Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、クロアチアの牛乳生産量は1992年の708,300トンをピークに1980年代後半から減少傾向が続いています。2007年には859,258トンと一時的な増加を示しましたが、その後再び減少し、2023年には468,000トンとなり、過去30年間で大幅に減少しました。この推移は、農業構造や国内外の市場変化、気候条件、ヨーロッパ連合(EU)加盟後の政策への適応など、さまざまな要因が影響していると考えられます。
クロアチアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 468,000 |
-10.34% ↓
|
2022年 | 522,000 |
-6.45% ↓
|
2021年 | 558,000 |
-6.38% ↓
|
2020年 | 596,000 |
-0.5% ↓
|
2019年 | 599,000 |
-3.07% ↓
|
2018年 | 618,000 |
-4.69% ↓
|
2017年 | 648,400 |
-3.31% ↓
|
2016年 | 670,600 |
-3.43% ↓
|
2015年 | 694,400 |
-2.39% ↓
|
2014年 | 711,400 |
-0.78% ↓
|
2013年 | 717,000 |
-11.43% ↓
|
2012年 | 809,526 |
3.79% ↑
|
2011年 | 780,000 |
1.43% ↑
|
2010年 | 769,000 |
-3.75% ↓
|
2009年 | 799,000 |
-3.23% ↓
|
2008年 | 825,679 |
-3.91% ↓
|
2007年 | 859,258 |
1.24% ↑
|
2006年 | 848,717 |
7.33% ↑
|
2005年 | 790,772 |
15.55% ↑
|
2004年 | 684,379 |
3.3% ↑
|
2003年 | 662,530 |
-4.86% ↓
|
2002年 | 696,360 |
6.34% ↑
|
2001年 | 654,825 |
7.91% ↑
|
2000年 | 606,816 |
-2.49% ↓
|
1999年 | 622,296 |
-1.94% ↓
|
1998年 | 634,587 |
2% ↑
|
1997年 | 622,158 |
0.07% ↑
|
1996年 | 621,693 |
4.69% ↑
|
1995年 | 593,856 |
-1.03% ↓
|
1994年 | 600,040 |
-3.33% ↓
|
1993年 | 620,700 |
-12.37% ↓
|
1992年 | 708,300 | - |
クロアチアの牛乳生産量の推移は、国内の農業や経済全体の変化に密接に関連しています。1992年の708,300トンから2023年の468,000トンへと大幅に減少したことは、単なる一時的な傾向ではなく、長期的な構造変化を示唆します。この変化について、いくつかの視点から検討する必要があります。
まず、ヨーロッパ連合への加盟(2013年)後、クロアチアの農業部門は急速に競争市場にさらされました。特に、EU内の大規模かつ効率的な酪農業者との競合は、中小規模の牧畜業が中心であるクロアチアにとって大きな課題となりました。EU加盟後、多くのクロアチアの酪農家が適合できず、生産を減少させた背景があります。また、EUの厳しい衛生基準や規制の適応が迅速でなかったことも、牛乳生産量の低下に寄与した可能性があります。
次に、気候変動の影響も無視できません。特に暑い夏や雨の少ない乾燥化が草地の生産力に影響を与え、飼料供給に制約をもたらしました。これは飼育される乳牛の健康と生産量に直接的な影響を与えます。さらに、都市化や若い世代の農業離れが進む中、酪農という産業の魅力が低下していることも生産量低下の原因として挙げられます。
クロアチア国内での需要も重要な要素です。国内市場での牛乳および乳製品の消費減少に加え、輸入品の増加により、国内生産者がさらに困難な状況に追い込まれています。輸入製品に対抗するため、高品質で付加価値の高い製品を生産するための投資が必要ですが、それを実現できる酪農家は限られています。
このような背景から、クロアチアの牛乳生産量の減少に歯止めをかけるためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず第一に、政府による中小規模酪農家への支援強化が重要です。特に生産の効率化と競争力を高めるための技術や設備投資を促進する政策が必要です。また、特定の気候変動対策として、耐干ばつ性の飼料作物や最新の畜産技術を導入することが効果的です。
さらに、若い世代を農業産業に引き込むための教育プログラムやインセンティブも検討されるべきです。デジタル化やスマート農業など、新しい技術に触れる機会を提供することで、酪農業の将来性を高めることができます。加えて、地域間の協力や欧州連合が提供する農地支援基金の活用も有益です。
結論として、クロアチアの牛乳生産量の減少は、競争市場や気候条件、政策環境などの多岐にわたる要因に左右されています。この傾向を改善し将来の食料安定供給を支えるためには、農業政策の見直しと産業支援の強化が不可欠です。これはクロアチア国内のみならず、地域全体の持続的発展にも寄与する可能性があります。国際的な支援や地域間協力を活用し、持続可能な生産構造への移行を図ることで、酪農業の復活と強化が期待されます。