クロアチアにおける羊飼養数の推移データから、1992年から2022年にかけて羊の飼養数は変動を繰り返していることがわかります。1992年に約54万匹であった羊の飼養数は、1990年代後半に一旦減少した後、2005年に約80万匹でピークを迎え、その後は徐々に減少しつつ、2022年には約64万匹にまで減少しています。
クロアチアの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 643,000 |
2021年 | 654,000 |
2020年 | 662,000 |
2019年 | 658,000 |
2018年 | 636,000 |
2017年 | 636,808 |
2016年 | 618,896 |
2015年 | 607,711 |
2014年 | 604,866 |
2013年 | 619,852 |
2012年 | 679,313 |
2011年 | 638,608 |
2010年 | 630,000 |
2009年 | 619,000 |
2008年 | 643,384 |
2007年 | 645,992 |
2006年 | 679,839 |
2005年 | 796,480 |
2004年 | 721,578 |
2003年 | 586,641 |
2002年 | 580,016 |
2001年 | 539,498 |
2000年 | 528,675 |
1999年 | 488,535 |
1998年 | 427,000 |
1997年 | 452,130 |
1996年 | 426,856 |
1995年 | 452,932 |
1994年 | 444,247 |
1993年 | 524,418 |
1992年 | 539,258 |
クロアチアの羊飼養数の動向は、過去30年間で興味深い変動を見せています。1992年には53万9,258匹という記録で始まりましたが、1990年代は全体的に減少しました。この時期の減少の背景には、1990年代前半のユーゴスラビア紛争の影響が大きいと考えられます。この地域紛争は、農業生産だけでなく広範な社会経済活動に悪影響を及ぼしました。この影響が収束するにつれて、2000年代には羊飼養数が増加傾向に転じ、2005年には約80万匹に達し最大値を記録しました。
しかしながら、その後のデータから2010年代に向けて再び減少が見られます。これには外的要因として、クロアチアが2009年に世界金融危機の影響を受けたことや、国内農業の構造的問題が背景にあると考えられます。さらに、クロアチアは2013年にEUに加盟し、EU内部の競争や規制の変化によって、小規模農家が経営を続けづらくなっている可能性も指摘されています。
現在の最新データである2022年には、羊飼養数は64万3,000匹と、2005年のピーク時に比べて約20%減少しました。ただし、この数値は2010年代後半とほぼ同水準を維持しており、安定的な推移が見られます。他の羊の主要生産国と比較すると、クロアチアの規模は小さい部類に入りますが、地中海性気候を活かした放牧や、伝統的な羊乳製品の生産は地域経済において重要です。
しかし、現状を鑑みると課題も多く浮き彫りになっています。まず第一に、農業への若年労働力の流入が少ないことです。農業従事者の高齢化により、持続可能な飼育システムを維持することが難しくなっています。また、EU加盟後の規制や、世界的な気候変動、過去に新型コロナウイルス感染症がもたらした物流の停滞なども、中小規模の農家にとっては負担となりました。
将来の対策としては、まず畜産農家への補助金制度を更に拡充し、特に若年層への経済的支援を強化することが挙げられます。EUからの資金援助を効果的に利用し、設備の近代化や技術研修などを行うことで、生産性を向上させることが可能です。また、気候変動に適応するための持続可能な牧草地管理や、羊乳製品のブランド開発を進めることで、付加価値の高い商品開発にも取り組むべきです。
さらに、地政学的なリスクや気候変動などによる影響を最小限に抑えるため、クロアチア国内だけでなく、EU内の他国との協力も重要です。例えば、共同研究を通じて家畜病の予防策を強化したり、農産物の流通ネットワークを効率化する取り組みなどが求められます。
結論として、クロアチアの羊飼養数は過去30年間で様々な課題に直面してきましたが、今後の安定した成長のためには、農業の近代化や若年層を引き込む政策、地域協力の強化が必要です。国際的な支援や地域協力を活用し、気候変動や規制変更への柔軟な対応を行うことで、この重要な産業を将来にわたって維持発展させることが期待されます。