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ボスニア・ヘルツェゴビナの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナの羊飼養数は1992年の760,000匹から1995年まで大きく減少し、その後は回復傾向を見せつつも安定を繰り返してきました。2006年以降には100万匹を超える水準で推移していますが、2022年に再び100万匹を下回るという変化が見受けられます。これらの変化には社会的や地政学的要因が深く関与していると考えられます。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 1,003,559
0.65% ↑
2022年 997,046
-3.2% ↓
2021年 1,029,966
1.53% ↑
2020年 1,014,427
0.18% ↑
2019年 1,012,648
0.01% ↑
2018年 1,012,546
-0.41% ↓
2017年 1,016,735
0.11% ↑
2016年 1,015,576
-0.46% ↓
2015年 1,020,230
-0.47% ↓
2014年 1,025,000
0.51% ↑
2013年 1,019,782
1.52% ↑
2012年 1,004,494
-1.59% ↓
2011年 1,020,690
-2.42% ↓
2010年 1,046,035
-0.82% ↓
2009年 1,054,689
2.35% ↑
2008年 1,030,510
-0.27% ↓
2007年 1,033,264
2.84% ↑
2006年 1,004,696
11.3% ↑
2005年 902,731
1.1% ↑
2004年 892,941
21.82% ↑
2003年 733,000
15.8% ↑
2002年 633,000
4.11% ↑
2001年 608,000
4.11% ↑
2000年 584,000
-4.26% ↓
1999年 610,000
10.31% ↑
1998年 553,000
7.17% ↑
1997年 516,000
11.45% ↑
1996年 463,000
-5.51% ↓
1995年 490,000
-10.91% ↓
1994年 550,000
-15.38% ↓
1993年 650,000
-14.47% ↓
1992年 760,000 -

ボスニア・ヘルツェゴビナの羊飼養数の推移データを詳しく見ると、1990年代の前半に大幅な減少が確認されます。1992年の760,000匹から1995年までに490,000匹にまで下落しています。この背景として、1992年から1995年にかけて同国が経験したボスニア紛争が大きな要因と考えられます。この期間、国土の荒廃、生活基盤の崩壊、農村部の生産能力への打撃は深刻であり、畜産業も大きな被害を受けました。このように戦争は人口動態や農業生産動態に直接的な影響を与え、地方経済に負のスパイラルを引き起こしました。

紛争終了後の1996年以降、羊飼養数は徐々に回復を見せています。1997年に516,000匹、1999年には610,000匹と増加傾向にありますが、この回復が顕著に確認されるのは2003年以降です。具体的には、2004年には892,941匹、2006年には1,004,696匹となり、100万匹を突破しました。この上昇は、紛争終結後の復興プロセスと、農業を再建するための国内外からの支援が影響していると推測されます。特に羊は食肉、乳製品の生産、羊毛供給に加え、不安定な経済状況下でも比較的安定した収益源を提供するため、当時の農村地域において重要な役割を果たしていたと考えられます。

その後、羊の飼養数は概ね安定し、2010年以降は年間約100万匹前後で推移しています。ただ、2022年には羊飼養数が再び100万匹を下回り、997,046匹となっています。この減少には、農村部における持続的な人口減少、若い世代の都市流出、地域的な気候変動の影響が挙げられます。移民や都市化の進行によって畜産業が労働力不足に直面していることが背景にあると考えられます。また、近年の気候変動による干ばつや洪水が牧草地に悪影響を及ぼし、飼料生産の困難さを増している可能性があります。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミックの影響も無視できません。2020年から発生した感染拡大による経済的停滞が小規模な牧畜業者に打撃を与えた可能性があります。また、国際的な物流の混乱や輸出入の制限が、羊関連製品の市場価格に影響を及ぼし、飼養数増加の妨げになったことも考えられます。

このような状況を踏まえ、ボスニア・ヘルツェゴビナが今後取り組むべき課題として、まず畜産業の持続可能性を高めるための包括的な政策の強化が挙げられます。具体的には、農村地域での若い世代への支援強化、牧畜業の魅力を高める教育キャンペーンの実施、牧草地や飼料供給インフラへの投資が求められます。気候変動に対応する農業技術の導入も重要であり、より耐寒性・耐乾性の高い牧草品種の普及が急務です。

また、国際的な協力の枠組みの中で、隣国や欧州連合(EU)と連携し、羊肉や乳製品の輸出マーケットを拡大する政策を推進することも効果的でしょう。このような取り組みは国内経済に好影響を与えるだけでなく、外貨獲得にも繋がります。

ボスニア・ヘルツェゴビナの羊飼養数の変遷は、同国の社会経済や国際的な情勢との密接な関連を示しており、持続可能な将来のためには包括的な対策が必要です。国際的な支援を活用しつつ国内的な取り組みを進めることで、農村経済の活性化と生産力強化が期待されます。