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ボスニア・ヘルツェゴビナのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによれば、ボスニア・ヘルツェゴビナのブドウ生産量は、1992年以降、大きな変動を示しています。特に1990年代の内戦の影響で大幅に減少しましたが、2000年以降には回復傾向が見られました。直近の2023年の生産量は26,674トンであり、2022年から若干回復したものの、2020年のピークである44,695トンと比べると依然低調です。この変動は、地政学的要因や気候変動、さらには労働力不足など、複数の要因が組み合わさって影響を及ぼしていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 26,674
16.09% ↑
2022年 22,977
-45.31% ↓
2021年 42,012
-6% ↓
2020年 44,695
13.76% ↑
2019年 39,289
-2.77% ↓
2018年 40,408
44.25% ↑
2017年 28,013
-24.09% ↓
2016年 36,904
12.48% ↑
2015年 32,809
25.12% ↑
2014年 26,221
-17.54% ↓
2013年 31,800
22.63% ↑
2012年 25,931
20.05% ↑
2011年 21,601
-6.74% ↓
2010年 23,163
-9.58% ↓
2009年 25,617
7.13% ↑
2008年 23,912
12.61% ↑
2007年 21,235
-1.22% ↓
2006年 21,498
-7.63% ↓
2005年 23,273
7.17% ↑
2004年 21,715
-0.41% ↓
2003年 21,804
53.52% ↑
2002年 14,203
2.38% ↑
2001年 13,873
11.5% ↑
2000年 12,442
-2.21% ↓
1999年 12,723
-0.63% ↓
1998年 12,804
2.46% ↑
1997年 12,497
56.21% ↑
1996年 8,000
-5.88% ↓
1995年 8,500
-29.17% ↓
1994年 12,000
-33.33% ↓
1993年 18,000
-41.37% ↓
1992年 30,700 -

ボスニア・ヘルツェゴビナのブドウ生産の推移を見ると、2023年現在、大きな変動を続ける特徴が見受けられます。1990年代前半の生産量は、内戦の影響により著しい減少が記録されています。特に、1995年の生産量は8,500トンと1992年の30,700トンから約70%の大幅な減少を示しました。この減少には、農地の荒廃や労働力の不足、またインフラの破壊といった深刻な内戦の影響が主な要因として挙げられます。これは、生産基盤が不安定になることが農業分野全体に与えるダメージの典型的な事例です。

2000年以降は、一定の回復が見られ、生産量はおおむね2万トン台へと戻りました。この時期は徐々に安定し、2005年から2010年にかけて生産がやや増加しました。しかし、気候変動の影響や頻発する異常気象、大量の労働力が必要な収穫作業における労働人口の減少が、伸びを抑えた可能性があります。その一方で、特に2015年以降、ブドウ生産量は顕著に増加し、2020年には44,695トンという過去最高値を記録しました。この一時的な増加要因として、輸出市場の拡大や国内需要の増加、また農業技術の進歩が挙げられます。

しかし、2022年には22,977トンに急減し、2023年にやや回復したものの、2015年以降の成長トレンドには遠く及んでいない状況です。この急減は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響が疑われます。この期間中、国際的な貿易流通の停滞や、農業従事者の移動や健康面への制約が大きな要因となった可能性があります。

ボスニア・ヘルツェゴビナの地理的位置もこの問題に影響を与えています。同国はバルカン半島という複雑な地政学的環境に位置しており、周辺諸国との貿易関係や市場動向がダイレクトに影響を与える状況です。加えて、国内経済規模が限られるため、農作物の輸出に依存する体質が生産の変動を大きくしています。同時に、隣国であるクロアチアのEU加盟以降、EU外のボスニア・ヘルツェゴビナがこれに適応する政策が遅れたこともこれらの動きに拍車をかけています。

今後の課題としては、以下の点が挙げられます。まず、持続可能な農業技術の導入とその普及が急務です。例えば、気候変動に適応するための耐性品種の普及や、灌漑施設の整備を進める必要があります。また、近年の労働力不足を考慮し、機械化やデジタル化の推進が期待されています。さらに、隣国やEUとの貿易関係を強化するための政策的努力も求められます。これには、品質基準や規格への対応、輸出補助が含まれます。

また、災害やその他のリスクに備えた農業保険制度を強化することも有効です。具体的には、異常気象による被害を最小化するための予測情報提供や、公共・民間双方の資本を活用した保険プログラムの展開が挙げられます。そして、さらなるワイン産業への付加価値の創出や観光業との連携も、国内市場の多角化に寄与できる分野です。

結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナのブドウ生産量はこれまで紆余曲折を経てきましたが、今後の成長見込みを実現するためには、統合的かつ包括的なアプローチが必要です。気候変動や地政学的リスクに対応するための農業政策と農業技術の進化が鍵となります。これにより、生産の安定だけでなく、ボスニア・ヘルツェゴビナ全体の経済成長や地域間の協力の強化に貢献できる可能性が見えてきます。国際社会や隣国との協力もまた、この目標達成において不可欠な要素となります。