際協力を通じてさらなる効率化と生産改善を図り、カタール国内のみならず、地域全体への食品安全保障に貢献していくことが望まれます。