Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータに基づくと、クロアチアにおけるエンドウ豆(生)の生産量は、1990年代後半から2000年代前半にかけて大きな変動を経験しました。1999年の11,450トンをピークに一時的に生産量が減少し、その後は2000年代後半から再び規模の拡大を見せ、2020年には6,100トンを記録しました。しかし、直近の数値である2023年は、3,160トンと減少傾向が見られます。この推移には、農業技術、政策支援、気候条件などの複合的な要因が関連していると考えられます。
クロアチアのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3,160 |
17.04% ↑
|
2022年 | 2,700 |
-41.3% ↓
|
2021年 | 4,600 |
-24.59% ↓
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2020年 | 6,100 |
28.15% ↑
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2019年 | 4,760 |
73.09% ↑
|
2018年 | 2,750 |
-36.67% ↓
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2017年 | 4,342 |
23.99% ↑
|
2016年 | 3,502 |
-9.39% ↓
|
2015年 | 3,865 |
11.64% ↑
|
2014年 | 3,462 |
42.35% ↑
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2013年 | 2,432 |
3.14% ↑
|
2012年 | 2,358 |
-36.42% ↓
|
2011年 | 3,709 |
150.1% ↑
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2010年 | 1,483 |
-31.15% ↓
|
2009年 | 2,154 |
-81.42% ↓
|
2008年 | 11,590 |
151.36% ↑
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2007年 | 4,611 |
342.09% ↑
|
2006年 | 1,043 |
-32.1% ↓
|
2005年 | 1,536 |
47.27% ↑
|
2004年 | 1,043 |
20.72% ↑
|
2003年 | 864 |
-16.68% ↓
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2002年 | 1,037 |
-18.41% ↓
|
2001年 | 1,271 |
13.89% ↑
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2000年 | 1,116 |
-90.25% ↓
|
1999年 | 11,450 |
21.73% ↑
|
1998年 | 9,406 |
60.38% ↑
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1997年 | 5,865 |
20.11% ↑
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1996年 | 4,883 |
-12.22% ↓
|
1995年 | 5,563 |
-5.7% ↓
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1994年 | 5,899 |
35.86% ↑
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1993年 | 4,342 |
14.02% ↑
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1992年 | 3,808 | - |
クロアチアにおけるエンドウ豆の生産量推移を見ると、1992年の3,808トンから徐々に増加し、1999年には11,450トンのピークを迎えました。この増加は、おそらく当時の地元農業政策の支援、輸出市場の需要拡大、そして収穫面積の拡張が寄与したと考えられます。しかし、2000年以降、生産量は著しく低下し、2003年には864トンまで落ち込みました。この急激な減少の背景として、農業インフラ不足や気候の不安定性、さらに市場価格の低下による農家の動機低下が影響した可能性が指摘されます。
その後、2000年代後半になると改善の兆しが見られ、特に2008年には11,590トンと再び高い数値を記録しました。この回復の理由として、政府による農業投資促進策の導入やEU加盟による市場アクセスの改善が挙げられます。しかし、それ以降は再び変動が大きくなり、安定的な生産基盤を築くには至っていません。特に2022年には2,700トンに落ち込み、翌2023年も3,160トンと低迷したままとなっています。
クロアチアのエンドウ豆生産における課題の一つは、気候変動の影響が顕著であることです。エンドウ豆の栽培には、適度な降水量と穏やかな気温が必要とされますが、クロアチアでは近年の気候変動により異常気象が発生しやすく、干ばつや豪雨等が生産に悪影響を与えています。また、EU内の競争が激しく、他国からの輸入品との価格競争に直面していることも生産縮小の一因と見られます。
さらに、クロアチアは国全体の農業従事人口が高齢化しており、労働力確保が難しい状況にあります。これにより、従来の農法を持続することが難しくなり、収量が安定しない状態が続いています。この問題に対しては、若い農業従事者を育成するための教育プログラムや、効率的かつ持続可能な農業技術の導入が重要です。
短期的な改善策としては、灌漑システムの整備や、気候変動に耐性のあるエンドウ豆品種の開発が挙げられます。また、EUの補助金を活用し、機械化された農業技術を導入することで、生産効率を向上させることが可能です。中長期的には、国内外の需要を分析し、それに基づく戦略的な作付け計画を構築する必要があります。加えて、地域間協力を促進し、隣接するバルカン諸国と連携して市場アクセスを拡大することも有効です。
国際的な視点から見ると、クロアチアのエンドウ豆生産は、他の農業先進国と比べると規模が小さいものの、EU内の穀物供給体制の一部を担う重要な役割を果たしています。例えば、フランスやドイツのような大規模農業国が安定的に生産を維持しているのに対し、クロアチアは地政学的リスクや経済的な課題に応じて生産量が大幅に変動しているという違いがあるため、さらなる安定性の向上が求められます。
全体的に、クロアチアのエンドウ豆生産量推移は農業セクターの脆弱性を反映しており、国内政策だけでなく、国際協力を通じた技術的・経済的な支援が重要と言えます。これらの課題に取り組むことで、クロアチアは持続可能な生産体制を構築し、国内外の需要に応える農業国として成長する可能性を秘めています。