国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのニンニク生産量は過去30年で大きな変動を見せています。1992年に4,192トンであった生産量は、1997年以降から急成長を見せ、1998年には10,647トンに達しました。しかし、その後は減少基調に転じ、2000年代後半には6,000~7,000トン台で推移しています。2023年には6,064トンを記録しており、近年は概ね横ばいの動きを示しています。
ボスニア・ヘルツェゴビナのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 6,064 |
29.68% ↑
|
2022年 | 4,676 |
-13.66% ↓
|
2021年 | 5,416 |
-12.45% ↓
|
2020年 | 6,186 |
9.66% ↑
|
2019年 | 5,641 |
-4.23% ↓
|
2018年 | 5,890 |
5.93% ↑
|
2017年 | 5,560 |
-23.4% ↓
|
2016年 | 7,259 |
41.92% ↑
|
2015年 | 5,115 | - |
2014年 | 5,115 |
-23.07% ↓
|
2013年 | 6,649 |
37.12% ↑
|
2012年 | 4,849 |
-14.16% ↓
|
2011年 | 5,649 |
-10.6% ↓
|
2010年 | 6,319 |
-9.21% ↓
|
2009年 | 6,960 |
0.55% ↑
|
2008年 | 6,922 |
1.57% ↑
|
2007年 | 6,815 |
-14.7% ↓
|
2006年 | 7,989 |
5.63% ↑
|
2005年 | 7,563 |
-3.4% ↓
|
2004年 | 7,829 |
31.78% ↑
|
2003年 | 5,941 |
-29.29% ↓
|
2002年 | 8,402 |
39.8% ↑
|
2001年 | 6,010 |
52.04% ↑
|
2000年 | 3,953 |
-53.43% ↓
|
1999年 | 8,488 |
-20.28% ↓
|
1998年 | 10,647 |
19.63% ↑
|
1997年 | 8,900 |
32.84% ↑
|
1996年 | 6,700 |
31.37% ↑
|
1995年 | 5,100 |
112.5% ↑
|
1994年 | 2,400 |
-25% ↓
|
1993年 | 3,200 |
-23.66% ↓
|
1992年 | 4,192 | - |
1992年からのデータを見ると、ボスニア・ヘルツェゴビナのニンニク生産量は、国内外の社会経済的背景に強い影響を受けてきたことがわかります。1990年代前半の生産量低下は、この地域が経験した戦争の影響によるものとされています。生産基盤である農村地域が破壊されただけでなく、労働力の不足や物流の停滞が生産量に深刻な影響を及ぼしました。その後、1995年以降、平和回復と共に農業セクターへの投資や再建が進み、特に1997年から1999年にかけては急速な回復が見られた点が注目されます。
しかし、1998年のピークを過ぎると生産に再び波が見られ、特に2000年には大幅な減少が記録されました。この原因には市場需要の変動や技術投資の遅れ、さらには気候の変動が関連していると考えられます。気候変動による地域の農業環境への影響も、この地域におけるニンニク生産に継続的な脅威を与える要因の一つです。例えば、例年よりも高温・乾燥化が進むと、ニンニクの生育に悪影響を及ぼす可能性が高まります。
2010年代以降は、年間生産量が5,000~6,500トン前後で推移する安定期に入りました。ただし、安定しているとはいえ、1990年代後半の10,000トンを超える水準には達せず、この点で生産効率や市場戦略に課題が残されています。また直近では、コロナ禍が農業経済に与えた影響や労働力不足の影響も顕在化しています。特に2022年に記録した4,676トンという減少は、供給網の混乱や輸送コストの上昇が関連していると指摘されています。
他国と比較すると、中国が世界最大のニンニク生産国であり、その生産量は億トンを超える大規模なものです。ボスニア・ヘルツェゴビナのような中規模の生産国が国際市場で競争力を強化するには、品質の向上や有機農業へのシフト、新品種の開発などが必要不可欠となります。日本や韓国では、ブランド化された農産品が高付加価値を生む例が見られるため、ボスニア・ヘルツェゴビナでも競争力のあるブランド作りが有効でしょう。
今後の課題として、輸出主導の農業を目指すには、国内生産インフラの強化が重要です。持続可能な農業技術の導入や、気候変動に対応した農業政策を策定することが必要です。また、地域の農家と企業を結びつける共同体ベースの協力プログラムを形成し、生産者に技術支援や販売ルートの確保を提供することも有効となるでしょう。
結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナのニンニク生産は、戦争や経済危機、気候変動など多くの外的要因の影響を受けつつも、一定の回復と安定を見せています。しかし、過去のピークには及ばない現状を脱却し、持続的な成長を遂げるためには、生産技術の革新、環境の変化への適応、並びに市場戦略の再構築が重要です。国際機関との提携や地域協力を通じて、これらの課題解決に向けた具体的な措置を講じる必要があります。