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クロアチアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

クロアチアにおける羊肉生産量は、1990年代は減少傾向が続いた後、2000年ごろから徐々に回復を見せ、2011年以降は大きな増加傾向を示しました。この20年の推移を見ると、2023年には過去最高の6,570トンを記録しています。一方で、時期によって大きな増減が見られ、安定的な生産体制が課題として挙げられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,570
10.05% ↑
2022年 5,970
6.42% ↑
2021年 5,610
13.1% ↑
2020年 4,960
-7.12% ↓
2019年 5,340
1.33% ↑
2018年 5,270
12.03% ↑
2017年 4,704
-5.37% ↓
2016年 4,971
-0.58% ↓
2015年 5,000
-5.66% ↓
2014年 5,300
-5.36% ↓
2013年 5,600
3.7% ↑
2012年 5,400
8% ↑
2011年 5,000
127.27% ↑
2010年 2,200
-4.35% ↓
2009年 2,300
-4.76% ↓
2008年 2,415
-4.92% ↓
2007年 2,540
0.63% ↑
2006年 2,524
-8.22% ↓
2005年 2,750
24.27% ↑
2004年 2,213
-26.23% ↓
2003年 3,000
26.96% ↑
2002年 2,363
18.56% ↑
2001年 1,993
-1.73% ↓
2000年 2,028
-50.44% ↓
1999年 4,092
140.71% ↑
1998年 1,700 -
1997年 1,700
3.03% ↑
1996年 1,650
3.13% ↑
1995年 1,600
-11.11% ↓
1994年 1,800
-10.4% ↓
1993年 2,009
-12.04% ↓
1992年 2,284 -

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、クロアチアの羊肉生産量は1992年に2,284トンから始まりましたが、その後10年程度にわたって減少を続けました。この下降傾向は、1990年代の地政学的背景、特にユーゴスラビア紛争の影響が大きく、農業従事者の減少やインフラの破壊が生産に影響を及ぼしたと考えられます。

しかし1999年に突然4,092トンに跳ね上がり、これは一時的な要因があった可能性が指摘されます。2000年代には生産量が再び2,000トン台で推移しながらも、徐々に回復を見せました。この時期の回復要因には、EUへの統合に向けた農業支援政策の強化や、観光産業の活性化に伴う地元産食材需要の増加が考えられます。

2011年以降に入ると、クロアチアの羊肉生産量は再び飛躍的な増加を遂げました。この年に5,000トンを超え、以後、持続的に生産量が増加しました。特に2018年以降は毎年5,000トンを上回り、2023年には6,570トンという記録的な値に達しました。この成長は、羊肉が観光客向けの高級食材として需要を高めたこと、そしてEU加盟後の農業補助金を活用し、牧畜業の近代化が進められた結果と言えるでしょう。

ただし、クロアチアの羊肉生産にはいくつかの課題も存在します。まず、時期によって大きな増減が見られることから、安定的な供給体制の確立が急務です。特に気候変動に伴う影響や、人口減少による農業従事者不足が継続的なリスクとなっています。また、隣国のイタリアやギリシャといった地中海の他国も羊肉の主要生産国であり、国際競争力を高める必要があります。

未来を見据える対策としては、いくつかの具体的な方策が考えられます。第一に、持続可能な農業技術の導入が必要です。たとえば、放牧管理の効率化や気候変動に対応した牧草の改良などが有効と考えられます。第二に、若い世代の農業従事者の確保のための支援策が重要です。農業労働の魅力を高めるための補助金や、教育プログラムの拡充が求められます。そして第三に、地域ブランドの制度化を通じて、クロアチア産の羊肉を国際市場で高付加価値商品として位置づける努力も重要です。

また、地政学的リスクとして、周辺諸国との経済連携や貿易協定の動向がクロアチアの牧畜業にも影響を与える可能性があります。特に、国際市場における価格変動や経済制裁の影響を最小限に抑えるため、EU内での協力枠組みを強化することが欠かせません。なお、新型コロナウイルスのパンデミックは羊肉需要にも影響を及ぼし、一時的な消費低迷が起きましたが、その後の需要回復は観光産業の再開と密接に関連しています。

これらを総括すると、クロアチアの羊肉生産は長期的には上昇傾向にあり、地元経済や観光業における重要な位置を占めています。ただし、継続的な課題への対応が生産の安定と国際競争力の強化に向けた鍵となるでしょう。政府と業界が一体となって長期的な視点で取り組むことが必要です。