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ボスニア・ヘルツェゴビナのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年に更新した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのさくらんぼ生産量は1992年から2023年にかけて変動を繰り返しながら、近年著しい増加を記録しています。特に2022年には25,364トンと過去最高を記録し、その後も高水準を維持。生産量の増加は顕著であり、これは気候、農業技術の改善、市場需要の変化といった複数の要因の影響を受けています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 21,382
-15.7% ↓
2022年 25,364
161.08% ↑
2021年 9,715
-14.83% ↓
2020年 11,406
21.61% ↑
2019年 9,379
-20.73% ↓
2018年 11,832
39.61% ↑
2017年 8,475
-13.99% ↓
2016年 9,854
-8.97% ↓
2015年 10,825
20.14% ↑
2014年 9,010
-17.09% ↓
2013年 10,867
37.37% ↑
2012年 7,911
-29.66% ↓
2011年 11,247
14.32% ↑
2010年 9,838
-7.97% ↓
2009年 10,690
5.96% ↑
2008年 10,089
-3.87% ↓
2007年 10,495
18.56% ↑
2006年 8,852
2.63% ↑
2005年 8,625
-3.89% ↓
2004年 8,974
34.14% ↑
2003年 6,690
55.84% ↑
2002年 4,293
18.59% ↑
2001年 3,620
-22.18% ↓
2000年 4,652
-24.04% ↓
1999年 6,124
-16.91% ↓
1998年 7,370
10.74% ↑
1997年 6,655
202.5% ↑
1996年 2,200
-4.35% ↓
1995年 2,300
-54% ↓
1994年 5,000
-16.67% ↓
1993年 6,000
-31.85% ↓
1992年 8,804 -

ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるさくらんぼ生産量の動向を見てみると、1990年代には深刻な紛争の影響を受け、生産量は大幅に減少しました。例として、1992年から1995年のボスニア紛争期間中、生産量は8,804トンから2,200トン前後まで減少しました。この減少は、戦争による農業インフラの崩壊、農地破壊、労働力の減少が直接的な要因であると考えられます。

2000年代に入ると状況は徐々に改善し、8,000トン台を安定的に維持する時期が続きました。この回復は、戦後復興の進展と農業技術の普及により果樹園の整備が進められた結果です。当時の生産量は世界全体のさくらんぼ生産量と比較すると低い水準にとどまっていましたが、ここでは特にEUや中国など国際市場への輸出が成長の鍵となりました。

近年、2022年には一気に25,364トンという大幅な増加が記録されました。この増加にはいくつかの要因が考えられます。まず、気候条件がさくらんぼ栽培に適していた可能性があり、大規模な自然災害や異常気象の影響を受けなかったことが重要です。また、EU支援による設備投資や農業政策における補助金制度が、生産性の向上を後押ししたと見られます。加えて、さくらんぼはヨーロッパ全体で消費が拡大しており、この需要の高まりが地域の生産者に利益をもたらしました。

しかし、2023年の生産量は21,382トンで、2022年の最高記録から減少しました。これには、経済的要因や地域間の競争、さらには労働力不足などが影響している可能性があります。さくらんぼは収穫時期が短く、労働集約的な作物であるため、収穫可能な時期に十分な人材を確保できない場合、生産効率が低下します。また、地政学的なリスクや気候変動に伴う予測不可能な天候も、この動向に影響を与えていると考えられます。

今後の課題としては、まず気候変動への対応が挙げられます。異常気象による収穫期のばらつきを減少させるため、農業技術のさらなる改善が必要です。また、地域内外での労働力確保策が重要であり、例えば季節労働者を受け入れるための移民政策の強化や、地元雇用を促進するための公共支援が欠かせません。さらに、国際市場を見据えた輸出戦略の確立も求められます。ボスニア・ヘルツェゴビナは小規模な農業市場を抱える国であり、競争力を高めるためには、高品質な製品の提供やブランド力の向上が重要です。

まとめると、ボスニア・ヘルツェゴビナのさくらんぼ生産量は長期的には上昇傾向にありますが、変動も大きい状況です。記録的な生産量を背景として更なる発展への期待は高まっていますが、労働力や気候、国際市場に関連する課題への取り組みが不可欠です。政府や国際機関による支援、また市場ニーズを満たした持続可能な農業経営が、今後の安定した成長を実現する鍵となるでしょう。