Skip to main content

ボスニア・ヘルツェゴビナの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける大麦生産量は、1990年代初頭には年間5万トン前後で推移していましたが、その後増減を繰り返しつつ、2020年代には約8万トンから9万トンの生産量を記録するまでに成長しています。この間、地域の政治的背景や経済の変化、気候条件が生産動向に影響を与えていたとみられます。特に2020年以降は安定して高い生産量を維持していますが、2023年には再び小幅な減少が見られました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 75,561
-15.68% ↓
2022年 89,610
3.86% ↑
2021年 86,279
-2.78% ↓
2020年 88,742
19.18% ↑
2019年 74,462
-5.82% ↓
2018年 79,060
3.58% ↑
2017年 76,324
-1.25% ↓
2016年 77,294
22.31% ↑
2015年 63,194
29.9% ↑
2014年 48,649
-31.33% ↓
2013年 70,844
8.43% ↑
2012年 65,337
-0.5% ↓
2011年 65,667
30.86% ↑
2010年 50,183
-35.01% ↓
2009年 77,222
-0.77% ↓
2008年 77,821
28.1% ↑
2007年 60,748
-2.71% ↓
2006年 62,437
20.35% ↑
2005年 51,879
-16.94% ↓
2004年 62,457
55.87% ↑
2003年 40,070
-34.53% ↓
2002年 61,208
10.22% ↑
2001年 55,535
3.56% ↑
2000年 53,626
-4.74% ↓
1999年 56,295
-11.21% ↓
1998年 63,402
9.25% ↑
1997年 58,032
23.47% ↑
1996年 47,000
11.9% ↑
1995年 42,000
-4.98% ↓
1994年 44,200
-13.33% ↓
1993年 51,000
-12.07% ↓
1992年 58,000 -

ボスニア・ヘルツェゴビナの大麦生産量は1992年から2023年にかけて、緩やかな増加傾向を示しつつも、経済的、地政学的要因や気候変動の影響を受けて、幾たびかの変動が生じています。1992年から1994年にかけての生産量減少(58,000トンから44,200トンへ)は、ボスニア紛争により農業インフラが破壊され、住民の生活基盤が大きく損なわれたことが主な要因と考えられます。同様に、1990年代中盤以降の回復期における増加も、戦後復興と農業支援政策の影響を反映していると推測されます。

2000年代に入ると、生産量は5万トン台から6万トン台を基準に比較的安定しましたが、2003年には40,070トンと急減しました。これは、地元の気候条件や当時の国際市況の影響を受けた可能性があります。2008年から2009年にかけての77,000トン超の高水準は、国際的な穀物価格の高騰を背景に、農家が大麦栽培に注力した結果である可能性があります。

その後、2010年代には気候変動による降雨パターンの変化が影響を与えたとみられ、2010年や2014年における5万トン台の低生産量が確認されています。ただし、同じ10年間で持続可能な農業政策の取り組みが行われたことや、農作物の改良種の導入により、2016年以降大麦の生産量は再び堅調に推移し始めています。特筆すべきは2020年から2022年における生産量の増加であり、88,742トンから89,610トンまで上昇しています。これは、国内農業の効率化や地域間貿易の促進が奏功した結果と考えられます。

2023年には75,561トンと若干の減少が記録されましたが、この要因として、同年にヨーロッパで観測された異常気象や熱波の影響が指摘されています。気温上昇や極端な乾燥条件が大麦の成長期にダメージを与えた結果と言えるでしょう。

ボスニア・ヘルツェゴビナの大麦生産においては引き続き、気候変動への対応が課題となっています。また、近隣諸国との協力体制を強化し、穀物市場の安定化を図ることが急務です。特に、生産性向上を支援する先端農業技術の導入や、降水量の変動を補うための灌漑技術の改善が有効です。同時に、EU加盟の議論も進む中で、地域間の輸送ネットワークを強化し、生産した大麦を効率的に輸出する仕組みを整えることも重要です。

さらなる潜在的なリスクとして、地政学的な不安定性や農業労働力の減少が挙げられます。これに対応するため、農業分野への若年層の参入を促進するための教育プログラムや、国際機関との連携による投資支援が必要となるでしょう。以上のような取り組みによって、大麦生産の持続可能性がより確保され、地域経済の成長にも寄与できると考えられます。