国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、クロアチアのクルミ生産量は、1992年の4,065トンから1996年に6,062トンとピークを迎えました。しかし、その後は長期的に減少する傾向にあり、2023年には180トンとなっています。近年では、生産量の年ごとの変動が大きく、特に2018年以降は300トン以下の低水準が続いており、2022年の920トンを除いて極めて低い収穫量が見られます。
クロアチアのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 180 |
-80.43% ↓
|
2022年 | 920 |
441.18% ↑
|
2021年 | 170 |
-55.26% ↓
|
2020年 | 380 |
90% ↑
|
2019年 | 200 |
-50% ↓
|
2018年 | 400 |
-86.88% ↓
|
2017年 | 3,048 |
9.23% ↑
|
2016年 | 2,790 |
39.29% ↑
|
2015年 | 2,003 |
-29.67% ↓
|
2014年 | 2,848 |
215.74% ↑
|
2013年 | 902 |
4.76% ↑
|
2012年 | 861 |
-67.4% ↓
|
2011年 | 2,641 |
-38.28% ↓
|
2010年 | 4,279 |
117.87% ↑
|
2009年 | 1,964 |
-0.1% ↓
|
2008年 | 1,966 |
-73.82% ↓
|
2007年 | 7,510 |
9% ↑
|
2006年 | 6,890 |
-4.36% ↓
|
2005年 | 7,204 |
104.25% ↑
|
2004年 | 3,527 |
10.81% ↑
|
2003年 | 3,183 |
25.31% ↑
|
2002年 | 2,540 |
-14.51% ↓
|
2001年 | 2,971 |
-33.68% ↓
|
2000年 | 4,480 |
-6.12% ↓
|
1999年 | 4,772 |
1.53% ↑
|
1998年 | 4,700 |
49.02% ↑
|
1997年 | 3,154 |
-47.97% ↓
|
1996年 | 6,062 |
50.01% ↑
|
1995年 | 4,041 |
15.39% ↑
|
1994年 | 3,502 |
-22.35% ↓
|
1993年 | 4,510 |
10.95% ↑
|
1992年 | 4,065 | - |
クロアチアのクルミ生産量の歴史を振り返ると、1990年代前半は一般的に4,000トンを超える安定した収穫量が報告されており、1996年には最大値となる6,062トンを記録しました。この時期は適切な気候条件や農業技術の進展により、国内市場および輸出市場への供給が比較的順調だった可能性が考えられます。しかし、1997年以降、生産量は減少し始め、不安定な推移が続きました。2000年代中期には再び7,000トンを超える高水準を記録する年もありましたが、2008年を境に急激な低下が見られます。
特に2018年以降、生産量は著しく低下し、2023年はわずか180トンと記録されています。こうした低水準の背景には、多くの要因が絡んでいると考えられます。まず、地政学的背景や欧州経済全体の変動、さらに特定の農業品目への生産集中が関連している可能性があります。また、気候変動の影響が特に顕著であり、特に夏の干ばつや異常気象がクルミの収穫量に打撃を与えたと思われます。クロアチアは地中海性気候と内陸部の大陸性気候が混在する地域であり、これらの気候変動が土壌肥沃度や水供給に悪影響を及ぼしていることが見て取れます。
さらに、全体的な生産量の長期低下には、農業労働力の減少や農業インフラの整備不足も無視できません。クロアチアでは、都市部への人口流出が続いており、農業従事者の高齢化や新規参入者の不足が農業全般に影響を与えています。加えて、クルミ生産に特化した技術や知識の伝承が不十分であれば、高収量を維持することが困難になります。
このような状況において、いかに生産量を回復させるかが重要です。具体的な対策としては、まず気候変動に対応する農業技術を普及させる必要があります。たとえば、耐乾性の高い品種の導入や灌漑設備の強化が考えられます。また、クルミ畑への投資を促進するための税制や補助金の提供も有益です。地域の農業協同組合や国際的な農業技術支援を通じて、若手農家の育成や技術指導を実施することも不可欠でしょう。
さらに、クルミの価値チェーン全体を強化する戦略も有効です。たとえば、収穫後の加工や付加価値のある商品(ナッツオイルや菓子類)を生産し、国内外への販路を拡大することで、農家の収益性を高めるとともに、クルミ生産の再活性化につなげることができます。
地政学的な観点からも、クロアチアでは他国との貿易協定や国際的な支援を活用し、農業技術や生産資材の輸出入を安定化させることが重要です。また、地域紛争の影響やエネルギー資源供給の変動といった外部要因にも注意を払い、連携を強化する必要があります。
まとめとして、短期的には気候変動への対応や灌漑設備の整備、長期的には農業人材の育成や価値向上を目指した産業連携が、クロアチアのクルミ生産に不可欠です。FAOの報告するデータは、この国のクルミ生産が課題を抱えている現状を示していますが、適切な対策を講じることで、再び成長の軌道に乗せることができるでしょう。国際的な協力と国内政策の統合が鍵となります。