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ボスニア・ヘルツェゴビナの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データ(2024年7月更新)によると、ボスニア・ヘルツェゴビナの鶏卵生産量は、1990年代には紛争の影響で減少傾向にありましたが、その後は安定的な成長を遂げています。特に、2008年の26,200トン以降、大きな増減は見られるものの、2023年には25,860トンと高い水準に到達しています。この推移には、地政学的背景や経済成長、農業政策が深く関与しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 25,860
13.52% ↑
2022年 22,780
17% ↑
2021年 19,470
-21.43% ↓
2020年 24,780
2.86% ↑
2019年 24,090
9.5% ↑
2018年 22,000
-0.81% ↓
2017年 22,180
-3.36% ↓
2016年 22,950
6% ↑
2015年 21,650
2.8% ↑
2014年 21,060 -
2013年 21,060
2.98% ↑
2012年 20,450
11.75% ↑
2011年 18,300
-12.1% ↓
2010年 20,820
-11.78% ↓
2009年 23,600
-9.92% ↓
2008年 26,200
28.81% ↑
2007年 20,340
19.65% ↑
2006年 17,000
-3.51% ↓
2005年 17,619
12.65% ↑
2004年 15,640
-8% ↓
2003年 17,000
2.41% ↑
2002年 16,600
-1.19% ↓
2001年 16,800
-7.69% ↓
2000年 18,200
8.33% ↑
1999年 16,800
-10.16% ↓
1998年 18,700
68.47% ↑
1997年 11,100
38.75% ↑
1996年 8,000
-17.53% ↓
1995年 9,700
-4.9% ↓
1994年 10,200
-20.31% ↓
1993年 12,800
-22.89% ↓
1992年 16,600 -

ボスニア・ヘルツェゴビナの鶏卵生産量は、1990年代に大きな減少を経験しました。この背景には、1992年から1995年にかけての内戦による影響がありました。この期間、農業資源が破壊され、多くの畜産業者が経済基盤を失ったことで、1992年の16,600トンから1996年の8,000トンまで生産量が大幅に低下しました。しかし、紛争終結後の安定化と再建が進むにつれ、生産量は徐々に回復傾向を示し、1998年には18,700トンとほぼ戦前の水準に戻りました。

2000年代初頭以降、鶏卵生産は年間16,000トンから20,000トンの範囲で推移し、2008年には26,200トンのピークを迎えました。この時期の増加は、農業分野への投資やEUからの補助金が有効に機能した結果と考えられます。また、この間、都市部での消費需要が拡大したことも、鶏卵生産の増加に寄与しました。しかし、2008年以降は世界金融危機の影響もあり、生産量が再びやや減少し、2011年には18,300トンまで落ち込みました。この時期は、国民の購買力低下や輸入競争が国内生産に影響を及ぼしたと推測されます。

2015年以降は再び安定した成長が見られ、2023年には25,860トンと再び高水準に達しました。この成果の背景には、農業技術の向上、飼料価格の安定化、輸出志向の政策促進などが挙げられます。ただし、2021年には19,470トンの大幅な減少も記録されており、この原因として新型コロナウイルスの影響による物流の混乱や農業従事者の負担増加が関与していると考えられます。

課題としては、国内の鶏卵生産が依然として地域的な条件に左右されやすい点が挙げられます。一部地域では、インフラの老朽化や資金不足が生産のボトルネックとなっています。また、ボスニア・ヘルツェゴビナは隣国のクロアチアやセルビアへの鶏卵輸出を行っていますが、これらの地域市場での競争力を維持するためには、生産コスト削減と品質向上が不可欠です。

長期的には、政府と農業セクターが協同し、新しい養鶏施設の建設や家禽の高品質種導入、飼料の質改善に焦点を当てるべきです。また、気候変動の影響に適応するため、持続可能な農業技術を導入することも重要です。さらに、EU加盟を視野に入れた規制整備や貿易政策の更なる調和が必要です。

結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナは過去の困難を乗り越え、鶏卵生産をおおむね安定的に増加させることに成功しました。しかし、競争力向上や持続可能性に向けた一層の取り組みが必要です。そのためには、国際的な支援と国内政策の強化を両立させながら、地域間協力を深める枠組みの構築が鍵となるでしょう。