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クロアチアの牛乳生産量推移(1961年~2022年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供したデータによると、クロアチアの牛乳生産量は1992年の713,534トンをピークに、2000年代に一時的な増加を見せましたが、それ以降は全体的に減少傾向が続いています。2022年の生産量は535,000トンであり、過去30年間で著しい低下を示しています。近年の減少率が顕著であり、2021年から2022年にかけても5.8%の落ち込みが確認されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2022年 535,000
-6.14% ↓
2021年 570,000
-6.86% ↓
2020年 612,000
-0.49% ↓
2019年 615,000
-3% ↓
2018年 634,000
-5.13% ↓
2017年 668,300
-3.02% ↓
2016年 689,100
-2.53% ↓
2015年 707,000
-2.86% ↓
2014年 727,800
-1.53% ↓
2013年 739,100
-10.71% ↓
2012年 827,794
3.31% ↑
2011年 801,300
2.09% ↑
2010年 784,913
-4.22% ↓
2009年 819,500
-3.33% ↓
2008年 847,708
-3.83% ↓
2007年 881,514
1.31% ↑
2006年 870,135
7.05% ↑
2005年 812,864
14.86% ↑
2004年 707,675
5.64% ↑
2003年 669,903
-5.08% ↓
2002年 705,745
6.45% ↑
2001年 662,995
7.72% ↑
2000年 615,472
-2.3% ↓
1999年 629,970
-1.7% ↓
1998年 640,837
2.04% ↑
1997年 627,998
0.25% ↑
1996年 626,437
4.74% ↑
1995年 598,084
-1.26% ↓
1994年 605,738
-3.1% ↓
1993年 625,100
-12.39% ↓
1992年 713,534 -

クロアチアの牛乳生産量は、政治的、経済的、社会的な背景に依存して推移しています。1990年代初頭は、ユーゴスラビア紛争の影響もあり生産量が低下していましたが、1996年以降少しずつ回復傾向を見せました。その後、2000年代半ばには最高値に近い870,135トン(2006年)を記録しましたが、これをピークに緩やかな減少に転じています。

減少の根本的な要因としては、EU加盟(2013年)にともなう農業市場の自由化、農家の競争力不足、農場の集約化及び高齢化した農業労働力の減少が挙げられます。また、EU基準への適応が不足している農場の閉鎖も要因の一部です。2020年以降のさらなる減少は、新型コロナウイルスの影響や市場の変動、肥料・飼料費の高騰など、グローバルな問題の影響も無視できません。

クロアチアだけでなく、EU諸国全体でも中小規模の農場が減少し、供給が大規模企業にシフトする傾向が見られます。しかし、ドイツやフランスのような牛乳輸出強国は生産効率が高く、国内の需要を賄いながら輸出用の余剰を持つのに対し、クロアチアでは国内市場すら十分に満たせない状況が目立ちます。このため、牛乳や乳製品の輸入に依存する割合が年々増加しています。

将来的な課題として、初めに挙げられるのはクロアチア国内の農家をどのように保護・支援していくかという点です。具体的には、農業技術の導入支援や、若手労働者を農業分野に誘致する政策が必要です。また、生産量の回復だけでなく、品質向上を目指したブランド化戦略に取り組むことも重要です。例えば、特定の地域や牧場が持つ独自の風味や品質をアピールし、国際市場でも競争力を高めることができます。地域協力の枠組みを活用し、近隣諸国(例えばスロベニアやハンガリー)との協働を進めることも地政学的に合理的と言えます。

さらに、新型コロナウイルスや地域紛争の影響を受けた供給不足への対応策として、サプライチェーンの多様化や安定的な国内生産基盤の確立が求められます。地元市場の競争力を強化するためには、政府や国際機関が補助金や技術支援、教育プログラムを強化する必要があります。

結論として、クロアチアの牛乳生産量の低下は国内だけの問題ではなく、グローバル市場の変動、EU加盟後の競争力格差など、複合的な要因が絡んでいます。今後の方向性として、質の向上を伴った持続可能な生産体制を築くこと、地域間協力を強化することが鍵となるでしょう。具体的には、農家への補助金拡充や、国際市場でのブランディング戦略の構築が重要な課題です。このような取り組みが成功すれば、クロアチア国内の乳製品産業の復興だけでなく、地域経済全体の強化にも寄与することが期待されます。