国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのスイカ生産量は1992年の6,538トンから急増し、2001年には77,808トンとピークに達しました。その後減少傾向を辿りつつも、2016年頃からは安定したレベルで推移しています。しかし、2022年に再び大幅な減少を見せた後、2023年には19,935トンに若干回復しています。
ボスニア・ヘルツェゴビナのスイカ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 19,935 |
75.53% ↑
|
2022年 | 11,357 |
-53.03% ↓
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2021年 | 24,177 |
-1.4% ↓
|
2020年 | 24,520 |
11.11% ↑
|
2019年 | 22,068 |
-4% ↓
|
2018年 | 22,987 |
-1.67% ↓
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2017年 | 23,377 |
-2.14% ↓
|
2016年 | 23,887 |
8.31% ↑
|
2015年 | 22,055 |
54.83% ↑
|
2014年 | 14,245 |
-24.34% ↓
|
2013年 | 18,828 |
0.7% ↑
|
2012年 | 18,698 |
51.89% ↑
|
2011年 | 12,310 |
10.5% ↑
|
2010年 | 11,140 |
-10.88% ↓
|
2009年 | 12,500 |
-10.71% ↓
|
2008年 | 14,000 |
-6.67% ↓
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2007年 | 15,000 |
-11.76% ↓
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2006年 | 17,000 |
-5.56% ↓
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2005年 | 18,000 |
-18.18% ↓
|
2004年 | 22,000 |
12.61% ↑
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2003年 | 19,537 |
-59.3% ↓
|
2002年 | 48,000 |
-38.31% ↓
|
2001年 | 77,808 |
41.47% ↑
|
2000年 | 55,000 |
83.33% ↑
|
1999年 | 30,000 |
114.29% ↑
|
1998年 | 14,000 |
366.67% ↑
|
1997年 | 3,000 |
42.86% ↑
|
1996年 | 2,100 | - |
1995年 | 2,100 |
-30% ↓
|
1994年 | 3,000 |
-28.57% ↓
|
1993年 | 4,200 |
-35.76% ↓
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1992年 | 6,538 | - |
ボスニア・ヘルツェゴビナのスイカ生産量推移を見ると、1992年から1996年に掛けては、約2,000~6,000トン程度と比較的低い水準に止まっていました。この時期はボスニア紛争の影響により農業全般が混乱し、多くの耕作地が荒廃状態となり、農作物の生産が著しく制限されたことが主な要因と考えられます。
その後、国際支援や農業復興政策が進む中、1998年には14,000トン、1999年には30,000トンと急速な回復を見せ、2001年には過去最高の77,808トンに達しました。この上昇は、戦後復興と国際市場向けの農産物生産の強化が背景にあります。しかし2002年以降、大幅な減少が見られ2003年には19,537トンまで縮小しています。この減少には、気候変動による作物環境の変化や市場競争の激化が影響した可能性が高いです。
その後2006年から2011年の期間では、年間約11,000~15,000トンと比較的安定した流れが続きましたが、2012年以降は一時的な回復期に入り、22,000トン前後を基準とする安定的な水準を維持していました。しかし2022年に突如、11,357トンと大幅に下落しました。この年の減少は、異常気象による干ばつや豪雨、さらに世界的な物流問題の影響で輸入資材や市場アクセスが制限されたことが一因と考えられます。2023年には19,935トンと回復傾向にありますが、完全回復には至っていない状況です。
他国との比較を見てみると、ボスニア・ヘルツェゴビナのスイカ生産量は近隣諸国のクロアチアやセルビアと比べて規模が小さく、同地域での競争力向上は重要な課題となっています。一方で、日本を含むアジア諸国では高い品質基準やプレミアム市場向けのスイカの生産が主流であり、これを念頭においた産業改革も考える必要があります。
ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるスイカ生産にはいくつかの課題があります。一つ目は気候変動の影響で、生産が不安定になりやすい点です。二つ目はインフラの老朽化や輸送効率の低下が、市場輸出競争力を低下させている点です。また、地政学的リスクも無視できません。例えば、この地域特有の政治的対立や経済基盤の脆弱さは、農業含むあらゆる経済活動に影響を及ぼす可能性があります。
具体的な提言として、まず第一に、干ばつや洪水への対策強化が急務です。灌漑設備の整備や気象データ解析を活用した農業支援システムの導入が考えられます。次に、国内市場の活性化を図ると同時に、輸出市場の多様化を進め、より広範囲の市場ニーズに対応できるようにするべきです。さらに、農業人材の育成や若者の農業従事を促す施策、また食品加工分野への投資促進による付加価値向上も長期的な視点で重要です。
今後、世界的な食料需給の変化を視野に入れながら、持続可能な農業モデルを構築することが求められます。農業技術の支援、地域間協力の強化、気候変動への適応策の整備などに注力すれば、ボスニア・ヘルツェゴビナのスイカ生産の持続的発展が期待されます。