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ボスニア・ヘルツェゴビナのトマト生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのトマト生産量は、長期的には変動を繰り返しながら、特定の年に大幅な増減を示しています。2016年には57,070トンとピークを記録しましたが、その後、2022年には33,743トンに減少しています。この変動の背景には、地政学的リスクや気候条件、経済状況の影響が考えられます。

年度 生産量(トン)
2022年 33,743
2021年 52,892
2020年 49,635
2019年 43,700
2018年 43,918
2017年 46,166
2016年 57,070
2015年 41,182
2014年 29,307
2013年 56,030
2012年 44,021
2011年 45,942
2010年 36,632
2009年 46,333
2008年 40,722
2007年 33,287
2006年 40,700
2005年 30,738
2004年 39,655
2003年 31,929
2002年 37,669
2001年 30,801
2000年 29,618
1999年 36,855
1998年 46,013
1997年 40,100
1996年 33,300
1995年 20,300
1994年 20,400
1993年 20,500
1992年 18,000

ボスニア・ヘルツェゴビナのトマト生産量は1990年代初頭から追跡されており、その動向はこの国の社会経済的、地政学的背景と密接に関連しています。1992年の18,000トン時点では紛争の影響を強く受けていましたが、1996年には33,300トンと大きな伸びを記録しています。これは、内戦終結後の農地回復と平和維持活動が進んだこと、また農業生産への投資が増えたことを反映しています。1996年以降は増加と減少を繰り返しながらも、全体的に30,000トンから50,000トンの範囲を維持しています。特に2016年には史上最も多い57,070トンを記録しました。

2014年を見てみると、29,307トンと大きな落ち込みが観察されます。この年はヨーロッパ全体で大規模な洪水被害が報告され、ボスニア・ヘルツェゴビナの農作物にも甚大な被害が及びました。同様に、2022年の33,743トンという低い数値も気象条件の悪化や新型コロナウイルスによる供給チェーンの断絶、ならびにウクライナ危機が経済環境に与えた影響を反映していると考えられます。また、輸出市場の競争激化や農業従事者の高齢化も持続的な生産増加の妨げとなっています。

このデータを他国と比べると、伝統的な農業国で知られるトルコの年間生産量(例えば2020年には約1,270万トン)やオランダの施設園芸を中心とする高収量(2020年に約90万トン)に比べ、ボスニア・ヘルツェゴビナの生産量は非常に小規模です。しかし、トマトは国内需要と輸出収入の両方において重要な役割を果たしており、効率的な生産を進めることがこの国の持続可能な農業発展において重要です。

未来に向けた課題として、気候変動に対する適応力を高めることが挙げられます。近年、気象条件の変動はトマト生産を不安定にしており、それに伴う収穫量の減少を和らげるためには、灌漑設備の整備や耐旱性のある品種の導入が必要です。また、農業指導を通じた生産技術の改善や、若い世代による農業従事の促進も課題解決の鍵となるでしょう。例えば、デジタル技術を活用して効率化を図る「スマート農業」の導入は、生産の安定化に寄与する可能性があります。

さらに、地政学的リスクがボスニア・ヘルツェゴビナのトマト生産に与える影響も無視できません。ウクライナ危機による肥料価格の高騰はコスト構造に悪影響を及ぼし、国内外の市場へのアクセスが制約されるなど、農家にとって厳しい状況が続いています。こうした課題に対処するためには、欧州連合との連携を強化し、農業支援プログラムを拡充することが重要です。

結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナのトマト生産は過去数十年間にわたり増減を繰り返しながらも、一定の範囲内で推移しています。気候変動や地政学的リスクへの耐久性を高める政策を推進することにより、安定した生産量の維持と持続可能な農業展開が期待されます。農業の技術革新、若年層の巻き込み、さらには地域間協力の深化を進めることで、ボスニア・ヘルツェゴビナの農業はより強固な基盤のもと発展していくことでしょう。