FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した1970年度の羊の毛生産量ランキングによると、1位はオーストラリア(925,800トン)、2位はニュージーランド(333,900トン)、3位はアルゼンチン(170,000トン)が占めており、オセアニア諸国が他地域に大きな差をつけています。これらの国々は、羊毛の大量生産地としての地位を確立しており、特にオーストラリアは2位以下を大きく引き離しています。上位5か国には南アフリカ、中国も含まれ、これらの国々の生産量を合わせると世界全体の羊毛生産の大半を占めています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 925,800 |
| 2 |
|
オセアニア | 333,900 |
| 3 |
|
南アメリカ | 170,000 |
| 4 |
|
アフリカ | 151,500 |
| 5 |
|
アジア | 118,000 |
| 6 |
|
北アメリカ | 85,017 |
| 7 |
|
南アメリカ | 79,647 |
| 8 |
|
アジア | 47,150 |
| 9 |
|
ヨーロッパ | 46,300 |
| 10 |
|
アジア | 38,000 |
| 11 |
|
アジア | 36,000 |
| 12 |
|
南アメリカ | 31,713 |
| 13 |
|
ヨーロッパ | 29,725 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 28,800 |
| 15 |
|
ヨーロッパ | 26,807 |
| 16 |
|
アジア | 26,000 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 20,346 |
| 18 |
|
南アメリカ | 20,200 |
| 19 |
|
アジア | 19,500 |
| 20 |
|
アジア | 19,000 |
| 21 |
|
アジア | 15,850 |
| 22 |
|
アフリカ | 15,500 |
| 23 |
|
アジア | 14,000 |
| 24 |
|
南アメリカ | 13,121 |
| 25 |
|
アフリカ | 12,500 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 12,105 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 11,700 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 10,193 |
| 29 |
|
アジア | 9,981 |
| 30 |
|
ヨーロッパ | 9,776 |
| 31 |
|
ヨーロッパ | 9,725 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 8,939 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 7,988 |
| 34 |
|
南アメリカ | 7,066 |
| 35 |
|
南アメリカ | 6,787 |
| 36 |
|
アフリカ | 5,500 |
| 37 |
|
アフリカ | 4,600 |
| 38 |
|
ヨーロッパ | 4,474 |
| 39 |
|
アフリカ | 4,110 |
| 40 |
|
アフリカ | 3,400 |
| 41 |
|
アフリカ | 3,074 |
| 42 |
|
アフリカ | 2,850 |
| 43 |
|
アジア | 2,600 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 2,352 |
| 45 |
|
アジア | 2,345 |
| 46 |
|
アフリカ | 2,200 |
| 47 |
|
アフリカ | 1,620 |
| 48 |
|
アジア | 1,513 |
| 49 |
|
北アメリカ | 1,483 |
| 50 |
|
南アメリカ | 1,400 |
| 51 |
|
アジア | 1,400 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 1,327 |
| 53 |
|
ヨーロッパ | 1,100 |
| 54 |
|
南アメリカ | 1,088 |
| 55 |
|
アジア | 900 |
| 56 |
|
アジア | 704 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 540 |
| 58 |
|
アジア | 520 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 510 |
| 60 |
|
アジア | 400 |
| 61 |
|
南アメリカ | 332 |
| 62 |
|
ヨーロッパ | 305 |
| 63 |
|
アフリカ | 300 |
| 64 |
|
アジア | 210 |
| 65 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
アジア | 183 |
| 68 |
|
アジア | 39 |
| 69 |
|
アジア | 34 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 23 |
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1970年度の羊毛生産量データを分析すると、世界規模で見る羊毛産業の構造がいくつか明確になります。特に注目すべき点は、上位2か国であるオーストラリアとニュージーランドが、全体の生産量ランキングで圧倒的な存在感を示していることです。オーストラリアだけで925,800トンを生産しており、この量は2位から10位までを合計した数に近い規模です。乾燥した気候と広大な草地は、羊の飼育に適しており、特にメリノ種の羊毛が高く評価されています。
2位のニュージーランドは、333,900トンを生産しており、オーストラリアとは差があるものの、これも世界市場において主要な供給源の一つです。この事実は、オセアニア地域が当時の羊毛産業において中心であることを示しています。一方、アルゼンチン(170,000トン)や南アフリカ(151,500トン)といった他の上位国は地理的に分散しており、それぞれの地域における羊毛生産が一定の役割を果たしていたと言えます。中国は118,000トン生産しており、現在の地位と比較すると、当時はまだ中規模な生産国であったことがわかります。
これ以降の順位には、アメリカ合衆国(85,017トン)、ウルグアイ(79,647トン)、イギリス(46,300トン)、トルコ(47,150トン)などが続きます。これらの国々はいずれも特徴的な地理と牧畜条件を持つものの、オーストラリアやニュージーランドと比較して気候的条件が必ずしも最適でない地域が多いため、生産量では差が出ています。しかし、特にウルグアイに関しては、規模は中規模ながらも、質の高い羊毛を産出する市場とされており、業界で注目を集めています。
1970年当時、羊毛は衣料品、特に冬用の衣装や高級織物用として重要な素材でした。しかし、化学繊維の普及が進みつつある時代でもあり、生産量の変動にはこうした代替材料の影響が及んだと考えられます。地域的に見ると、アジアや南米などの発展途上国では、産業インフラが未発達であったこともあり、生産量は比較的小規模に留まっています。
一方では、地政学的な要因も羊毛市場に影響を与えました。例えば、南アフリカは豊富な自然資源を活用した一方で、当時行われたアパルトヘイト政策により国際経済から孤立しており、このことが輸出や生産への影響を及ぼしました。また、羊毛を輸出に依存する国々にとって、国際市場価格の変動や貿易政策が重要なリスクファクターとなっていました。
将来を考えると、当時のデータからいくつかの課題が浮かび上がります。まず、気候変動による影響です。羊毛生産には適した天候と広大な牧草地が求められるため、異常気象や土地の過剰利用により生産が制約されるリスクがあります。特にオーストラリアのような主要生産国にとって、この問題への対応が重要となります。次に、化学繊維との競争です。この時代からすでに化学繊維が市場に浸透し始めており、質の良い羊毛を求める高級市場を確保する戦略が求められます。
具体的な対策として、牧草地の持続的な管理や、高品質羊毛の認証制度の導入が考えられます。また、国際的な市場価格の安定化を目指し、生産国同士が協力して市場監視や調整のための枠組みづくりを進めることが重要です。さらに、消費者に向けて羊毛の持つ自然素材としての魅力を訴える広報活動も効果的です。
結論として、1970年度の羊毛生産量データは、当時の世界の経済事情や産業構造、地域間の課題を明確に示しています。このデータを基に、現在および将来の持続可能な羊毛産業を構築するためには、技術革新と国際的な協力が鍵を握っていると言えます。引き続き、地域特性を活かしながら、環境保護と経済利益のバランスを実現する取り組みが必要です。