Skip to main content

クロアチアの豚飼育数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによると、クロアチアにおける豚飼育数は1992年から2022年の30年間で大きな変動を見せており、近年は減少傾向が顕著です。1992年に約118万頭だった飼育数は、2004年に約149万頭とピークに達した後、減少に転じ、2022年には約94万5千頭まで落ち込みました。この長期的な減少傾向は、養豚業を取り巻く経済的・社会的・環境的な課題の複雑化を示しています。

年度 飼育数(頭) 増減率
2023年 853,000
-9.74% ↓
2022年 945,000
-2.78% ↓
2021年 972,000
-5.91% ↓
2020年 1,033,000
1.08% ↑
2019年 1,022,000
-2.57% ↓
2018年 1,049,000
-6.43% ↓
2017年 1,121,032
-3.61% ↓
2016年 1,163,027
-0.33% ↓
2015年 1,166,888
0.92% ↑
2014年 1,156,220
4.1% ↑
2013年 1,110,650
-6.06% ↓
2012年 1,182,347
-4.14% ↓
2011年 1,233,406
0.23% ↑
2010年 1,230,574
-1.54% ↓
2009年 1,249,874
13.23% ↑
2008年 1,103,882
-18.13% ↓
2007年 1,348,343
-9.42% ↓
2006年 1,488,488
23.53% ↑
2005年 1,204,960
-19.09% ↓
2004年 1,489,335
10.59% ↑
2003年 1,346,663
4.72% ↑
2002年 1,286,000
4.21% ↑
2001年 1,234,000
0.08% ↑
2000年 1,233,000
-9.45% ↓
1999年 1,361,611
16.82% ↑
1998年 1,165,521
-0.85% ↓
1997年 1,175,461
-1.74% ↓
1996年 1,196,285
1.85% ↑
1995年 1,174,602
-12.8% ↓
1994年 1,347,084
6.76% ↑
1993年 1,261,836
6.7% ↑
1992年 1,182,562 -

クロアチアの豚飼育数は、過去30年間で増減を繰り返しながらも、長期的には減少傾向にあります。特筆すべきは、2004年に約149万頭のピークを記録して以降、大きく減少し始め、2022年には約94万5千頭とピーク時の約63%まで減少している点です。これは、クロアチアが加盟している欧州連合(EU)の農業政策、地元農家の構造的課題、世界的な肉消費動向の変化、ならびに豚肉産業に影響を及ぼす地政学的リスクとの複合的な関連を示唆しています。

クロアチアの豚飼育数が減少している背景にはいくつかの要因があります。一つ目は、養豚業における経済面での競争力の低下です。EU加盟後、クロアチアはEU諸国との市場統合が進みましたが、他国と比較して規模の経済や生産効率に劣る小規模農家が多いため、海外からの輸入豚肉に対抗することが難しくなっています。これは生産コストの上昇、特に飼料価格の高騰、労働力不足、そして需要減少が起因しています。

二つ目は、消費者の好みの変化と健康志向の高まりです。世界的に赤身肉消費の減少傾向が見られ、消費者が豚肉に代わる鶏肉や植物由来の代替肉などに関心を示していることが影響しています。この動きは日本やアメリカ、フランスなどの他国でも一般的に見られる現象ですが、クロアチアでより強く表れていると考えられます。

加えて、気候変動や自然災害も飼育数に影響を与えている可能性があります。クロアチアは地中海沿岸に位置するため、記録的な猛暑や豪雨が家畜の健康や農業用インフラに影響を与えています。また、アフリカ豚熱(ASF)などの疫病リスクも見逃せない要因です。この疫病はクロアチアでは大規模な発生例は報告されていませんが、周辺国への広がりが懸念される中で、その予防策や監視活動に多大なリソースを費やさなければなりません。

これらの状況を受け、クロアチアの養豚産業が直面している主要課題には、地元農家の効率性向上、家畜管理のデジタル化、輸入競争に対抗できる生産体制の確立などが含まれます。持続可能な解決策としては、養豚業向けの技術革新を促進し、スマート農業を導入することで生産力の向上を図ることが重要です。また、政府がサポートする形でEUの補助金を活用し、小規模農家の協同組合設立を推進することも効果的でしょう。

さらに、国内外の消費者に向けて、地元産の豚肉の高品質を訴求したブランド戦略を展開することも飼育数と需要を維持する鍵となります。たとえば、クロアチア特有の伝統的な製品(例:クラニカソーセージなど)を前面に押し出し、国内外市場での魅力を高めることが考えられます。こうした取り組みはフォークロア的な文化価値の維持だけでなく、観光業との連携や地域経済の活性化にも寄与します。

地政学的な側面では、食料安全保障の観点からも養豚業の維持は重要です。周辺国との外交関係や輸入依存度を考慮すると、自国の食料供給基盤を強化することが将来の不確実性に備える一手となります。特にロシア・ウクライナ紛争やグローバルな食料価格の変動が及ぼす影響を見据え、地域的な農業協力や研究機関との連携を図るべきでしょう。

以上を総合すると、クロアチアの養豚業は現在、経済的な競争力や疫病リスク、消費動向の変化による影響を受けていますが、持続可能な方法で生産体制を改善し地元産業を支える政策が求められます。地域特性を活かした独自性の高い取り組みを展開することで、国内の養豚業は回復基調に乗る可能性があります。