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ボスニア・ヘルツェゴビナのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるクルミ(胡桃)の生産量は、過去30年間において不安定な推移を見せており、2000年代前半には約3,000から5,000トンの生産量を記録していました。特に、2022年以降では急激に生産量が増加し、2023年には23,354トンという過去最高の記録に達しました。一方で、2000年代後半や2010年代には、不安定な生産量が長期的な課題として挙げられています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 23,354
58.47% ↑
2022年 14,737
239.56% ↑
2021年 4,340
-6.95% ↓
2020年 4,664
36.81% ↑
2019年 3,409
-45.9% ↓
2018年 6,301
225.94% ↑
2017年 1,933
-50.49% ↓
2016年 3,905
-40.51% ↓
2015年 6,564
215.73% ↑
2014年 2,079
-34.44% ↓
2013年 3,171 -
2012年 3,171
-39.61% ↓
2011年 5,251
7.01% ↑
2010年 4,907
-14.06% ↓
2009年 5,710
18% ↑
2008年 4,839
-5.08% ↓
2007年 5,098
0.2% ↑
2006年 5,088
1.76% ↑
2005年 5,000
38.89% ↑
2004年 3,600
-2.54% ↓
2003年 3,694
56.33% ↑
2002年 2,363
-28% ↓
2001年 3,282
-39.11% ↓
2000年 5,390
75.74% ↑
1999年 3,067
-6.01% ↓
1998年 3,263
-2.66% ↓
1997年 3,352
9.49% ↑
1996年 3,062
1.63% ↑
1995年 3,012
-1.54% ↓
1994年 3,060
-7.28% ↓
1993年 3,300
65% ↑
1992年 2,000 -

ボスニア・ヘルツェゴビナのクルミ生産は、地理的条件に依存しつつも、紛争や経済的背景、気候変動の影響を受けて推移してきました。1990年代初頭は約2,000トン程度で、内戦(ボスニア紛争)があった時期に生産量が低迷しましたが、その後1990年代後半にはおよそ3,000トンと若干の回復を見せています。しかし、安定性には欠けており、2000年には5,390トンと急増したものの、その翌年には3,282トンと著しい下降が見られるなど、変動幅が大きいのが特徴です。

2005年以降、4,000トンから5,000トン台の生産量を中心に推移していましたが、例外的に2012年から2017年の間では生産量の低迷が顕著になりました。この期間は、特に気候変動の影響がクルミの生産に影響を与えた可能性が高いとされています。また、ボスニア・ヘルツェゴビナが複雑な地政学的状況下にあることも、農業インフラや市場の不安定性につながっていたと考えられます。

注目すべきは、2022年の14,737トン、そして2023年の23,354トンという急激な増加です。この急激な躍進にはいくつかの要因が考えられます。まず、ボスニア・ヘルツェゴビナ国内外でクルミ需要が拡大していることが挙げられます。特に、健康志向の食生活がグローバルに広がっている現在、クルミを含むナッツ製品への関心が高まりました。さらに農業政策の改善や投資誘致による地方農業の活性化が、結果として産出量の拡大に寄与した可能性があります。

一方で、これほどの短期間での急増にはリスクも伴います。例えば、生産設備や供給チェーンが軽視される場合、急激な供給増加に対する市場のキャパシティ不足や価格の暴落が懸念されます。また、気候変動の影響が予測困難であることから、大規模な異常気象が発生した場合、過去のような生産量の急低下に至る可能性も否定できません。

将来的には、この急増の背景にある国内農業支援政策をさらに強化し、持続可能な農業を実現する必要があります。具体的には、最新の農業技術を導入することや、小規模農家への支援を充実させることが重要です。また、地域間での協力枠組みを構築し、ナッツ市場で隣国やヨーロッパ諸国と強いネットワークを築くことも有効です。地政学的リスクや貿易に関する障壁を乗り越えるためには、国際的な協力による支援も重要となるでしょう。

総じて、ボスニア・ヘルツェゴビナのクルミ生産量は近年驚異的な成長を遂げているものの、過去の不安定な推移から学びつつ、持続可能性を確保する政策と技術投資を進めることが、今後の安定成長に不可欠であると言えます。国際市場での競争力をさらに高めるため、地元ブランドの確立や輸出拡大に向けた戦略的な取り組みが求められます。