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クロアチアのキャベツ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新データによると、クロアチアのキャベツ生産量は、1992年から1999年にかけて急激に増加し、最高値の144,018トンを記録しました。しかし、2000年以降は大きく減少し、その後も生産量は頻繁に上下を繰り返しながら一定の水準に停滞しています。直近の2022年のデータでは28,480トンとなっており、ピークの1999年と比較して約80%も減少しました。これらの動向を踏まえ、キャベツ生産量の変動要因やそれが示すクロアチアの農業状況について検討を進めます。

年度 生産量(トン)
2022年 28,480
2021年 31,380
2020年 38,540
2019年 34,280
2018年 38,770
2017年 35,318
2016年 37,722
2015年 36,413
2014年 20,998
2013年 30,286
2012年 19,261
2011年 32,777
2010年 30,307
2009年 56,807
2008年 39,572
2007年 32,477
2006年 42,193
2005年 40,525
2004年 26,310
2003年 27,368
2002年 29,770
2001年 25,777
2000年 27,351
1999年 144,018
1998年 129,674
1997年 134,323
1996年 122,635
1995年 116,879
1994年 95,791
1993年 79,828
1992年 68,422

クロアチアのキャベツ生産量の推移を見ると、特定の時期に劇的な変化が起きていることが明確です。1992年から1999年にかけて、キャベツ生産量は68,422トンから144,018トンへと約2倍以上の成長を遂げました。この時期の増加要因としては、冷戦終結後の農業輸出市場の拡大や、クロアチア国内の農業技術の発展などが挙げられます。また、EUとの協力も進みつつあり、農業支援のインフラ整備が影響していたと考えられます。

しかし、2000年以降、状況は一転して著しい生産量の減少が始まりました。2000年には27,351トンと、前年の約5分の1まで落ち込みました。この急激な減少には、1990年代のバルカン半島紛争の影響が大きいと考えられます。紛争の余波で農業インフラが損傷したことや、地域衝突による労働力不足がその一因とされています。さらに、EU加盟準備の際の国内農業政策の調整や、輸出入の規制変更も影響を与えました。

その後、クロアチア経済は徐々に安定を取り戻したものの、生産量の回復は限定的でした。2022年には28,480トンと、1999年のピーク時と比較して大幅に減少したままです。この停滞傾向の理由としては、高齢化に伴う農業人口の減少や、小規模農家の競争力低下、さらに気候変動の影響が挙げられます。キャベツは比較的水を必要とする作物であり、干ばつや異常気象は特にその生産に深刻な影響を及ぼします。

加えて、一般的な農業市場としての国際競争の激化も視野に入れる必要があります。特にドイツやフランスなどのEU主要メンバー国、またポーランドやスペインを含めた他の農業大国は、キャベツを含む多くの農産物生産で効率的な技術を導入しており、クロアチアの中小農家が競争に追いつくのが難しい状況です。

クロアチア農業の再生にはいくつかの具体的な対策が必要です。まず、現地農家への技術支援と教育プログラムを充実させることが挙げられます。これにより、生産効率を向上させ、さらに持続可能な農業に転換するための基盤を整えるべきです。また、EUの補助金や助成金などを活用して、大規模な灌漑設備や気候変動に強い作物栽培技術を導入することも急務といえるでしょう。併せて、国内市場と輸出市場の橋渡しとなる新たな流通ネットワークを構築し、農家の収益を向上させることで、農業の魅力を再び高めることが可能になります。

さらに、気候変動対策も欠かせません。クロアチアを含む地中海沿岸地域では、今後も干ばつや異常天候の発生リスクが高まると予測されています。このリスクを緩和するために、農地の多様化や持続可能な灌漑方法の適用が鍵となるでしょう。

キャベツ生産はクロアチア農業の縮図ともいえ、その推移は国全体の農業政策や経済の方向性を示す重要なデータです。国際機関や政府、さらに地域コミュニティが協力し、これらの課題に包括的に取り組むことが必要です。キャベツ生産は地域経済の一翼を担うとともに、食料安全保障の観点からも無視できない重要な要素です。そのため、国際的な協力を通じて農業政策をより一層強化することが求められます。