国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した1984年の羊の毛生産量ランキングによると、1位はオーストラリアで約729,000トン、2位はニュージーランドの約363,600トン、3位は中国で約182,776トンでした。これらの3か国が世界の羊毛生産の中心的地位を占めており、全体として羊毛生産が温暖な気候や牧草地が豊富な場所に集中していることがわかります。一方、日本はランキング内には含まれておらず、羊毛生産が国内では主要産業となっていないことが示唆されます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 729,000 |
| 2 |
|
オセアニア | 363,600 |
| 3 |
|
アジア | 182,776 |
| 4 |
|
南アメリカ | 146,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 109,100 |
| 6 |
|
南アメリカ | 81,676 |
| 7 |
|
アジア | 63,864 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 54,126 |
| 9 |
|
アジア | 45,134 |
| 10 |
|
北アメリカ | 43,395 |
| 11 |
|
ヨーロッパ | 42,254 |
| 12 |
|
アジア | 38,000 |
| 13 |
|
アジア | 38,000 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 36,158 |
| 15 |
|
南アメリカ | 29,768 |
| 16 |
|
アジア | 25,268 |
| 17 |
|
アフリカ | 25,000 |
| 18 |
|
ヨーロッパ | 24,175 |
| 19 |
|
アフリカ | 24,000 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 24,000 |
| 21 |
|
南アメリカ | 21,400 |
| 22 |
|
アジア | 19,500 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 19,416 |
| 24 |
|
アジア | 17,500 |
| 25 |
|
アジア | 15,430 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 15,344 |
| 27 |
|
アジア | 14,367 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 12,752 |
| 29 |
|
ヨーロッパ | 12,214 |
| 30 |
|
南アメリカ | 11,000 |
| 31 |
|
アフリカ | 10,000 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 9,331 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 9,100 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 8,500 |
| 35 |
|
アフリカ | 7,500 |
| 36 |
|
アジア | 6,940 |
| 37 |
|
南アメリカ | 6,592 |
| 38 |
|
南アメリカ | 6,291 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 5,102 |
| 40 |
|
アジア | 3,656 |
| 41 |
|
アフリカ | 3,450 |
| 42 |
|
アフリカ | 3,145 |
| 43 |
|
アフリカ | 3,100 |
| 44 |
|
ヨーロッパ | 3,000 |
| 45 |
|
アフリカ | 2,100 |
| 46 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 47 |
|
アフリカ | 1,991 |
| 48 |
|
アジア | 1,870 |
| 49 |
|
南アメリカ | 1,500 |
| 50 |
|
ヨーロッパ | 1,495 |
| 51 |
|
北アメリカ | 1,306 |
| 52 |
|
南アメリカ | 1,000 |
| 53 |
|
アフリカ | 860 |
| 54 |
|
アジア | 800 |
| 55 |
|
アジア | 800 |
| 56 |
|
アジア | 675 |
| 57 |
|
アジア | 660 |
| 58 |
|
ヨーロッパ | 623 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 610 |
| 60 |
|
南アメリカ | 610 |
| 61 |
|
アジア | 600 |
| 62 |
|
ヨーロッパ | 598 |
| 63 |
|
アジア | 440 |
| 64 |
|
アフリカ | 370 |
| 65 |
|
アジア | 316 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
ヨーロッパ | 101 |
| 68 |
|
アジア | 69 |
| 69 |
|
アジア | 44 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 35 |
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1984年時点での世界の羊の毛生産量は国ごとに大きな差があり、特にオーストラリア、ニュージーランド、中国の上位3か国が際立った生産量を記録しています。これらの国々は広大な牧草地と温暖な気候、また羊の飼育ノウハウに長けた産業基盤を有しており、羊毛のグローバル市場における供給元として圧倒的な存在感を示しています。例えば1位のオーストラリアの生産量は729,000トンであり、2位のニュージーランドの約2倍以上、3位の中国に至っては約4倍近い差をつけています。このことから、オーストラリアがいかに羊毛生産において優位なポジションを占めているかがわかります。
さらに、南半球の国々がランキングで高い順位を占めていることも注目すべき点です。アルゼンチンや南アフリカ、ウルグアイといった国々も高い生産量を記録しており、これらの地域特有の地理的条件や気候が羊毛産業に好影響を与えていると考えられます。一方でヨーロッパ・アジアの国々は総じて生産量が抑えられており、イギリスやフランス、ドイツは高品質な羊毛生産では定評があるものの、総量ベースでは南半球の生産大国には及びません。
地政学的背景として、冷戦下の1984年においては、各国の貿易ネットワークや輸出先も羊毛産業に影響を与える要素でした。例えば当時の東欧諸国、ルーマニアやブルガリアなどは内部市場やソ連圏への輸出を中心としており、羊毛産業が国内消費を満たす役割にとどまっていたことが産出量の低さから窺われます。同様に中東や北アフリカの国々は乾燥地域に位置することから主に商業規模の小さい羊毛生産が見られますが、一部の国では羊を多目的に利用(食肉や乳用)しているため、羊毛に重点が置かれていないと推測されます。
現代的視点から見た場合、羊毛生産がもたらす環境負荷や気候変動への適応が課題として浮かび上がります。例えば、過剰な放牧による土地の荒廃や植生の減少は、持続可能な羊毛産業に向けて取り組むべき問題です。また、上位国における羊毛の国際輸送に伴う炭素排出量も議論の対象となるべきです。このため、将来的には生産地近辺での消費を促進するローカル生産・消費モデルの導入や、羊毛の代替素材の研究開発が課題となるでしょう。
さらに、1984年当時と現在とでは産業そのものの構造や需要分布も大きく変化しています。化学繊維の普及による天然繊維需要の減少や、新しい製造技術による羊毛産業の効率化など、世界市場の変化に対して羊毛生産国はどのように適応していくかが問われます。そのため、上位国を中心に持続可能な牧羊技術や効率的な生産・流通モデルの開発を進めるべきです。
1984年データは当時の羊毛産業における地理的・産業的特徴を明らかにしていますが、これを参考に現代および未来の課題解決や政策の策定、国際協力の進展に役立てることは重要となります。特に各国間の技術共有や資金面での支援、さらには新しい環境規制に基づくエコフレンドリーな産業環境の整備が求められます。エネルギー消費の少ない生産プロセスや二酸化炭素削減技術の導入により、羊毛産業の地球規模での持続可能性が確保されるでしょう。