国際連合食糧農業機関(FAO)の1988年度のデータによると、羊の毛生産量が最も多かったのはオーストラリアで、約91万5400トンを記録しました。これに続くニュージーランドは約34万6000トン、中国は約22万1737トンと、それぞれ上位3位にランクインしています。これらの3カ国だけで、世界の羊毛生産量の大半を占めています。日本はランク外で、羊毛の輸入依存国となっています。ランキングからは、生産量の地域的な偏りや、将来の羊毛需要を満たすための課題などが浮き彫りになります。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 915,400 |
| 2 |
|
オセアニア | 346,000 |
| 3 |
|
アジア | 221,737 |
| 4 |
|
南アメリカ | 145,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 90,900 |
| 6 |
|
南アメリカ | 88,935 |
| 7 |
|
アジア | 72,897 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 66,832 |
| 9 |
|
アジア | 44,678 |
| 10 |
|
アジア | 40,800 |
| 11 |
|
アジア | 40,700 |
| 12 |
|
北アメリカ | 40,588 |
| 13 |
|
ヨーロッパ | 37,911 |
| 14 |
|
アフリカ | 34,000 |
| 15 |
|
南アメリカ | 31,050 |
| 16 |
|
ヨーロッパ | 30,654 |
| 17 |
|
アジア | 29,376 |
| 18 |
|
ヨーロッパ | 27,453 |
| 19 |
|
アフリカ | 25,000 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 23,200 |
| 21 |
|
ヨーロッパ | 23,000 |
| 22 |
|
南アメリカ | 19,600 |
| 23 |
|
アジア | 18,700 |
| 24 |
|
アジア | 17,475 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 16,406 |
| 26 |
|
アジア | 15,940 |
| 27 |
|
アジア | 14,000 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 13,600 |
| 29 |
|
ヨーロッパ | 13,000 |
| 30 |
|
南アメリカ | 11,400 |
| 31 |
|
アフリカ | 11,400 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 9,631 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 9,593 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 8,870 |
| 35 |
|
南アメリカ | 7,505 |
| 36 |
|
アフリカ | 6,750 |
| 37 |
|
南アメリカ | 6,415 |
| 38 |
|
アジア | 6,194 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 4,859 |
| 40 |
|
アフリカ | 4,850 |
| 41 |
|
アジア | 3,995 |
| 42 |
|
ヨーロッパ | 3,900 |
| 43 |
|
アフリカ | 3,500 |
| 44 |
|
アジア | 2,558 |
| 45 |
|
アフリカ | 2,100 |
| 46 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 47 |
|
アフリカ | 1,983 |
| 48 |
|
アフリカ | 1,671 |
| 49 |
|
南アメリカ | 1,600 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 1,500 |
| 51 |
|
アフリカ | 1,340 |
| 52 |
|
北アメリカ | 1,242 |
| 53 |
|
南アメリカ | 1,200 |
| 54 |
|
アジア | 1,000 |
| 55 |
|
アジア | 900 |
| 56 |
|
アジア | 744 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 700 |
| 58 |
|
南アメリカ | 700 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 686 |
| 60 |
|
アジア | 588 |
| 61 |
|
ヨーロッパ | 556 |
| 62 |
|
アジア | 450 |
| 63 |
|
アジア | 407 |
| 64 |
|
アフリカ | 370 |
| 65 |
|
アジア | 313 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
アジア | 150 |
| 68 |
|
ヨーロッパ | 140 |
| 69 |
|
アジア | 49 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 35 |
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1988年時点での世界の羊の毛生産量ランキングを見ると、オーストラリアが他国を大きく引き離しており、羊毛生産の中心的な役割を果たしていることが分かります。オーストラリアは広大な牧草地と適度な気候条件を生かし、高品質な羊毛を安定して供給することが可能な地理的優位性を持っています。また、ニュージーランドが生産量で2位となり、総量としてはオーストラリアには及びませんが、牧畜業の効率性と高付加価値なウール製品の生産で他国と差別化を進めています。
中国が3位に入っていることは注目に値し、国土が広大で多様な気候条件を持つ中国が、この時点ですでに羊毛の主要生産国だったことを示しています。これは、中国が大量生産に適する広大な土地資源を持ちながら、同時に国内需要を満たすための生産体制を整えていたことを反映していると考えられます。一方、中南米やアフリカでもアルゼンチンや南アフリカがそれぞれ4位と5位に位置し、地域ごとの羊毛生産の多様性を示しています。
先進国の中では、イギリスが8位、アメリカが12位、ドイツが20位、フランスが21位にランクインしています。これらの国々では、家畜業が産業構造の中で占める比率が減少している一方で、付加価値の高いニッチ産業として羊毛産業を維持している傾向が見られます。たとえば、イギリスでは高品質な羊毛を使用した伝統的な織物産業が続いており、国の文化や経済にも影響を与えています。
このデータからは地域的な偏りや課題も見えてきます。羊毛生産が特定の国や地域に集中していることで、気候変動や疫病といった外的要因による生産リスクが高くなる可能性があります。オーストラリアやニュージーランドといった生産上位国では、乾燥化や異常気象により牧草地の面積が減少し、生産量が制約を受ける懸念があります。また、多くの先進国が羊毛産業を縮小させている現状は、この素材への依存度を下げる一因となっています。
地政学的背景としては、インドやパキスタンといったアジア圏でも羊毛の需要が高まる一方、紛争や経済的制約が生産規模の拡大を妨げている可能性が考えられます。また、中南米やアフリカへの投資が不十分なことが、これらの地域での生産量の停滞につながっていると考えられます。
未来に向けた具体的な課題と提言としては、まず、主要生産国において気候変動への適応策を進める必要があります。これは、乾燥地域で耐性のある牧草の栽培や資源の効率利用を含みます。また、羊毛生産が低い国々での産業振興を目指すことで、生産の地理的分散化を進めることが求められます。この過程で、国際的な技術移転や金融支援が鍵となるでしょう。そして、羊毛が環境に優しい素材として注目を集めている現状を生かし、市場需要を持続可能な形で誘導していく政策も重要です。
結論として、このデータは、オーストラリアをはじめとする少数の国が羊毛生産をリードする状況を示しており、今後の羊毛需要や気候変動に対応するための長期的な戦略が必要であることを教えてくれます。国際協力や技術革新を通じて、より持続可能で効率的な羊毛供給体制を構築することが、次の世代への重要な課題となるでしょう。