国際連合食糧農業機関が発表した1983年の羊の毛生産データによると、世界最大の生産国はオーストラリアで、その生産量は701,738トンに達しました。2位にはニュージーランド(371,000トン)、3位は中国(194,000トン)が続きました。この上位3か国だけで、世界全体の羊の毛生産量の過半数を占めており、生産の地理的な集中が特徴的です。一方で、日本は羊毛産業における存在感が非常に低く、このランキングには登場しません。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 701,738 |
| 2 |
|
オセアニア | 371,000 |
| 3 |
|
アジア | 194,000 |
| 4 |
|
南アメリカ | 135,359 |
| 5 |
|
アフリカ | 112,800 |
| 6 |
|
南アメリカ | 82,000 |
| 7 |
|
アジア | 62,260 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 53,677 |
| 9 |
|
北アメリカ | 46,670 |
| 10 |
|
アジア | 42,700 |
| 11 |
|
ヨーロッパ | 39,352 |
| 12 |
|
アジア | 36,100 |
| 13 |
|
アジア | 36,000 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 35,935 |
| 15 |
|
南アメリカ | 30,563 |
| 16 |
|
アジア | 27,840 |
| 17 |
|
アフリカ | 25,000 |
| 18 |
|
ヨーロッパ | 23,755 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 22,500 |
| 20 |
|
南アメリカ | 21,400 |
| 21 |
|
アジア | 20,200 |
| 22 |
|
アジア | 20,000 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 16,137 |
| 24 |
|
アジア | 16,095 |
| 25 |
|
アフリカ | 16,000 |
| 26 |
|
アジア | 14,094 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 13,213 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 12,725 |
| 29 |
|
ヨーロッパ | 12,720 |
| 30 |
|
南アメリカ | 11,400 |
| 31 |
|
アフリカ | 10,000 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 9,500 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 9,286 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 8,917 |
| 35 |
|
アフリカ | 7,800 |
| 36 |
|
南アメリカ | 7,500 |
| 37 |
|
アジア | 6,949 |
| 38 |
|
南アメリカ | 6,415 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 5,489 |
| 40 |
|
アフリカ | 3,900 |
| 41 |
|
アフリカ | 3,800 |
| 42 |
|
アジア | 3,591 |
| 43 |
|
ヨーロッパ | 3,146 |
| 44 |
|
アフリカ | 2,934 |
| 45 |
|
アフリカ | 2,500 |
| 46 |
|
アフリカ | 2,200 |
| 47 |
|
アジア | 2,140 |
| 48 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 49 |
|
ヨーロッパ | 1,533 |
| 50 |
|
南アメリカ | 1,500 |
| 51 |
|
北アメリカ | 1,352 |
| 52 |
|
南アメリカ | 1,300 |
| 53 |
|
アジア | 900 |
| 54 |
|
アフリカ | 800 |
| 55 |
|
アジア | 750 |
| 56 |
|
アジア | 650 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 619 |
| 58 |
|
南アメリカ | 605 |
| 59 |
|
ヨーロッパ | 603 |
| 60 |
|
アジア | 600 |
| 61 |
|
ヨーロッパ | 580 |
| 62 |
|
アジア | 501 |
| 63 |
|
アジア | 425 |
| 64 |
|
アフリカ | 370 |
| 65 |
|
アジア | 291 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
ヨーロッパ | 102 |
| 68 |
|
アジア | 60 |
| 69 |
|
アジア | 44 |
| 70 |
|
ヨーロッパ | 35 |
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1983年の羊の毛生産ランキングに基づくと、最大の生産国であるオーストラリアは、世界全体の羊毛市場を牽引する重要な役割を果たしていることが明らかです。その総生産量は701,738トンに達し、2位のニュージーランド(371,000トン)を大きく引き離しています。これら2か国はいずれも気候条件や大規模な牧草地の存在など、羊の飼育に適した環境を持つ南半球の代表的な生産地です。また、3位の中国(194,000トン)は、ヨーロッパやアメリカなどへの輸出を重視した羊毛産業を発展させ、近年の国際市場における重要性を増してきました。このランキングからは、地理的条件が羊毛生産に与える影響を読み取ることができます。
さらに、南アメリカからはアルゼンチンを筆頭にウルグアイなど複数の国々がランクインしており、輸出産業として羊毛を重視する姿勢がうかがえます。一方、ヨーロッパからはイギリスが8位(53,677トン)に位置するほか、フランス(22,500トン)やドイツ(16,137トン)などもランキングに名を連ねていますが、その生産量は南半球の大規模生産国と比較すると大きく劣ります。これは、土地の規模や気候などの制約が影響している可能性が高いと考えられます。
日本について言及すると、羊毛産業は国内でほとんど存続しておらず、このランキングでの存在感はゼロに等しい状況です。戦後の産業構造の転換や、より収益性の高い産業への移行が原因とされます。このため、日本は羊毛をほぼ全量輸入に頼っており、特にオーストラリアやニュージーランドからの輸入が中心となっています。
今後に目を向けると、いくつかの課題や潜在的リスクが見えてきます。まず、気候変動は羊を育てる牧草地の減少や質の低下をもたらす可能性が懸念されています。これは特に、オーストラリアやニュージーランドといった主要生産国にとって大きなリスクとなり得ます。一方で、中国などの成長市場では生産体制の効率化や新技術の導入が進んでおり、これが世界の羊毛市場における勢力図を変える可能性もあります。
また、羊毛の国際需要にも変化が生じつつあります。合成繊維の普及やエコ意識の高まりにより、羊毛の市場シェアは以前ほど安定していません。これに対応するため、生産国は品質向上や高級ブランド化など、新たな価値を生み出す方策を講じる必要があると考えられます。
さらに、地政学的リスクも無視できません。輸出国と輸入国間の政治的緊張が羊毛の国際取引を妨げる可能性があります。日本など輸入依存国にとっては、安定した供給網の確保が重要であり、多角的な貿易関係を築くことが求められます。
結果として、1983年のデータは羊毛生産が特定の地域に集中しており、これからの課題や機会が同時に存在していることを示しています。国際社会としては、地球規模の気候変動への対応や貿易関係の安定化、さらなる技術革新を進める取り組みが重要です。特に、日本を含む消費国は、サプライチェーンの透明性を重視しながら、持続可能な生産体制への支援を積極的に行う必要があります。このような包括的なアプローチが、羊毛産業の未来をより安定的にさせる鍵となるでしょう。