国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、クロアチアのサワーチェリー生産量は1992年に9,416トンでしたが、2000年代初頭に急激な減少を示し、2004年に2,244トンで底を打ちました。その後は一部の回復が見られ、2010年代半ばには上昇傾向が見られましたが、2023年には4,430トンと低水準が続いています。また生産量には周期的な増減が見られ、気候条件や地政学的背景が影響を与えている可能性が考えられます。
クロアチアのサワーチェリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 4,430 |
-30.56% ↓
|
2022年 | 6,380 |
14.13% ↑
|
2021年 | 5,590 |
-10.13% ↓
|
2020年 | 6,220 |
7.8% ↑
|
2019年 | 5,770 |
-29.72% ↓
|
2018年 | 8,210 |
-6.39% ↓
|
2017年 | 8,770 |
12.05% ↑
|
2016年 | 7,827 |
30.43% ↑
|
2015年 | 6,001 |
-39.34% ↓
|
2014年 | 9,893 |
19.19% ↑
|
2013年 | 8,300 |
101.11% ↑
|
2012年 | 4,127 |
-40.71% ↓
|
2011年 | 6,961 |
79.45% ↑
|
2010年 | 3,879 |
24.05% ↑
|
2009年 | 3,127 |
-17.52% ↓
|
2008年 | 3,791 |
18.21% ↑
|
2007年 | 3,207 |
47.72% ↑
|
2006年 | 2,171 |
36.89% ↑
|
2005年 | 1,586 |
-29.32% ↓
|
2004年 | 2,244 |
-53.57% ↓
|
2003年 | 4,833 |
4.86% ↑
|
2002年 | 4,609 |
-22.56% ↓
|
2001年 | 5,952 |
8.3% ↑
|
2000年 | 5,496 |
-34.98% ↓
|
1999年 | 8,453 |
2.27% ↑
|
1998年 | 8,265 |
37.02% ↑
|
1997年 | 6,032 |
-14.9% ↓
|
1996年 | 7,088 |
0.55% ↑
|
1995年 | 7,049 |
-7.6% ↓
|
1994年 | 7,629 |
-11.72% ↓
|
1993年 | 8,642 |
-8.22% ↓
|
1992年 | 9,416 | - |
クロアチアのサワーチェリー生産量は、過去30年間で大きな変動を記録しています。1992年には9,416トンと比較的安定した生産量が見られたものの、その後10年程度で急激に減少しました。特に2004年には2,244トンまで落ち込み、1992年比で約76%減少しました。2004年以降は断続的に回復期間が見られましたが、持続的な改善が難しく、生産量の安定は実現には至っていません。
この推移の背景には、いくつかの要因が影響していると推測されます。まず、1990年代前半の内戦の影響により、農業基盤が大きく損なわれたことが重要な要素です。労働力や輸送インフラへの被害に加え、農業分野への投資の減少が生産量の低迷につながった可能性があります。また、2000年代以降の急激な減少は、気候変動が大きな影響を及ぼしていると考えられます。例えば、不規則な天候や異常気象は果樹農業の安定した収穫を難しくし、生産体制に影響を与えています。
さらに近年では、地域の農業労働力不足や高齢化、農地活用の低下といった課題も浮上しています。若年層が都市部に集中していることや、農業が高収益分野と捉えられていないことが背景にあると考えられます。近隣諸国との競争も厳しく、特に機械化や気候対応型農業技術の導入が進む国々(例:ドイツやオーストリア)に対して後れを取る可能性があります。
サワーチェリー生産が持続可能な形で発展するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。一例として、農業従事者への技術研修や補助金の拡充が挙げられます。また、気候変動に対応するため、より耐寒性や耐乾性に優れた品種の導入を進める必要があります。そのほか、地域農家が協力して生産や販売を行う協同組合の強化も、地域全体の競争力向上につながると考えられます。
地政学的背景としては、EUとの関係を活用することが重要です。クロアチアはEU加盟国の一員として、共通農業政策(CAP)からの支援を受けることが可能です。この枠組みを活用し、資金提供や技術の共有を進めることが、地域の農業発展を後押しする鍵となるでしょう。さらには、隣国との連携を強化し、輸出市場の多様化を目指すことも生産量の安定化に寄与すると思われます。
結論として、クロアチアにおけるサワーチェリー生産は依然として成長の余地を持っていますが、過去数十年の推移を考慮すると、安定した生産基盤を確立するためには多方面からの努力が必要です。政府と地域社会が協力し、現地の現状に即した政策や支援を展開することで、クロアチアの農業全体が持続可能な発展へと向かうことが期待されます。