国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、1964年度の世界の羊の毛生産量ランキングで1位はオーストラリア(809,500トン)、2位はニュージーランド(282,700トン)、3位はアルゼンチン(192,000トン)と、南半球の国々が上位を占めています。一方、日本は54位(900トン)で、生産量は非常に少ない状況にあります。全世界的には、羊毛の生産は地理的条件や経済環境によって地域ごとに大きなばらつきが見られます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
オセアニア | 809,500 |
| 2 |
|
オセアニア | 282,700 |
| 3 |
|
南アメリカ | 192,000 |
| 4 |
|
アフリカ | 134,200 |
| 5 |
|
北アメリカ | 115,666 |
| 6 |
|
アジア | 98,000 |
| 7 |
|
南アメリカ | 82,733 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 57,500 |
| 9 |
|
アジア | 43,000 |
| 10 |
|
アジア | 34,545 |
| 11 |
|
アジア | 33,400 |
| 12 |
|
ヨーロッパ | 29,618 |
| 13 |
|
南アメリカ | 28,135 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 25,400 |
| 15 |
|
ヨーロッパ | 24,800 |
| 16 |
|
アジア | 24,700 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 24,200 |
| 18 |
|
南アメリカ | 23,100 |
| 19 |
|
アジア | 19,100 |
| 20 |
|
アジア | 17,700 |
| 21 |
|
アジア | 12,700 |
| 22 |
|
アフリカ | 12,000 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 12,000 |
| 24 |
|
ヨーロッパ | 11,605 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 11,600 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 11,400 |
| 27 |
|
アジア | 11,100 |
| 28 |
|
南アメリカ | 11,000 |
| 29 |
|
アジア | 10,950 |
| 30 |
|
ヨーロッパ | 10,400 |
| 31 |
|
ヨーロッパ | 8,258 |
| 32 |
|
南アメリカ | 7,578 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 7,400 |
| 34 |
|
アフリカ | 7,000 |
| 35 |
|
南アメリカ | 6,097 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 4,800 |
| 37 |
|
アフリカ | 4,400 |
| 38 |
|
アフリカ | 4,224 |
| 39 |
|
アフリカ | 3,600 |
| 40 |
|
アフリカ | 3,200 |
| 41 |
|
アジア | 3,036 |
| 42 |
|
ヨーロッパ | 2,800 |
| 43 |
|
アフリカ | 2,750 |
| 44 |
|
アフリカ | 2,554 |
| 45 |
|
北アメリカ | 2,308 |
| 46 |
|
アジア | 2,200 |
| 47 |
|
ヨーロッパ | 2,000 |
| 48 |
|
アフリカ | 1,950 |
| 49 |
|
アジア | 1,925 |
| 50 |
|
アジア | 1,800 |
| 51 |
|
南アメリカ | 1,200 |
| 52 |
|
ヨーロッパ | 1,000 |
| 53 |
|
アジア | 900 |
| 54 |
|
アジア | 900 |
| 55 |
|
南アメリカ | 855 |
| 56 |
|
アフリカ | 780 |
| 57 |
|
ヨーロッパ | 490 |
| 58 |
|
アジア | 460 |
| 59 |
|
アジア | 457 |
| 60 |
|
アフリカ | 400 |
| 61 |
|
ヨーロッパ | 400 |
| 62 |
|
ヨーロッパ | 400 |
| 63 |
|
アジア | 370 |
| 64 |
|
南アメリカ | 280 |
| 65 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 66 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 67 |
|
アジア | 200 |
| 68 |
|
アジア | 134 |
| 69 |
|
アジア | 39 |
| 70 |
|
アジア | 30 |
| 71 |
|
ヨーロッパ | 27 |
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羊の毛は、衣類の生産や産業利用において重要な資源であり、各国の農業経済や地域の自然環境に密接に関係しています。1964年度のデータでは、オーストラリアが圧倒的な規模で1位を占め、ニュージーランドとともに南半球の農業大国としての地位を確立しています。これは、広大で肥沃な牧草地や、羊毛生産に適した温帯気候が影響しており、また両国の農業政策や国際輸出への積極性も寄与しています。
アルゼンチン、南アフリカ、アメリカ合衆国といった他の上位国も、主に豊かな土地資源や現地の農業技術を活かした羊毛生産が特徴です。一方、中国やインドは羊の頭数では世界的にも多いとされていますが、1頭あたりの毛の質や生産効率が課題で、1964年当時の羊毛生産量ランキングでは中位(中国6位、インド11位)にとどまっています。欧州諸国ではイギリス(8位)やルーマニア(15位)などが羊毛生産で一定の成果を上げていますが、他の産業が発展しているため生産量としては控えめになっています。
日本は54位にランクインしていますが、羊毛生産量は900トンと非常に少なく、この背景には日本の地理的条件や国内需要の低さ、他の産業分野への重点投資が影響していると考えられます。気候的に羊の飼育に適した地域が限られているほか、輸入に依存している経済構造も要因となっています。
羊毛の生産は地域ごとに異なる課題を抱えています。例えば、オーストラリアやニュージーランドでは干ばつや過放牧による土地の劣化が懸念されており、土壌改善や水資源管理が必要です。一方、アルゼンチンやウルグアイなどの国々では、生産量をさらに増やすには輸出体制の強化や国内のインフラ整備が重要です。アジアや欧州の中位国においては、効率的な生産体制の確立と、質の向上を伴う選択的な品種改良が課題となっています。日本のように生産量の少ない国では、国内需要を補うための輸入政策や、農業収入を含む持続可能な農業支援が重要とされます。
さらに、地政学的なリスクもこの分野には影響します。例えば、一部の中東・北アフリカ地域(MENA)では、過去の紛争や内戦が産業に影響を与え、羊毛生産・輸出の低迷に繋がっています。また、地球温暖化や異常気象により、放牧地が減少し、生産量が悪化する可能性もあります。
将来的には、各国が互いの取引関係をより強固にするために国際協力を深める必要があります。特に人口増加や都市化に伴い、羊毛製品の需要が拡大することが予想されるため、安定した供給を実現するための国際的な調整が求められます。たとえば、オーストラリアからアジア各国への輸出を促進し、輸送効率を高めるための新たな物流ネットワークの構築などが有効です。
全体として、羊毛産業はさまざまな地理的、経済的背景を反映しており、地域特性を活かしながら各国が強みと弱みを補完し合う仕組みを築く必要があります。このような連携が実現すれば、資源の持続可能な利用と、世界的な経済均衡の実現が期待されます。