ボスニア・ヘルツェゴビナのテンサイ(甜菜)生産量推移データによると、生産量は1990年代の内戦の影響で急激に低下しました。その後、2000年代以降は低水準で推移し、2012年からわずかながら回復し始めました。2022年には2,122トンと過去30年で最高値を記録しましたが、2023年には686トンと再び大幅な減少が見られました。地政学的要因や気候変動の影響、技術的課題が背景にあると考えられます。
ボスニア・ヘルツェゴビナのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 686 |
-67.67% ↓
|
2022年 | 2,122 |
14.68% ↑
|
2021年 | 1,850 |
18.52% ↑
|
2020年 | 1,561 |
19.16% ↑
|
2019年 | 1,310 |
27% ↑
|
2018年 | 1,031 |
5.73% ↑
|
2017年 | 975 |
-2.37% ↓
|
2016年 | 999 |
-1.04% ↓
|
2015年 | 1,010 |
0.97% ↑
|
2014年 | 1,000 | - |
2013年 | 1,000 | - |
2012年 | 1,000 |
87.36% ↑
|
2011年 | 534 |
54.57% ↑
|
2010年 | 345 |
92.08% ↑
|
2009年 | 180 |
399.36% ↑
|
2008年 | 36 |
-58.29% ↓
|
2007年 | 86 |
146.6% ↑
|
2006年 | 35 |
-93.02% ↓
|
2003年 | 501 |
-54.94% ↓
|
2002年 | 1,112 |
-37.55% ↓
|
2001年 | 1,781 |
-24.38% ↓
|
2000年 | 2,356 |
-13.26% ↓
|
1999年 | 2,716 |
-5.17% ↓
|
1998年 | 2,864 |
377.34% ↑
|
1996年 | 600 |
-98.57% ↓
|
1995年 | 42,000 |
-44.19% ↓
|
1994年 | 75,261 |
-29.75% ↓
|
1993年 | 107,127 |
-20.59% ↓
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1992年 | 134,903 | - |
国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ボスニア・ヘルツェゴビナのテンサイ(甜菜)の生産量は過去30年間において非常に変動の大きい推移を示しています。1990年代前半から中盤にかけての内戦の影響により、農業生産基盤が大きく破壊されたことが、テンサイ生産量の急減の主な原因とされます。例えば、1992年には134,903トンの生産量がありましたが、1996年には600トンまで激減しました。この間、多くの農地が荒廃し、労働力の喪失やインフラの破壊なども農業生産に大きな影響を与えました。
その後も2000年代において生産量は低迷しており、2006年には35トンという極めて低い数値を記録しました。しかし、2012年以降はわずかながら改善が見られ、2022年には2,122トンに達しました。これは国内の農業政策の改善や、EUを中心とした国際的な技術支援が寄与した可能性があります。ただし、2023年には686トンまで減少しており、回復基調にあった流れが逆転した年となりました。この急落については、気候変動による不安定な天候条件や、農業資材価格の高騰、その他の経済的・地政学的影響が関係している可能性が考えられます。
地域的な観点から見ると、ボスニア・ヘルツェゴビナは農業を重要な経済基盤とする一方で、近隣諸国や欧州全体と比較すると、農業技術の普及が徐々に遅れていることが課題として挙げられます。また、近年は気候変動による影響が世界各地で農作物の収穫量に影響を与えており、この地域もその例外ではありません。テンサイは砂糖の原料として重要な作物であるため、その生産が減少することは国内のみならず、地域的な砂糖供給全体にも影響を及ぼす可能性があります。
現状への対策としては、まず農業分野における技術革新とインフラの整備が急務です。例えば、灌漑設備の近代化や気候変動に強い作物品種の導入が挙げられます。また、農業従事者への教育や技術訓練を強化することで、より効率的な生産が期待できるでしょう。さらに、国際協力を通じた金融支援や、EUからの農業補助金の効果的な利用も重要です。これに加えて、気候変動対策として国際的な枠組みに参加し、次世代の農業モデルを構築する必要があります。
最後に、2023年に見られた生産量の急減を受けて、今後の政策では農業生産量の安定化が重要な課題となります。国内の農業におけるリスクを軽減するためにも、データ解析による気候変動影響の予測や、災害対策の強化が求められます。中長期的には、地域内外での経済連携の強化や輸出の多角化によって農業全般への収益性を高めることも、国全体の経済基盤を強化する上で重要な要素となるでしょう。