Skip to main content

クロアチアの小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関による最新データから、クロアチアの小麦生産量は過去30年間において、年ごとの変動が見られるものの長期的には安定的な推移を示しています。特に1998年以降では年間の生産量が50万~100万トンの間でゆるやかに増加しています。2022年には約97万トンの生産量となり、過去30年間の中では比較的高い水準に位置しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 834,230
-14.13% ↓
2022年 971,470
-1.57% ↓
2021年 986,930
13.76% ↑
2020年 867,530
8% ↑
2019年 803,270
6.67% ↑
2018年 753,060
9.52% ↑
2017年 687,595
-29.04% ↓
2016年 969,050
27.74% ↑
2015年 758,638
16.91% ↑
2014年 648,917
-35.04% ↓
2013年 998,940
-0.07% ↓
2012年 999,681
27.75% ↑
2011年 782,499
14.9% ↑
2010年 681,017
-27.25% ↓
2009年 936,076
9.06% ↑
2008年 858,333
5.66% ↑
2007年 812,347
0.96% ↑
2006年 804,601
33.71% ↑
2005年 601,748
-24.92% ↓
2004年 801,424
58.32% ↑
2003年 506,212
-38.47% ↓
2002年 822,650
1.35% ↑
2001年 811,674
-6.19% ↓
2000年 865,260
55% ↑
1999年 558,217
-45.3% ↓
1998年 1,020,450
22.43% ↑
1997年 833,508
12.45% ↑
1996年 741,235
-15.43% ↓
1995年 876,507
16.82% ↑
1994年 750,330
-15.4% ↓
1993年 886,921
34.79% ↑
1992年 658,019 -

クロアチアの小麦生産量に目を向けると、1992年から2022年までの30年間において明確な年次変動が確認できます。この変動は、地理的、気候的要因や世界的な市場動向の影響を受けた結果であると考えられます。1998年には過去最高となる約102万トンを記録しましたが、その後ほぼ一貫して80万~100万トンの範囲内に収まる水準を維持しています。それに対し、2003年および1999年には50万トン台に低迷する結果が見られました。これらの年では、天候不順や社会・経済的な状況が影響している可能性が指摘できます。

クロアチアは大部分が温暖な気候に恵まれ、自然豊かな農業地帯を有しているため、小麦の生産には適しています。しかしながら、1990年代の紛争やその後の経済的混乱により、農業インフラが一時的に破壊されたことが影響しました。その後、EU加盟をきっかけに農業補助金や技術支援が強化され、農業生産量の回復が進みました。EU加盟後の2012年以降では、生産量は堅調に推移し、最近では安定的な水準にあります。

しかし、重要な課題として気候変動の影響が挙げられます。近年、ヨーロッパ各地では長期間の乾燥や異常気象が頻繁に発生しており、農業生産に大きな影響を与えています。例えば2014年や2020年のように気温や降水量の変動が生産量の一時的な減少を引き起こしていると考えられます。また、世界の農業市場が不安定になる中で輸送コストや肥料価格の低下・変動がクロアチアの農業セクターにも響いてくる可能性があります。

小麦はクロアチア国内の食料供給に重要な役割を果たすだけでなく、周辺国やEU域内へも輸出されるため、地政学的背景も軽視できません。ウクライナおよびロシアの紛争による影響で一時的にヨーロッパの小麦市場が混乱しましたが、クロアチアもその影響を受ける産業の一角となりました。この状況から、安定供給を維持しつつ、国際市場において競争力を持つことが課題となります。

克服すべき課題としては、気候変動への対応と農業技術のさらなる近代化が挙げられます。たとえば、精密農業(ドローンやIoT技術を活用した効率的な農業経営)の導入や、干ばつに強い品種の開発・普及は有効な対策になるでしょう。また、EU内での協力をさらに深め、農業資源の共有や市場の適応力を強化する枠組みも重要です。政府の支援のみならず、地域コミュニティや農業協同組合の連携も生産性向上のカギとなります。

今後、クロアチアの農業セクターが国の経済発展をさらに促進するためには、自国内での需要と輸出のバランスを保ちながら、生産の効率化に注力する必要があります。また、短期的な気象リスクだけでなく、長期的な環境負荷との調和を図ることが求められます。