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ボスニア・ヘルツェゴビナの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナの牛乳生産量は、1992年以降大きな変動を見せています。生産量は1990年代に減少を記録しましたが、2000年代に入ると顕著に回復し、2009年にピークを迎えました。その後は横ばいの推移を見せながらも、2010年代後半から再び減少傾向にあり、2021年には大きく落ち込んでいます。2022年には部分的に回復しましたが、2023年も580,214トンと安定には至っていません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 580,214
-3.8% ↓
2022年 603,118
11.79% ↑
2021年 539,510
-14.25% ↓
2020年 629,133
-1.81% ↓
2019年 640,712
-5.32% ↓
2018年 676,712
-0.44% ↓
2017年 679,714
-2.76% ↓
2016年 699,011
0.49% ↑
2015年 695,601
1.42% ↑
2014年 685,830
-0.32% ↓
2013年 688,000
2.08% ↑
2012年 674,000
-2.18% ↓
2011年 689,000
-3.72% ↓
2010年 715,600
-10.3% ↓
2009年 797,800
4.96% ↑
2008年 760,100
1.79% ↑
2007年 746,700
9.34% ↑
2006年 682,900
5.24% ↑
2005年 648,900
8.02% ↑
2004年 600,700
11.8% ↑
2003年 537,300
3.81% ↑
2002年 517,600
-1.45% ↓
2001年 525,200
-3.37% ↓
2000年 543,500
2.16% ↑
1999年 532,000
0.32% ↑
1998年 530,300
27.69% ↑
1997年 415,300
36.61% ↑
1996年 304,000
-15.56% ↓
1995年 360,000
-5.26% ↓
1994年 380,000
-11.63% ↓
1993年 430,000
-4.44% ↓
1992年 450,000 -

ボスニア・ヘルツェゴビナの牛乳生産量の推移は、同国の地政学的背景や経済状況、気候、農業政策の影響を如実に反映しています。1992年から1996年にかけての大幅な減少は、同国で発生した紛争が主要な要因です。この時期、生産基盤となる酪農業が著しい被害を受けており、農地や家畜の激減、農村部の離散により1996年には生産量が304,000トンにまで減少しました。

紛争終結後、1997年以降は徐々に回復基調を示しています。1998年には530,300トンと回復し、2000年代中盤には農業基盤の再建と政府主導の支援策が奏功し、急速に生産量が増加しました。この流れは2009年に797,800トンというピークを迎えています。

しかし、2010年代に入ると生産量は再び安定を欠く動きを見せ始めました。これは、経済的要因、気候変動による天候不順、農民の高齢化、若い世代の農業離れといった複合的な要素が影響していると考えられます。また、2021年の539,510トンへの急落は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行がもたらした物流の寸断や、人材不足、輸入主要飼料価格の上昇といった外的要因も関連していると推測されます。2022年には一時的に生産が回復し、603,118トンに達しましたが、2023年には再び減少し、580,214トンという結果になりました。

このような変動は単なる国内事情に限定されず、隣国やヨーロッパ全体の農業政策や市場の動向にも密接に関連しています。ボスニア・ヘルツェゴビナでは、小規模農家が生産の中核を担っていますが、大規模化や効率化が進む他の欧州諸国と比べると、競争力の課題が浮き彫りです。

今後の課題として、まず小規模農家を支えるための生産性向上政策が重要です。たとえば、政府が家族経営の酪農家への補助金を拡充し、デジタル技術を活用した生産の効率化や、気候変動に適応した持続可能な農業技術の導入が求められます。また、地域の食品加工産業を育成し、付加価値を高めることで、国内市場だけでなく輸出市場にも製品を供給できる体制を構築することが肝要です。

さらに教育や若者支援も鍵となります。農業従事者の高齢化を防ぐため、若い世代が酪農や農業に魅力を感じるようなプログラムを開発し、専門的なスキルを提供する教育機関や職業訓練を拡充することが重要です。EUとの協力を強化し、同地域からの技術的支援や投資を取り込むことも有効です。

長期的には、紛争の影響から完全に回復するための国際的支援と地域間協力が欠かせません。地域レベルでの資源共有や、物流インフラの改善も含めた広域的な政策枠組みを構築することで、安定した酪農産業の発展が期待されます。