国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、カタールのジャガイモ生産量は長期にわたり変動が大きい推移を示しています。1970年代から1980年代にかけては比較的低い生産量で推移したものの、1976年の81トンや1981年の191トンに達するピークを経験しました。一方、2000年代では総じて生産量が低調で推移したものの、2020年代に入ると急激に増加し、2021年には490トン、2022年には503トンという史上最高水準が記録されました。この急激な成長は農業技術の近代化や政策の影響が大きいと考えられます。
カタールのジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,024 |
103.63% ↑
|
2022年 | 503 |
2.67% ↑
|
2021年 | 490 |
137.86% ↑
|
2020年 | 206 |
138.15% ↑
|
2019年 | 87 |
408.82% ↑
|
2018年 | 17 |
-83.65% ↓
|
2017年 | 104 |
49.86% ↑
|
2016年 | 69 |
0.29% ↑
|
2015年 | 69 |
141.96% ↑
|
2014年 | 29 |
-4.67% ↓
|
2013年 | 30 |
25% ↑
|
2012年 | 24 |
33.33% ↑
|
2011年 | 18 |
-60.87% ↓
|
2010年 | 46 |
39.39% ↑
|
2009年 | 33 |
-17.5% ↓
|
2008年 | 40 |
-9.09% ↓
|
2007年 | 44 |
41.94% ↑
|
2006年 | 31 |
63.85% ↑
|
2005年 | 19 |
18.25% ↑
|
2004年 | 16 | - |
2003年 | 16 |
6.67% ↑
|
2002年 | 15 |
-6.25% ↓
|
2001年 | 16 |
-38.46% ↓
|
2000年 | 26 |
-53.57% ↓
|
1999年 | 56 |
-9.68% ↓
|
1998年 | 62 |
-12.68% ↓
|
1997年 | 71 |
36.54% ↑
|
1996年 | 52 |
-5.45% ↓
|
1995年 | 55 |
-49.07% ↓
|
1994年 | 108 |
8% ↑
|
1993年 | 100 |
-53.49% ↓
|
1992年 | 215 |
93.69% ↑
|
1991年 | 111 |
-4.31% ↓
|
1990年 | 116 |
-1.69% ↓
|
1989年 | 118 |
6.31% ↑
|
1988年 | 111 |
177.5% ↑
|
1987年 | 40 |
-59.18% ↓
|
1986年 | 98 |
2.08% ↑
|
1985年 | 96 |
-14.29% ↓
|
1984年 | 112 |
-34.88% ↓
|
1983年 | 172 |
561.54% ↑
|
1982年 | 26 |
-86.39% ↓
|
1981年 | 191 |
73.64% ↑
|
1980年 | 110 |
10% ↑
|
1979年 | 100 |
-15.97% ↓
|
1978年 | 119 |
60.81% ↑
|
1977年 | 74 |
-8.64% ↓
|
1976年 | 81 |
102.5% ↑
|
1975年 | 40 |
5.26% ↑
|
1974年 | 38 |
8.57% ↑
|
1973年 | 35 |
9.38% ↑
|
1972年 | 32 |
18.52% ↑
|
1971年 | 27 | - |
カタールのジャガイモ生産量の推移を見ると、その変動は非常に大きく、1970年代から2000年代初頭まで継続的な増減が見られます。1970年代の始まりにおける年々の緩やかな増加(27トンから40トン)は、おそらく農業基盤の整備や栽培技術の向上の影響によるものです。しかしながら1982年には26トンにまで急激に落ち込み、これ以降不安定な生産量が目立つ時期が続きました。この変動要因には、気候特性、政策的な支援の揺らぎ、または輸入依存へのシフトなどが含まれる可能性があります。
さらに注目すべきは、2000年代の生産量の低迷です。この時期には年間生産量が15~30トン程度にまで減少しており、国内需要の多くを輸入に頼る状況が続きました。カタールは非常に乾燥した気候条件を持つため、水不足や土地の制約が農業生産に大きく影響します。この課題は特に、ジャガイモのように水を多く必要とする作物に対して顕著でした。また、経済の中心であるエネルギー産業への依存が、農業分野の発展を一時的に抑制した可能性も考えられます。
大きな転換点は2020年以降に見られます。2020年には206トン、2021年には490トン、そして2022年には503トンと、これまでにない急激な増加が記録されました。この成果は、カタール政府が掲げる食糧安全保障、特に国内生産の強化という目標に基づく政策の影響が大きいと考えられます。具体的には、先端テクノロジーを活用した農業の効率化、例えばスマート農業の導入や水資源の効率的利用技術の普及です。また、地域間協力を通じて専門的な知識や技術が共有されるようになったことも、収穫量の向上に貢献したと言えるでしょう。
しかしながら、この急成長の持続性については慎重に考慮する必要があります。急増の背景には政策支援がありますが、地政学的リスクや気候変動の影響が今後の農業生産に与える脅威は無視できません。カタールは政治・経済的に安定した国ですが、周辺地域の紛争による物流網の混乱や輸入資材の供給不安が、将来的な生産に影響を及ぼす可能性もあります。また、気温上昇や水不足が進行すれば、農業用地そのものが使えなくなるリスクも存在します。
今後の課題としては、現状の技術革新をさらに推し進めると同時に、持続可能な農業を構築することが重要です。例えば、海水淡水化技術をさらに改善し、農業用水を安定的に供給する仕組みを強化することや、気候に耐性のあるジャガイモ品種の研究開発に注力することが挙げられます。また、農業分野への国際的な協力を展開することで、さらなる技術進化や知識共有を促すべきです。これにより、気候変動や地域的不安定性に影響されにくい農業基盤を確立する手助けとなるでしょう。
結論として、カタールのジャガイモ生産量は近年の政策支援と技術革新による大幅な向上が見られましたが、地政学的影響や環境問題に対応するには、さらに長期的で包括的な対策を講じる必要があります。カタールが持続可能な農業戦略を成功裏に進められるかどうかは、今後の食糧安全保障のみならず、経済や社会全体にも重要な影響を与えるでしょう。