国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年7月の最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのアーモンド生産量は、過去数十年間にわたり大きな変動を示しています。最も高い生産量は1994年の219トンで、最も低い生産量は2022年の18トンです。2023年においては36トンとわずかに回復していますが、長期的な減少傾向の中にあります。この推移は、地政学的背景、気候変動、農業基盤の限界など、さまざまな要因による影響と関連している可能性があります。
ボスニア・ヘルツェゴビナのアーモンド生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 36 |
100% ↑
|
2022年 | 18 |
-76% ↓
|
2021年 | 75 |
-6.25% ↓
|
2020年 | 80 |
-4.76% ↓
|
2019年 | 84 |
-1.18% ↓
|
2018年 | 85 |
80.47% ↑
|
2017年 | 47 |
-20.17% ↓
|
2016年 | 59 | - |
2015年 | 59 |
7.27% ↑
|
2014年 | 55 |
12.24% ↑
|
2013年 | 49 | - |
2012年 | 49 |
-43.02% ↓
|
2011年 | 86 |
7.5% ↑
|
2010年 | 80 |
63.27% ↑
|
2009年 | 49 |
2.08% ↑
|
2008年 | 48 |
-12.73% ↓
|
2007年 | 55 |
-3.51% ↓
|
2006年 | 57 |
-30.51% ↓
|
2005年 | 82 |
-4.15% ↓
|
2004年 | 86 |
33.72% ↑
|
2003年 | 64 |
-13.51% ↓
|
2002年 | 74 |
12.12% ↑
|
2001年 | 66 |
-7.04% ↓
|
2000年 | 71 |
1.43% ↑
|
1999年 | 70 |
-2.78% ↓
|
1998年 | 72 |
-10% ↓
|
1997年 | 80 |
-33.33% ↓
|
1996年 | 120 |
-41.08% ↓
|
1995年 | 204 |
-7.06% ↓
|
1994年 | 219 |
56.54% ↑
|
1993年 | 140 |
-30% ↓
|
1992年 | 200 | - |
ボスニア・ヘルツェゴビナのアーモンド生産は、1990年代初頭の200トンを超える水準から、2020年代にかけて継続的な減少傾向を示してきました。データを見てみると、特に1997年から1999年にかけて80トンを下回り、以降の20年間、年間100トンを超える生産量には達していません。2022年にはわずか18トンと、歴史的に最低水準を記録し、2023年でも36トンに留まっています。
このような生産量の推移に最も大きく影響を与えた要因の一つは、ボスニア・ヘルツェゴビナが1990年代に経験した内戦とその後の復興の遅れです。同国の農業インフラが破壊されたことにより、アーモンド生産を含む農業全般が重大な被害を受けました。植物の栽培に必要な技術が十分に維持されなかったこと、さらにはその後のインフラ整備や資金不足による農地の減少が、長期的な生産の停滞につながったと考えられます。
また、近年は気候変動の影響も顕著になっています。アーモンドは乾燥した温暖な気候を必要とする作物ですが、極端な温度変化や不安定な降水パターンがボスニア・ヘルツェゴビナにおけるアーモンド栽培に向かない条件を生み出しています。特に、2022年18トンという最低生産量を記録した背景には、異常気象による収穫の失敗があった可能性があります。
さらに考慮すべきは、アーモンド市場で競争力を維持するためには、機械化や灌漑技術の導入が不可欠である点です。他国と比較してみると、たとえばアメリカは世界最大のアーモンド生産国であり、年間生産量は200万トンを超えています(2023年推定)。これはカリフォルニア州における高度な農業技術、広い農地、安定した気候条件に依存しています。同様に、スペインやイタリア、オーストラリアもアーモンドの主要生産国ですが、いずれも灌漑技術や気候条件を最大限に活用し、持続可能な生産を可能にしています。一方、ボスニア・ヘルツェゴビナでは技術投資が十分でないため、国際市場での競争力は限定的となっています。
将来への課題としては、まず灌漑と気候変動に対応する生産技術の導入が挙げられます。限られた予算を有効に活用し、国内外の専門知識を集めることが求められます。また、政府の農業政策として、特定の作物の優遇だけでなく、伝統農業の回復と近代化をバランスよく進める必要があります。そして、地域間での協力も欠かせません。環境に対応したアーモンド品種の導入や、隣国と共同でアーモンド栽培技術を共有する取り組みは、収量の底上げに寄与する可能性があります。
紛争や気候変動などの地政学的リスクが今後もアーモンド生産に影響を及ぼす可能性があるため、国際機関や地域協力の枠組みを通じて支援を強化することが重要です。欧州連合(EU)からの技術支援や、国際連合の農業プロジェクトとの協力は、これらの課題解決を加速させる手段となり得ます。
結論として、ボスニア・ヘルツェゴビナのアーモンド生産量が将来的に有望な産業となる可能性を秘めていることは事実ですが、その実現には多方面からの取り組みが必要不可欠です。気候変動への適応、技術投資、国際的な支援体制の強化を通じて、安定した農業基盤を構築することが求められます。