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クロアチアのジャガイモ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、クロアチアのジャガイモ生産量は過去30年で大きな変動を示しています。1990年代は年間約60万トンから時には70万トンを超える生産量を記録しましたが、2003年以降、生産量は大幅に減少し、2022年にはわずか103,400トンにまで落ち込んでいます。この減少は、国内の農業構造の変化や気候条件、EU加盟後の市場環境の変化など、複数の要因が影響していると推測されます。

年度 生産量(トン)
2022年 103,400
2021年 127,830
2020年 174,280
2019年 173,150
2018年 182,260
2017年 156,089
2016年 193,962
2015年 171,179
2014年 160,847
2013年 162,501
2012年 151,278
2011年 167,524
2010年 178,611
2009年 270,251
2008年 255,554
2007年 296,302
2006年 274,529
2005年 273,409
2004年 247,057
2003年 375,050
2002年 736,198
2001年 670,233
2000年 553,712
1999年 728,646
1998年 664,753
1997年 620,032
1996年 666,020
1995年 692,216
1994年 563,285
1993年 507,898
1992年 480,079

クロアチアにおけるジャガイモ生産量の推移をみると、1990年代は一般的に高い収穫量を誇り、特に1999年には728,646トンと最も高い生産量を記録しました。一方で、2000年代に入ると生産量の変動が激しくなり、2003年以降は急激な減少傾向が始まります。特に2022年の生産量は103,400トンと、1999年の値に比べると約85%もの大幅な減少を見せています。このデータは、クロアチアがジャガイモ生産における課題を抱えていることを明確に示しています。

生産量減少の要因にはいくつかの背景があります。まず、従来からクロアチアの農業には気候の変動、とりわけ干ばつや洪水といった自然災害が大きな影響を与えてきました。特に2010年以降、気候変動による極端な気象パターンが生産量の減少を招いていることが指摘されています。また、EU加盟後の市場自由化により、より経済的、生産性の高い地域からの競争が激化し、国内の小規模農家が打撃を受けた可能性があります。EU加盟以降、他の農産物や輸入品との競争に直面した背景もあると考えられます。

さらに、農業従事者の高齢化や若年層の農業離れによる労働力不足も見逃せない要因です。現地の農村部では人口流出が進んでおり、農業基盤としての支援体制が縮小していることが伺えます。加えて、生産技術や設備の更新が進まず、生産効率が低下していることも示唆できます。

クロアチアのジャガイモ生産量の減少は国の内需や輸出だけでなく、食品安全保障にも影響を与えかねません。この状況に対処するためには、いくつかの具体的な対策を検討する必要があります。一つは、気候変動への適応策として干ばつ耐性の強い品種の開発や灌漑システムの整備を推進することです。さらに、国際協力や地域間連携を通じて、輸入依存を軽減しながら国内生産を支える枠組み作りも重要です。

また、農業分野への若年層の参画を促進するため、補助金制度や雇用支援策の強化、さらには付加価値の高い農産物の生産や観光農業など新しい収益モデルの展開を支援する必要があります。これにより、若年層が魅力を感じる農業環境を作り出すことが可能となるでしょう。

地政学的背景においては、クロアチアは中欧と東ヨーロッパの交差点に位置し、その農産物供給能力は周辺国にとっても重要な役割を果たしています。ジャガイモのような主要作物の減少が続く場合、地域内の食品需給バランスが崩れる可能性も指摘されます。特に、近年のウクライナ情勢や国際的な食料価格の高騰は、持続可能な農業を構築する道筋の必要性を一層明らかにしています。

総合すると、ジャガイモ生産量の減少がクロアチア農業の持続可能性に与える影響は小さくありません。近い未来には、政府が農業政策を再評価し、技術革新や農家支援を推進することが急務とされます。また、国際的な専門機関と連携し、気候変動対応や市場競争への適応を実現する長期的な戦略を打ち立てることが望まれます。このような取り組みを進めることで、クロアチアはジャガイモ生産量の減少に歯止めをかけるだけでなく、農業全般の信頼性と競争力を回復させる可能性を秘めています。