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ボスニア・ヘルツェゴビナのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのトウモロコシ生産量は過去30年間で大きな変動を見せています。特筆すべき点として、2020年には1,426,356トンの生産量を記録し、これは調査期間中の最高値となります。一方で、1995年には戦争の影響と思われる372,000トンに留まり、最低値を記録しました。このように生産量の振幅が大きいことから、同国の農業セクターには課題と機会が混在しているといえます。

年度 生産量(トン)
2022年 987,215
2021年 893,124
2020年 1,426,356
2019年 1,235,596
2018年 1,272,339
2017年 709,584
2016年 1,178,423
2015年 785,701
2014年 799,487
2013年 798,500
2012年 539,432
2011年 764,119
2010年 853,376
2009年 962,921
2008年 1,004,359
2007年 635,344
2006年 993,850
2005年 1,004,099
2004年 990,429
2003年 545,059
2002年 903,231
2001年 770,557
2000年 471,963
1999年 984,052
1998年 846,638
1997年 830,445
1996年 588,000
1995年 372,000
1994年 460,000
1993年 540,000
1992年 630,000

ボスニア・ヘルツェゴビナはバルカン半島に位置し、農業が経済の重要な柱を担っています。この国のトウモロコシ生産量推移を見てみると、1990年代前半には顕著な減少が見られました。特に1995年までに生産量が372,000トンにまで減少した背景には、1992年から1995年にかけて続いたボスニア紛争が大きく影響しています。戦争により農業インフラが崩壊し、農地が耕作不可能な状態に置かれたことがこの縮小の主因と考えられます。この時期の減少は、地政学的リスクが農業生産に与える影響を端的に示しています。

1996年以降、紛争の収束とともにトウモロコシ生産量は回復基調に転じました。1997年には大幅な増加が見られ、830,445トンまで回復しました。その後、全体的には年間700,000トンから1,000,000トンを中心に推移しました。特に2000年代後半以降には持続的な生産増加傾向が始まり、2005年や2008年には1,000,000トンを超える結果を残しています。この増加の背後には、農業技術の導入や農業生産性向上を目指した国内外からの投資の増加が寄与していると考えられます。また、同時期には気候条件の安定も生産向上に寄与した可能性があります。

しかしながら、生産量の変動は完全に解消されたわけではありません。2012年には539,432トンと再び大幅な落ち込みが見られました。この年に発生した干ばつが農業生産に大きな影響を与えたと言われています。ボスニア・ヘルツェゴビナは地中海性気候と大陸性気候の影響を受ける地域であり、気候変動による降水量の減少や気温の上昇が農作物の生産性に直接的な影響を及ぼしています。

注目すべき点として、近年では生産量が再び増加傾向を見せています。2019年を皮切りに2020年には過去最高となる1,426,356トンを記録しました。これには農業インフラの整備、運搬網の発展、そして気候への調整適応策の効果が反映されている可能性があります。しかしながら、その後の2021年には再び893,124トンに減少しており、天候や市場の需給変動に大きく影響される脆弱性が依然として存在しています。

今後の課題として、気候変動へのさらなる対応と生産基盤の多様化が挙げられます。たとえば、干ばつ耐性を持つトウモロコシの品種改良や灌漑設備の導入が課題解決の鍵となります。また、政府や国際機関による農業分野の支援プログラムを活用し、生産者支援や持続可能な農法への移行も考えられます。さらに、地域間の協力を通じたバルカン地域全体の農業研究連携や技術交流が、長期的な安定生産に寄与することが期待されます。

このデータは、地政学的な影響、気候リスク、技術革新が農業生産に与える影響を示しています。ボスニア・ヘルツェゴビナにおいてトウモロコシ生産が持続可能な発展を遂げるためには、これらの要素を緻密に考慮した政策と戦略が必要です。国際連合食糧農業機関などの国際的なサポートを受けながら地域の農業を強化することで、同国の食糧安定性と輸出拡大がさらに向上する可能性があります。