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ボスニア・ヘルツェゴビナの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

ボスニア・ヘルツェゴビナの桃(モモ)・ネクタリンの生産量は、過去30年以上にわたり変動を繰り返してきました。戦争などの地政学的要因で1990年代には低迷しましたが、2000年代以降急速に回復を示しました。2022年には30,075トンに達し、翌2023年にはさらに34,626トンと大幅な増加を記録しています。これにより、同国は西バルカン地域における主要な果実生産国としての地位を急速に高めていることが分かります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 34,626
15.13% ↑
2022年 30,075
383.44% ↑
2021年 6,221
-2.98% ↓
2020年 6,412
-39.57% ↓
2019年 10,610
12.53% ↑
2018年 9,429
72.31% ↑
2017年 5,472
-29.18% ↓
2016年 7,727
-16.27% ↓
2015年 9,228
5.31% ↑
2014年 8,763
5.24% ↑
2013年 8,327
8.06% ↑
2012年 7,706
-11.61% ↓
2011年 8,718
0.13% ↑
2010年 8,707
-1.86% ↓
2009年 8,872
6.7% ↑
2008年 8,315
11.73% ↑
2007年 7,442
2.8% ↑
2006年 7,239
28.35% ↑
2005年 5,640
31.93% ↑
2004年 4,275
73.78% ↑
2003年 2,460
-46.24% ↓
2002年 4,576
22.88% ↑
2001年 3,724
4.9% ↑
2000年 3,550
17.24% ↑
1999年 3,028
49.09% ↑
1998年 2,031
74.48% ↑
1997年 1,164
-22.4% ↓
1996年 1,500
-16.67% ↓
1995年 1,800
-23.26% ↓
1994年 2,346
17.28% ↑
1993年 2,000
-33.33% ↓
1992年 3,000 -

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表する最新データによれば、ボスニア・ヘルツェゴビナの桃(モモ)とネクタリンの生産量は、1990年代から2023年にかけて非常にダイナミックな推移を見せています。同国は1990年代初頭、旧ユーゴスラビア紛争の影響を大きく受け、生産量は1992年の3,000トンをピークに1997年には1,164トンと半減以下となりました。この時期は、農業インフラの崩壊や農地の荒廃、人材の喪失が顕著であったと考えられます。

しかし2000年代に入ると生産量が大幅に回復し、安定的な成長軌道を描いています。経済再建の一環として農業分野への投資が進んだことや、国際機関の技術支援により、2006年には生産量が7,000トンを上回るまでに復興しました。2009年から2015年にかけて、8,000トン台を堅持した後、2018年には9,429トンとなり、全体として増加傾向が見られます。

注目すべきは、2022年と2023年の劇的な増加です。特に2023年は34,626トンと、これまでの記録を大幅に更新しています。この急増の背景には、気候条件の好転や農業技術の向上、また政府や国際機関による輸出促進政策があると考えられます。また、EU市場へのアクセスが改善し、地域内での市場競争力が増したことも貢献した可能性があります。一方で、このような急増が一時的なものではなく持続可能であるかどうかは、今後の政策や気候リスクに大きく依存するといえます。

ボスニア・ヘルツェゴビナの生産現場にはいくつかの課題も残されています。第一に、気候変動の影響が今後の生産に与えるリスクです。2020年から2021年にかけての生産量減少(6,000トン台)は、異常気象や干ばつなどの自然災害が影響したとも指摘されています。第二に、農業インフラの脆弱性です。特に灌漑設備や農業用の道路網が近代化されておらず、一部地域では輸送コストが高いために収益性が低下しています。さらに、熟練労働者の国外流出も大きな問題として挙げられます。

これらの課題を解決するため、いくつかの具体的な提案が必要です。まず、気候変動への対応として耐候性の高い果樹品種の研究や導入、また灌漑施設の整備が推奨されます。これにより、干ばつや異常気象への耐性を高め、生産量の安定化が期待できます。また、農業従事者の技術力向上のための教育プログラムや、若年層を農業に引き込むための支援政策が必要です。さらに、国際市場での競争力を高めるため、品質管理やブランド戦略を強化し、輸出ルートの多角化を図ることが重要です。

地政学的視点から見ても、ボスニア・ヘルツェゴビナが桃やネクタリンの生産量を維持・拡大することには戦略的意義があります。EU市場への信頼供給を続けることは、同国の経済的な安定化につながるだけでなく、地域的な連携や国際的な競争力の強化にも寄与します。そのため、国際機関との連携を深めつつ、長期的な視野で農業政策を設計することが求められます。

総じて、ボスニア・ヘルツェゴビナの桃・ネクタリン産業は希望に満ちた成長分野といえますが、継続的な努力と戦略的な対応が不可欠です。この分野の発展は、単なる経済効果を超え、地域全体の安定化に寄与する重要な役割を果たす可能性を秘めています。