Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、クロアチアのニンニク生産量は1990年代前半から2000年代初頭にかけて比較的安定した生産量を維持していましたが、2003年から急激に低下、その後も一進一退を繰り返しています。特に2014年の大幅な低下が目立ち、2020年代に入っても生産量は回復せず、2023年の生産量は1,430トンと依然厳しい状態です。この下降傾向は、地域の農業生産環境や地政学的、経済的要因が密接に関連している可能性があります。
クロアチアのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,430 |
47.42% ↑
|
2022年 | 970 |
-66.2% ↓
|
2021年 | 2,870 |
45.69% ↑
|
2020年 | 1,970 |
-31.6% ↓
|
2019年 | 2,880 |
66.47% ↑
|
2018年 | 1,730 |
-9% ↓
|
2017年 | 1,901 |
31.65% ↑
|
2016年 | 1,444 |
-19.06% ↓
|
2015年 | 1,784 |
197.83% ↑
|
2014年 | 599 |
-87.81% ↓
|
2013年 | 4,912 |
6.76% ↑
|
2012年 | 4,601 |
11.4% ↑
|
2011年 | 4,130 |
-3.05% ↓
|
2010年 | 4,260 |
-16.96% ↓
|
2009年 | 5,130 |
0.59% ↑
|
2008年 | 5,100 |
-2.86% ↓
|
2007年 | 5,250 |
45.83% ↑
|
2006年 | 3,600 |
-7.69% ↓
|
2005年 | 3,900 |
30% ↑
|
2004年 | 3,000 |
-56.6% ↓
|
2003年 | 6,913 |
-31.53% ↓
|
2002年 | 10,097 |
2.01% ↑
|
2001年 | 9,898 |
22.5% ↑
|
2000年 | 8,080 |
-21.38% ↓
|
1999年 | 10,277 |
-3.27% ↓
|
1998年 | 10,624 |
18.02% ↑
|
1997年 | 9,002 |
2.06% ↑
|
1996年 | 8,820 |
-6.01% ↓
|
1995年 | 9,384 |
0.41% ↑
|
1994年 | 9,346 |
27.24% ↑
|
1993年 | 7,345 |
8.91% ↑
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1992年 | 6,744 | - |
クロアチアのニンニク生産量は、1992年に6,744トンでスタートし、1994年から1999年にかけては9,000トンを超える安定した生産が見られました。しかし、2003年以降、生産量が大幅に落ち込み、2004年には3,000トンまで急減しました。この低下の要因には、国内外の農業市場の競争激化や、農地利用の変化などが挙げられる可能性があります。また、EU加盟(2013年)後は、クロアチアの農業が外部市場との競争圧力にさらされ、特にコスト効率が求められる作物の生産が海外輸入品に押される結果となったと言えます。
2014年にはさらに599トンという低迷を記録しており、これは国内での市場需要と供給バランスの不均衡だけでなく、天候の不順や災害などの自然環境関連の要因も影響したと考えられます。その後はわずかな持ち直しを見せているものの、一貫して高い生産量を復活させるには至っていません。2023年の1,430トンという数字は過去30年間で最低水準に近い中間期の値であり、今後の課題は山積しています。
ニンニク生産の課題の一つは、地政学的および経済的要因です。安価な輸入ニンニクが市場に流入している中で、クロアチア産ニンニクの競争力を高めるには、生産効率を向上させる技術導入や、ブランド価値を強化する取り組みが求められます。他国の事例を見ると、例えばスペインやフランスのように地元産ニンニクの品質を向上させ、地域ブランドとして差別化を図る動きが成功を収めています。クロアチアでも、地域的特性や気候に適した高品質品種の栽培を推進し、持続可能な農業維持に向けた政策を検討する必要があるでしょう。
また、気候変動も重要な要因です。近年の異常気象や干ばつなどが、クロアチアの農業生産にマイナス的な影響を及ぼしている可能性があり、耐候性に優れた栽培技術の普及が急務です。他方で、2022年の970トンという低下は、世界的なサプライチェーンの混乱が影響した可能性も考えられます。この点では、輸送と貯蔵技術の向上や、国内内需拡大のための消費促進政策も必要です。
一方、未来への対策としては、クロアチア政府が農業従事者への補助金や小規模農家支援を充実させるとともに、地域間での協力により生産技術を共有する枠組みを作ることが挙げられます。さらに、ニンニクをはじめとする伝統作物の栽培を推進するための若年層参加を促す取り組みも重要です。従来型の農業から脱却し、現代的な農業技術やITを活用する「スマート農業」への移行も視野に入れるべきでしょう。
最後に、国際的な視点から見ると、クロアチアが主要輸出国である中国やインドなどとの競争に取り組むためには、独自の付加価値を生み出し、地域ブランドを強化することが求められます。また、EUとの協力を強化し、農業支援プログラムを活用するなど国際的な枠組みを活かすことも有効です。このような取り組みを進めることで、クロアチアのニンニク生産量の回復と、地域経済への寄与が期待されます。